ようこそ。
ようこそいらっしゃいました。
このページではとりあえず今回は連載小説を書いております。
書きかけなのですが、いつ続きを書くかは決めていません。
この小説は、とある恋愛を目的としたゲームの脇役を主人公にしてつくろうと思っているのですが、ゲームの開発元の了承を取るのがめんどうなので仮名にしています。
不思議なふしぎの物語(1)
「ふ・し・ぎ!ふ・し・ぎ!」
「せーーーーのーーーーふっしっぎっちゃーーーーん!」
ファンの声援は今日もすごい。
吉行亜里(よしゆきあさと)は、ステージの上の篠栗(ささぐり)ふしぎをステージの袖から見ながら、彼女の人気をもっともっと上げるにはどうすればいいか考えていた。
ふしぎはデビューしたばかりのアイドルで、吉行はマネージャーだった。
デビューしたてにしてはかなり人気があり、こうしてファンの声援も多いのだが、デビュー曲の「あふれる涙は誰のせい?」は、今ひとつ売れ行きに伸びがない。吉行が聴いた感想ではいい曲と思うし、ファンの評判もいいのだが。
イベントが終わり、ふしぎは帰っていった。
吉行が事務所に戻り、事務処理をしていると電話がかかってきた。
「はい、こちら・・・」
「おお!吉行君かね。たった今、ふしぎのテレビ出演が決まったぞ!」
「えっ、本当ですか!」
「ああ。それも今人気の音楽番組、『クリップダイム』だ!」
「あーあの人気の歌を10曲まとめてお届けするという番組ですね。でもふしぎはそんなに売れていないでしょう?」
「うん、まあ10曲の中には入っていないんだがね。番組中に、今話題の曲を紹介する『クリップチャイム』というコーナーがあってね、それに出ることが決まったんだ。」
「でも社長、あの番組って生放送でしたよね。いつオンエアなんですか?」
「来週だよ。」
「えーとその日は・・・あーふしぎはS区のレコーディングスタジオでレコーディングですね。クリップダイムのスタジオは遠いですね。」
「S区か!そりゃちょうどいい。実はこのコーナーでは今話題の製造中の特急列車を紹介することになっていてね、その工場からの中継ってことになっているんだ。工場はS区にある。あのスタジオからは車で5分もかからないだろう。」
「列車ですか?なんだか変わった企画ですね。」
「なにを言っているんだね吉行君!列車をバックに歌うのは大ヒットの第一歩なんだぞ!あのカムチャツカ&アラスカも、開業前の東北新幹線の線路で新幹線の前で歌を歌って、それで大ヒットしたんだぞ!」
「そんなに昔のことを言われても私にはちょっと・・・」
「いいからふしぎに話しておけ。私はもうちょっと行くところがあるからこれで切る。これから忙しくなるぞ。吉行君も体には気を付けろ。じゃあな!」
なんだか妙なことになってきた。
いったいその列車というのはどういうものなのだろう。幸いまだ売れていないためふしぎのスケジュールには余裕がある。クリップダイムの中継の時までの暇な時に、ふしぎを連れてS区の工場に行ってみようと思った。
(つづく)
不思議なふしぎの物語(2)
ふしぎ「なんだかかっこいい列車ですね。」
社員「はい。わが社が社運をかけて開発した最新鋭の特急列車です。」
吉行とふしぎは特急列車を製造する会社の社員に説明を受けていた。
その列車は快適な列車だということである。寝台があり、食堂車がある。
売店もあり、売店と同じ車両にはシャワー室があって長期の旅行に対応している。
娯楽室もあり、ゲームもできる。そのほかに談話室もあり、なぜかピアノが置かれている。
完成したら日本国中をかけめぐるということである。
社員「今回視聴率の高いクリップダイムにこの列車を紹介させていただけますので、車両が完成したあかつきには、ぜひともたくさんのお客様に乗っていただきたいと考えております。」
吉行は事務所の社長のことを考えた。うちみたいな弱小事務所が、人気が高いとはいえまだまだ売り上げの少ないアイドル、篠栗ふしぎを人気番組クリップダイムに出演させるのだから、社長は相当苦労しただろう。
ぜひとも社長の期待にこたえなければならない。一番がんばらなければならないのはふしぎだが、マネージャーの自分も相当な努力が必要だろう。社長は体に気を付けろと言っていたが、そんなことは言っていられない。
吉行「今度ここで歌をうたうわけだが、ちゃんと歌えるだろうな?今度は全国放送だから、失敗はできないぞ。」
ふしぎ「だいじょうぶです。もう間違えません。」
何回か前のイベントで、ふしぎは歌詞を忘れてしまったことがあったのだ。そんなことは絶対にあってはならない。
もっともクリップダイムは生放送なので、けっこう歌詞を間違える歌手は多く、そんなハプニングもクリップダイムの人気の1つなので、実はあまり気にすることもないのだが。
社員「この列車の名前は今度の放送までに決定する予定です。それでは、また放送の時に。」
ふしぎ「よろしくお願いします。」
吉行「よろしくお願いします。」
吉行は今度の番組の成功を祈っていた。
(つづく)
不思議なふしぎの物語(3)
小島「今夜もみんなと!」
小島・日下「クリップダイム!」
(音楽)
