116.高千穂鉄道と南阿蘇鉄道
説明
1997年も鉄道の日記念JR全線乗り放題きっぷのシーズンがやってきました。
待ちに待った土佐くろしお鉄道の宿毛(すくも)延長です。宿毛からは大分県の佐伯(さいき)までフェリーが通っているという話をとある書籍で読みました。
まだ土佐電鉄にも御免町~伊野に乗っていないので、ムーンライトながらから乗り継いで御免町まで行き、伊野まで乗ってから土佐くろしお鉄道で宿毛へ、そしてフェリーで佐伯へ、という計画を立てました。幸い佐伯行きのフェリーは夜中も運行しているので宿代わりになります。
連休は残り2日あるので、2日かけて東京に戻ればいいです。あとで九州は周遊券などで特急を存分に利用してJRをくまなくまわろうと思っていたので、その時に運賃別払いになる第三セクターに先に乗っておきたいと思いました。佐伯に近い第三セクターは高千穂鉄道があります。そして近くに南阿蘇鉄道があり、どうやらバスで終点どうし(高千穂~高森)を結ぶ路線があるようです。そのあとどうしようかと思いましたが、もしムーンライト九州が運行されていたらそれに乗るところです。
2年前はこの季節にも運行されていましたが、去年は運行していなかったので、今年もないだろうなあと思い、それなら大好きな夜行バスを熊本から大阪まで乗ることにしよう、と思いました。その場合、2日目に乗るJRの路線の運賃を計算すると3060円(きっぷの値段の3分の1)に満たないので、2日目は乗り放題きっぷを使わないことにして、あとで日帰り旅行を別の所にすることにしました。
大阪に戻ってもまっすぐ帰ると時間が余るので、大阪近辺で乗っていない路線である京阪電鉄の一部に乗ろうと思いました。熊本から大阪までのバスの乗車券が買えるか心配でしたが、手数料310円払って買えました。
ムーンライトながらの指定席券も取れて、出発を待つばかりとなったわけです。
東海道本線その1
横浜駅
東横線の電車は、無事横浜駅に到着した。
ムーンライトながらには8月にも乗っているのでそれほど緊張することもない。ホテルに泊まるわけでもないし、気楽に旅行しよう。
そして今日も午後11時50分を待ち、鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷに日付を入れてもらって改札を通る。
ホームでながらを待つ。青春18きっぷシーズンほど客はなく、のんびりした中でながらがやってきた。
おしゃべり
乗ってすわるととなりの男から話しかけられた。大垣行きの夜行ではとなりあった人間でもめったに話さない人が多いのに、こういうこともめずらしい。
なんでも彼はこれから京都に行って、京都市営地下鉄東西線の開業に伴い廃止されてしまう京阪電鉄京津(けいしん)線の京阪三条~御陵(みささぎ)間に乗りに行くとのことだ。ぼくはこれから土佐くろしお鉄道まで行って宿毛(すくも)に行くと言った。お互い典型的な鉄道ファンだというわけである。
ぼくはおととし京津線の廃止区間には乗っているので特に再度乗ることもないだろう。
話は今月開業の長野行新幹線のことになった。その中でも安中榛名という新駅が気になる。
彼の話だと、ものすごく停車するあさまの本数が少ないとのことなのである。いったい何時間に1本程度なのだろう?