小島「一週間の話題の曲を10曲まとめてお送りする音楽番組クリップダイム。司会はわたくし小島美雄(こじまよしお)と」
日下「日下美奈子(くさかみなこ)です。」
小島「さて今夜もいろいろなところから中継が入っています。おっとこちらは?なんだか工場のようですね。そしてあれは、えーと列車のようですね。いったいどなたが歌ってくださるんでしょうか。楽しみですね。」
篠栗ふしぎは工場の会議室で出番を待ちながら、モニターで番組を確認していた。そばには吉行が、心配そうな顔をしてはげましている。
吉行「大丈夫。いつもイベントで歌っているとおりに歌えばいいんだ。何度も歌っているから、今日も同じだよ。」
ふしぎ「でもアナウンサーさんとお話しなければいけないでしょう?ちょっと苦手です。」
吉行「ああ、まあ大丈夫。いつもイベント会場で司会のお姉さん・お兄さんと話しているでしょう?今日も似たようなものだよ。まあ気楽に行こう。」
ふしぎ「はい!」
ふしぎはふっきれたようだった。テレビに出たことはあるが、この歌がテレビに流れるのは初めてである。吉行はふしぎを送り出した。あとは見守るしかない。モニターを見ながら、祈るような思いで出番を待った。
小島「今週の、クリップチャーイム!」
(音楽)
小島「さて今日のクリップチャイムは中継ですね。POC(ポック)の粕淵(かすぶち)さーん!」
粕淵「はーい。パーソン・オブ・チェイス、略してPOCの粕淵です。今日はここ、S区にある列車の工場からお送りしております。ここにいらっしゃるのは、これから『あふれる涙は誰のせい?』を歌ってくださる篠栗ふしぎちゃんと、工場の社員さんでーす!」
ふしぎ「こんばんは。」
社員「こんばんは。」
粕淵「さてこの列車製作担当者でいらっしゃるとのことですが、いったいどのような列車なのですか?」
社員「はい。超豪華寝台列車となっております。長期滞在を可能にするため、寝台、シャワー、食堂車、売店、ゲームコーナー、展望車等を設置いたしました、日本最高級の列車を目指しております。」
粕淵「うわぁーすごいですねー。ふしぎちゃん、こんな列車が走ったらぜひ旅行してみたいですね?」
ふしぎ「そうですね。北から南まで旅行してみたいですね。」
粕淵「ふしぎちゃんも絶賛しておりますこの列車ですが、社員さん、この列車の名前は何と言うのですか?」
(つづく)
不思議なふしぎの物語(4)
社員「わが社全員で考えたのですが、日本を光のようにかけぬけるというイメージを題材に考えました。その名は・・・」
粕淵「その名は!」
社員「特急ウルトラヴァイオレットです!」
(ファンファーレ音楽)
粕淵「ウルトラヴァイオレットだそうですよ!ふしぎちゃん。すごい名前ですね。」
ふしぎ「そうですね。なんだか力を感じる名前ですね。」
粕淵「ふしぎちゃんいいこと言いますね。さて、時間が来ましたのでふしぎちゃんスタンバイしてください。」
ふしぎ「行ってきます。」
粕淵「はい。ふしぎちゃんのデビュー曲も、ウルトラヴァイオレットみたいにパワーあふれる歌になっています。ではお聞きください。『あふれる涙は誰のせい?』です!」
(前奏)
見つめ合えば 涙が止まらない
ふるえる胸 思い切り叫んで
まだ早い 朝の街
待ち合わせ あと五分
そよかぜが ほほをなで
あのひとが 手を振るの
傷つけ合うのが傷つけ合うのが こわいから
そこから先へとそこから先へと 進めない
ふたりの 未来を 教えて
西の空に 流れるほうき星
祈ることも できないもどかしさ
このおもいを 伝えてあのひとに
できれば 夢の中で
(間奏)
(つづく)
不思議なふしぎの物語(5)
夢みたい 夢じゃない
あのひとが 近づいて
まばたきを する前に
はじめての キスをする
ふるえるこの胸ふるえるこの胸 なんのため?
あふれる涙はあふれる涙は 誰のせい?
その日が 来たのね きょう今
あかい雲が 星へと変わっても
きょうが終わり また日がのぼっても
忘れないわ この日のときめきを
あなたも 覚えていて
あなたも 覚えていて
ディレクター「おつかれさまでした!」
ふしぎ「おつかれさまでした。」
ディレクター「ふしぎさん、この後写真撮影があるんでしばらく残ってください。」
ふしぎ「『クリップイン』ですね。」
ディレクター「そうです。よろしくお願いします。」
吉行はオンエアが無事終わったことを喜んでいた。
あまりテレビに出られなかったふしぎだが、今日視聴率の高いクリップダイムに出ることができたし、うまくいけばこの曲も売れるかもしれない。
そして1位の歌手の歌が終わり、写真撮影の時間になった。
日下「はーい。それでは写真撮影に移ります。列車工場のふしぎちゃーん!」
ふしぎ「はーい。」
小島「いつ見てもすごい列車ですね。それじゃ列車をバックに、写真撮影です。それじゃふしぎちゃん、クリップインお願いします。」
ふしぎ「いいですか?それじゃ、クリップイン!」
パシャ。
小島「はい。この写真はリクエストをくださった方の中から抽選で5名の方にプレゼントいたします。発表は発送をもって替えさせていただきます。わっもう時間がない。来週もみんなと!」
全員「クリップダイム!」
(つづく)