よくよく考えたらぼくはJRの大きい時刻表を持っていたことを思い出した。これで長野行新幹線のところを見てみればいいことに気がついた。安中榛名のところを見てみよう。
あはは。ほとんどのあさまは安中榛名通過で、2~3時間に1本しか停車しない。
ぼくたちはこれを見て大笑いした。まあいいか。鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷは今回の旅では2回分しか使わないので、残り1回分は安中榛名にでも行ってみよう、もちろん新幹線には乗れないから安中から歩いていこうと思った。来週にでも行ってみよう。
岡崎駅
さてこれくらい話したところでもう寝ようというところになった。彼は京都、ぼくは土佐くろしお鉄道へと向かうがいずれにしても眠っておいた方がいいだろう。富士を過ぎてからなんとか眠った。
珍しく浜松を過ぎても眠っていたようで、気がつくと豊橋を過ぎていた。そして岡崎に着く。
ぼくは隣人に別れを告げてながらを降りた。またローソンに行ってとろろそばを買おう。
山陽本線
岡崎〜米原
いろいろ楽しくおしゃべりした隣人をあとにしてムーンライトながらを岡崎で降りた。
エスカレーターを上がり、鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷを見せて改札を出て左手にあるローソンに向かった。
朝食や飲み物を買って岡崎駅に戻る。きっぷを見せて改札を通り、ホームに行ってしばらく待つと米原行きの列車がやってくる。いつも通りだ。
列車に乗り、朝食を食べているうちに電車が発車する。食べ終わると眠ってしまう。いつも通りだ。
ムーンライトながらで珍しく富士から豊橋まで眠れたにもかかわらず、ずっと眠りこけ、気がついたのは近江長岡のあたりだった。青春18きっぷのシーズンではないのでそれほど混雑もしていない。
米原〜姫路
そのまま山の中を抜けて電車は米原に着いた。ここで姫路行き新快速に乗り換えだ。
無事乗り換える。そしてなんとかすわった。
すわるとまた眠る。今日は姫路まで行けば良いので眠っていても良いのである。
しばらく眠り、起きるともうすぐ姫路に到着する時刻であった。
そして姫路に到着。
まずは改札を出て、トイレに行っておく。なんとなく改札内のトイレより、改札外の駅ビルのトイレの方が紙があるような気がしたのである(すいません)。
改札をふたたび通る。
とりあえず今度来る三原行きの電車を並んで待つことにする。ホームにはお客が多く、並ばないとすわれなさそうだ。
姫路〜岡山
電車がやってきた。なんとかすわれた。
発車時刻が近づくと、あとからあとからお客がやってきたが、青春18きっぷのシーズンではないため、ものすごい混雑というほどでもなかった。
電車が発車する。混雑しているので景色も見えないが、だいたいの景色は去年の10月に見ているのでまあ寝ていてもいいかと思った。しかし岡崎から姫路までほとんど寝ていたため、それほど眠くもない。
そんなこんなで1時間半が過ぎ、電車は山沿いの風景から都会の風景になり、岡山に到着した。
他の降りる人につづいて電車を降りた。
さあ、高松行きマリンライナーに乗らなければならない。1年ぶりだ。
またあの気持ちのいい瀬戸大橋の景色を見ようと、ぼくはマリンライナーの出るホームを探すことにした。
瀬戸大橋線
岡山〜児島
姫路から乗ってきた大混雑の三原行き普通列車を岡山で降り、階段を昇っておりて高松行きマリンライナーが出るホームを探した。
去年の10月に乗ったマリンライナーも混雑していたし、今日乗るマリンライナーもたぶんすわれないんだろうなあと思った。
事実、マリンライナーに来てみるとすでに席はいっぱいだった。
乗ってみるとそこは指定席車両だった。でもなんとなく自由席は立っている人がいっぱいなんじゃないかと思い、そのまま指定席車両に立っていることにした。岡山までずっとすわっていけたことだし、坂出までだけなら立っていてもいいんじゃないかと思った。
そして発車である。
昼間の瀬戸大橋線は、岡山のそばは高架を走る。快速なのであまり駅にも停車せず、すいすい進んでいく。
車内改札がやってきたが、立っているぼくたちのきっぷはあらためず、指定席にすわっているお客のきっぷだけあらためて進んでいく。とりあえず自由席に移れとは言われなかった。
児島〜坂出
茶屋町、児島と高架の駅に停車して、1つトンネルをくぐり、いよいよ瀬戸大橋である。
やっぱり瀬戸大橋は昼間通るとながめがいい。
左右に島々が見え、船は行き交っている。
そんな景色をしばらくの間ながめていた。
そのまま四国に入り、レールが2方向に分かれていく。マリンライナーは高松行きなので、左に曲がっていく。そして予讃線と合流。しばらく進んで坂出に着いた。
ふう、疲れたなあ。坂出からはなんとかすわれるかなあ、と思いながら階段を昇っておりてこれから進む阿波池田行きディーゼル車が停車するホームへと向かった。
土讃線その1
坂出〜丸亀
岡山から乗ってきたマリンライナーを坂出(さかいで)で降り、階段を昇っておりて隣のホームに行き、阿波池田行きのディーゼル車を待った。
ディーゼル車がやってきた。ボックス席もあるディーゼル車だった。もちろんぼくはロングシートに乗った。
さすがに高松の通勤圏だけあって、すわれはするけどけっこうお客が乗っている。
ディーゼル車は発車し、宇多津(うたづ)が近づいた。右側に今まで乗ってきたマリンライナーが通る線路が離れていき、去年乗ったムーンライト高知やムーンライト松山が通る線路が近づいてきて宇多津である。去年の10月に降りたなつかしい駅である。
そのままディーゼル車は瀬戸内海に沿った景色のいい場所を進んでいく。
中年女性が車掌に質問している。どうやらどこで特急に乗り換えられるかということらしい。
やっぱり四国は特急がたよりの場所で、普通列車はあくまでもサポートという列車なのだろう。
そんな現実を感じながらディーゼル車は進む。
丸亀〜琴平
丸亀でかわいい女の子が乗ってきた。
その女の子は、制服向上委員会(せいふくこうじょういいんかい)というアイドルグループの吉成圭子(よしなりけいこ)ちゃんに似た女の子だった。
かわいいなあ、話しかけるきっかけはないかなあなどと思っていると、高校生らしい男がやってきて彼女に気安く話しかけた。ガーン!
ぼくが高校のころは、男子校だったから、女子高生との間に目に見えない壁ができたみたいに、気安く話などできなかったのに!うらやましい!
吉成圭子ちゃんに似た女の子が男とおしゃべりしているうちに、ディーゼル車は多度津を過ぎて左に曲がり、だんだん内陸に入っていった。
そしてディーゼル車は琴平(ことひら)に着いた。ここで彼女たちは席を立った。う~うらやましい。
停車時間が長かったので、ぼくも時間をおいて降りることにした。
琴平〜阿波池田
鉄道の日・JR全線乗り放題きっぷを見せて改札を出た。
駅前広場を渡ると、なんだかお祭りでもやっているらしく、お祭りの衣装っぽい衣装を身に包んだ女性たちが踊っている。
この3連休でイベントをする地方が琴平以外にもありそうな気がした。
そんなことを考えながら再びディーゼル車に戻った。また発車する。
琴平を出るとディーゼル車は山の中に入っていった。お客はさっきよりかなり少なくなっている。
そのうちとある駅に停まって発車する時にバックした。
そうか、ここがスイッチバックする駅かと気がついた。確かに山の中の駅だし、こういう場所にはスイッチバックの駅がふさわしいのだろう。また前進し、再び山の中を進む。
そのうちディーゼル車は盆地に入っていき、ディーゼル車は阿波池田駅に着いた。ここで乗り換えである。
ポテトチップ
昼食がまだなのでどこかで手に入れたいが、乗り換え時間がちょっと短いので、売店でポテトチップスでも買うことにした。そして高知の方に行くディーゼル車を見つけて乗った。
ポテトチップスを食べながら発車である。
ディーゼル車はまた山を登り、進んでいく。
それにしてもオールロングシートのディーゼル車である。
たとえそんな列車でも前の日夜行に乗っていると眠くなってしまう。
お客は中年の男女が多く、みんないかにも鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷで旅行中といった感じの人たちばかりである。
景色
それにしてもこのあたりは昼間通ると山があったり川が見えたりして気持ちがいい。
ただ、さっきから特急との行き違いとか言ってどこの駅でも5分、7分と停車していく。
まあ、こういうのも普通列車で旅行中、といった感じでいいのかもしれない。
こと普通列車のスピードで言ったら特急の通る路線よりも通らない路線の方が速いのかもしれないなあと思った。お客は長距離客ばかりらしく、ほとんど入れ替わらないまま進んだ。
やがてディーゼル車は平野におりてきた。
今日は高知で乗っていない土佐電鉄の後免町(ごめんまち)~伊野間に乗る予定である。
どうやら土讃線の御免駅から土佐電鉄の後免町までは歩いて行ける距離らしいので、このディーゼル車を御免で降りて後免町まで歩く予定である。ちゃんと見つかるか心配だけど、なんとかなるだろう。
やがてディーゼル車は御免駅に到着した。降りる。さすがにみんな高知までは行くらしく、降りる客はあまりいなかった。
鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷを見せて改札を出た。
土佐電鉄
後免駅
土讃線を御免(ごめん)駅で降り、駅前に出ると、女子高生がねこをなでているのが見えた。
しかもぼくが彼女たちの方向に歩いていくと彼女たちはねこから離れていった。チャンス!
ぼくはねこの所に行ってしゃがんでなでてみた。かわいいこだなあ。
今年は3月には三重県の御座(ござ)という港で、7月には九州のとある無人駅で、9月には鳥取砂丘に向かうバス通りでねこをなでることができた。
これからも全国のいろいろなところでねこをなでたいなあと思った。
しばらくなでたところで土佐電鉄の御免町(ごめんまち)駅に行くため立ち上がった。
なごりおしくねこから離れた。
後免〜後免町
駅前の道を右に曲がり、20メートルくらい進んだ交差点で左に曲がった。
そのまま狭い道をずんずん進んでいく。
しばらく進むと市電らしいレールが見えてきた。停留所も見えた。
しかしそこにあったのは後免町駅のとなりの駅のようだった。レールに沿って東に進まなければならない。
しかし、レールに沿った道はないので、レールよりちょっと南の道を東に進んだ。
さらにしばらく進むとようやく後免町駅のようだ。市電が停車している。
後免町〜はりまや橋
乗り込んで整理券を取るとドアが閉まった。
お客はけっこう乗っている。土佐電鉄は地元民に広く乗られているようだ。
ちょっと進むと道路と合流し、道路の南側を通るようになった。
乗っていると、各停留所の案内に加えて高知市内の広告などがアナウンスされる。
気分はすっかりローカルムードである。広告に混じって、
「みなさん国民年金に加入しましょう」
などとアナウンスしていたりしておもしろい。
そのうちいつのまにか線路は道路の中央を走るようになった。しかし右に曲がる車がどんどん線路に乗り入れて来たりして進みづらい。運転手さんもなかなかたいへんである。
電車は市街地へと入っていった。あたりに大きな建物が増えていく。お客もどんどん乗ってきて、車内はかなり混雑してくる。土佐電鉄は市民の足になっているようだ。
そして電車ははりまや橋に到着した。去年乗った高知駅前から桟橋5丁目までの路線との乗り換え駅だ。お客がどんどん降りていく。
はりまや橋〜鏡川橋
すっかりお客が減ってしまった。そのまま電車は市街地を進んでいく。まわりに大きな建物が見える。しかし大きな建物が停留所を過ぎるごとにどんどん減っていく。
そして電車はこの電車の終点、鏡川橋駅に着いた。まずは電車を降りなければならない。
さて乗り換えの時にはいくら払えばいいのだろう。ためしに100円玉を5枚てのひらに乗せ、運転手さんに見せて「伊野まで」と言った。
「そんなにいらないです。ここでは400円払えばいいです。残りの100円は伊野で払ってください。」
と言われた。
よくわからないが、後免町から鏡川橋までの運賃を払って「乗り換え券」をもらい、伊野で乗り換え券と、後免町から伊野までの運賃、500円から400円を引いた100円を払えばいいシステムらしい。
全国各地でこういう交通システムのルールは違っていて難しい。だけどこのくらい難しい方がボケ防止になっていいかもしれない。
ぼくは乗り換え券を受け取ってポケットに入れ、鏡川橋の安全地帯に降りた。車がビュンビュンスピードを上げてすぐ近くを通り過ぎるのでちょっとこわい。
しばらく待っていると、鏡川橋終着の電車が2本、3本と入ってきた。そのたびごとに乗り換えのお客が降りてきて、安全地帯はいっぱいになった。
どうやら鏡川橋終着3~4本に対して伊野行き1本という電車の割合らしい。
鏡川橋〜伊野
そしてようやく伊野行きがやってきた。乗り込んで進む。
電車は今まで通っていた大通りをはずれて細い道に入っていった。それとともに今まで複線だった線路が単線になった。
その細い道は、道路部分が1車線しかなく、車どうしがすれちがうには一方の車が必ず線路に乗り入れなければならない道路だった。だからこちらに来る電車の数は少ないようである。
右側に線路があり、左側に1車線の道路部分がある。各駅のベンチは線路の右にある。そして電車のドアは左にある。だから乗ってくる人はベンチから線路を渡って線路部分と道路部分の境目まで来て電車に乗らなければならない。なんとなくあぶないなあと思う。
すれちがう駅ではりまや橋方面の電車とのすれちがいを待ったりして電車は進んでいく。
そのうち伊野駅前という停留所に着いた。左側にJRらしい駅が見える。
しかしここは終点ではないらしいので、終点まで行こうと思い、降りずにいた。
市電〜JR
やがて終点伊野に着いた。思ったとおり、伊野駅前までは歩いてもたいした距離ではないようだった。
ぼくは鏡川橋で言われたとおり、乗り換え券と100円を渡して電車を降りた。
市電の伊野駅からJRの伊野駅へと向かう。途中にローソンがある。そう言えば今日は阿波池田でポテトチップスを買って食べて以来食事をしていない。
ぼくはローソンに寄り、夕食の弁当を買っていった。ぼくの旅先の食事はコンビニ弁当がものすごく多い。そしてコンビニ弁当を買うととても安心するのだ。
弁当は土讃線のホームで食べるのがいいだろうと思い、ぼくはJRの伊野駅へと向かい、しまっていた鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷを取り出した。
土讃線その2
伊野駅
土讃線の伊野駅で、鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷを見せて改札を通った。
階段を昇っておりて宿毛方面のホームに行き、さっきローソンで買った弁当を食べた。
今日はお昼がポテトチップスだったので、こういう夕食はありがたい。
食べ終わってしばらく待つと須崎行きディーゼル車がやってきた。
土佐電鉄でかなり時間を要してしまったので、もう午後8時を過ぎており、お客は少なく、半分眠りながら須崎へと向かった。
須崎駅
景色も見えないままディーゼル車は須崎に着いた。まずはここで降り、数十分後の特急南風(なんぷう)で宿毛に行くのである。
また階段を昇っておりて改札に行き、鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷを見せて改札を通った。
このきっぷはあさってまで用がないので、とりあえずきっぷをしまった。
さて、まずは宿毛まできっぷを買わなくてはいけないので、どこにあるのだろうと自動券売機を探してみた。
土佐くろしお鉄道
須崎〜窪川
須崎駅の自動券売機を見てみたら、ここの自動券売機は宿毛(すくも)までオレンジカードできっぷが買えるようだ。とりあえず買った。次は特急券だ。
しかし、どのように自動券売機を見ても、特急券は窪川(くぼかわ)までしか買えないようだ。窓口はしまっているし、しょうがない。窪川~宿毛の特急券は車内で買うことにした。
改札の時刻になり、乗車券と特急券を見せてホームに入り、階段を昇っておりて宿毛方面のホームに来た。こんな夜おそい時間に列車を待つ人はとてもわずかである。
特急南風がやってきた。乗って自由席に行った。さすがにあまりお客がいない。ぼくはもしかしたら海が見えるかもしれないと思い、左側の席にすわった。
そのうち車掌がやってきたので窪川から宿毛までの特急券を買った。
窪川〜宿毛
特急は山の中を進んでいく。窪川に着いた。去年はここから予土(よど)線に乗ったっけなあと思い出しながらまた山の中を進む。
そのうち海が見えてきたが、夜遅いのでまっくらで、海がそこにあるとい雰囲気が感じられるだけであった。
また海が見えなくなり、山の中らしい場所をぶんぶん飛ばしていく。いつでもそうだが、普通列車の旅行の途中の特急というのはとても速く感じられる。
中村に着いた。つい最近までの土佐くろしお鉄道の終点である。もっとお客が降りても良さそうなのに、あまり降りない。そのまま進む。なんとなく若干線路のがたがたが少なくなったような気がする。
すいすい特急は進む。どうやら高架のようだ。高架に上がったまま、特急は終点、宿毛駅に到着した。特急を降りて改札に向かう。夜遅い特急ではあるが、ここではけっこうお客が降りるようだ。乗車券と特急券を渡して改札を出た。
宿毛駅〜ト字路
さて、ここからの予定だが、宿に泊まるつもりはない。
ここの近くに九州の大分県の佐伯(さいき)港に向かうフェリーの出ている宿毛港があり、しかもそのフェリーは夜中の2時に出航するのだ。しかも船内にはじゅうたんが敷いてあって寝ることもできる。佐伯まではわずか2時間だが、ここのフェリーを宿代わりにすれば宿代もいらず、お得である。そういう計画を立てている。
今は午後11時なのであと3時間ある。宿毛駅から宿毛港までどれくらい距離があるかわからないが、3時間もあれば歩いて行けるんじゃないかと考えた。
ぼくはかなり立派な高架の宿毛駅を背に、西に向けて大きな道路に沿って歩き出した。
ちょうど上弦の月が出ている。上弦だから出ている方向がちょうど西ということだ。そう思い、月に向かって歩く。
しばらくは街の中だ。宿毛の街は大きな建物と言ったらスーパーくらいしかなく、時間が時間なので人通りも少ない。
そんな中、西に進むということもあり、昔孫悟空の人形劇でドリフターズが歌っていた「ゴーウェスト」という歌を歌いながら西へと進んでいった。道が合っているかわからないが、徐々に家の数が少なくなっていった。
ト字路〜宿毛港
そして、まっすぐ進む道と右に曲がる道のト字路にさしかかった。さてどうすればいいだろう。
こちら側からは何の案内もなかったが、ト字路を進んで後ろを振り返ると、直進すれば中村方向、左に曲がれば「深浦」という所に進むらしい。
いろいろ考えたが、この看板は港を出た車のためのものなんじゃないかと思い、直進することにした。するともう人家がなくなった。道は左にカーブしている。
やがて海岸に出た。海にはやや小型の船がいくつか浮かんでいる。そのまま道は南に進み、やがて再び左にカーブした。さらに進む。
すると港っぽい場所に出た。なんとなくフェリーが出る場所らしい待合室も見えてきた。
どうやらここが宿毛港のようだ。なんとか自力で駅から港へと歩いたのである。
宿毛港
待合室は照明が消えていたが、ドアには鍵がかかっていない。中に入って見回すと、「出航の1時間前に乗船券販売開始」という案内が見えた。
出航は2時、今は11時半である。ぼくは待合室にあったソファーに横になり、1時を待つことにした。
しばらく待った。そしてお客が数人入ってくる。さすがに7月の松山→小倉のフェリーとは違い、ものすごく混雑するというわけでもなさそうだ。
そして1時がやってきた。
ようやく窓口が開いたので列に並び、自分の順番が来たので「徒歩」と申告して乗船券を買った。
そしてさらに待つと佐伯から折り返しの船がやってきたらしく、乗船時間になった。
いつもフェリーに乗るように、待合室を出ててくてく歩き、車が入る入り口のわきから入った。
今回は2時間と短いが、客が少ないので2等の船室では横になって眠れそうだ。
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