77.岩泉線・仙台の深夜散歩・2日目
仙石線
吉野家~仙台
台原の吉野家を出て、ぼくは南に向けて歩き出した。今は午前1時か2時ごろである。
てくてく大通りを歩く。仙台駅まで歩くのなら、一番丁や中央通りを経由して行こうと思った。それなら北仙台駅の方向に歩こうと思い、歩いてみた。北仙台に来た。ようやく仙台の市街地に戻ってきたわけである。
北仙台から南に進み、県庁・市役所の近くに出た。このあたりは午前2時だと人通りは全くない。車がときおり何台か行きすぎるだけである。さらに南に進み、ようやく定禅寺通り(じょうぜんじどおり)までやってきた。ここから先は一番丁である。歩行者通りを南に進んでいく。
昼間は繁華街のはずだが、夜は人通りが全くない。飲み屋はここからちょっと西の国分町にあり、それも24時間営業しているわけではないので、本当に人通りのない土曜の夜なのである。あしたは成人式なので、成人式になれば混雑するかもしれない。
広瀬通りに来た。このあたりに24時間営業の店があるようで、多少人が歩いている。でもほとんどタクシーに乗って行ってしまう。一番丁をさらに南に進む。
そして中央通りまでやってきた。左に曲がる。あとはまっすぐ進めば仙台駅だ。このあたりも店はたくさんあるのだが、深夜に営業している店はないようだ。
東二番丁の横断歩道を渡って東に進む。まだ早朝に働く人もおらず、閑散とした場所である。
仙台駅前
そして横断歩道を何回か渡り、中央通りの方の吉野家の前を通り過ぎ、ようやく仙台駅の北口にやってきた。今はまだ午前3時である。
去年の冬は急行津軽が深夜の仙台に停車する関係で駅は開いていたが、去年の夏を最後に仙台を通過する(正確には運転停車)ようになってしまい、そのため夜は駅が閉まるようになってしまったのだ。
いずれにしても、まだ石巻線の石巻(いしのまき)~女川(おながわ)間に乗っていないので朝一番は仙石線に乗ることにしよう。朝一番早い電車が仙石線ということもある。
北口の前で、じっと待つ。1月の寒さが身にしみる。
ようやくシャッターが開いた。階段をおりていく。そして改札にハートランドフリーきっぷを見せて通り、地下通路を進んでいく。
階段を上がると仙石線のホームである。こんな時間でもわずかに客はいる。三連休のなかびだからだろうか。
仙台~石巻
まだ真っ暗な中、石巻行きの電車が入線してきた。乗る。とりあえず疲れていたので眠ることにする。発車も知らずにぐっすり眠った。
気がつくと海沿いを走っていた。うっすらと明るくなっており、もうすぐ石巻のようだ。客の数は相変わらず少ない。
そして到着。去年石巻に来て知ったことだが、学生時代に石巻に来た時と違い、仙石線のホームは石巻線のホームのとなりにあった。だから改札を出なくても石巻線に乗り換えることができる。ぼくは仙石線の電車を降り、石巻線のディーゼル車の出るホームに向かった。
石巻線
石巻~女川
仙台から乗ってきた仙石線の電車を石巻(いしのまき)で降りた。まだ朝6時をまわったくらいであり、駅に人影はない。
去年石巻に来た時と同じで、石巻線に乗り換えるには改札を通らなくていい。ホームを進んで階段をのぼっておりて乗り換えだ。去年と同じディーゼル車に乗る。
こちらも客は少なく、数えるほどしかいない。女川(おながわ)行きはまもなく発車した。
ディーゼル車は市街地を離れ、やがて右手に海が見えてきた。いい景色である。
そして海のそばには半島が見える。あれが牡鹿(おしか)半島だろう。昔学生時代に実家の家族と金華山(きんかさん)に行く定期観光バスに乗り、行き帰りに牡鹿半島をバスで通ったことを思い出す。
そのうち海は見えなくなる。女川までの間、駅にいろいろ停車していくが、客はまるでいない。さすがに日曜日だからなあ。
そしてようやくディーゼル車は終点、女川に到着した。ここでディーゼル車を降りる。
女川~小牛田
終着駅なんだから改札を出なくてはならないだろうと思い、ハートランドフリーきっぷを見せて改札を通ってはみたが、別に海が見えるわけではなく、お店があるわけでもない。ちょっとした集落である。
特にすることもなさそうなので、自動販売機でコーラでも買っていくことにした。そしてまた改札を通ってディーゼル車に戻る。
そしてまた石巻に向けて発車。やはり駅ではほとんど客は乗ってこない。また海が見えて石巻の市街地に入り、石巻到着。ここで若干客が乗るが、それほど多くはないようだ。
ディーゼル車は石巻を発車した。左右の景色は去年見ているから特に見る必要もないか。とりあえず眠いので眠っておこう。
しばらく眠ると終点の小牛田に近づいたようだ。ここから先、北上に行って北上線に乗る予定である。本来なら陸羽東線で古川に行って新幹線で北上に行くのが便利なのだが、あいにく1時間以上陸羽東線が来ないので東北本線で一ノ関に行って新幹線で北上に行くことにする。
そしてけっこう田んぼの広がる終点小牛田に到着した。ここで東北本線の一ノ関行きに乗り換えである。ぼくはディーゼル車を降り、階段を上がっておりて一ノ関行きホームに来た。
東北本線
旅行記本文
女川(おながわ)から乗ってきたディーゼル車を小牛田(こごた)で降りた。朝早いけどすいていた列車だった。さすがに成人の日で休日だからこんなものなんだろう。
階段を上がっておりて一ノ関行きのホームに来た。電車がやってきたので乗った。やっぱりすいている。そして発車。
北国の電車は暖房がかなり効いている。寒いので窓も曇っていて外が見えないまま電車は進む。遅れずに無事新幹線、そして北上線と乗り継げるだろうか、それだけ心配しながら電車は北へ進んでいく。
この電車は去年弘前から青森まで乗った電車とほぼ同じでオールロングシートではあるが、古い客車と違ってすきま風などもなく、快適な電車である。いい電車だなと思いながら平野を進む。一ノ関が近づくと左右の山が近づいてくる。
あまり客が増えないまま定刻に電車は一ノ関に到着した。ここで降りる。
一ノ関は在来線と新幹線がけっこう離れている。階段を上がり、てくてく通路を進んでようやく中間改札に着いた。ハートランドフリーきっぷを見せて中間改札を通る。予定したやまびこに乗れそうだ。
東北新幹線その3
旅行記本文
小牛田(こごた)から乗ってきた電車を一ノ関で降りて、中間改札を通ってやまびこの出るホームに向かった。
やまびこは自由席が仙台寄りにあるので仙台方向に歩いていく。さすがに1月なので寒い。仙台みたいなちゃんと屋根のある駅とは違い、一ノ関はホームの上こそ屋根があるが、レールの上には屋根がないのだ。
寒い中、ようやくやまびこがやってくる。乗ろう。
みごとにがらがらであった。土曜の朝の列車はとても混雑するが、日曜朝だとこんなものなのである。
あしたも振り替え休日なのだから、きょうとあしたでハートランドフリーきっぷを使う人がいるかと思ったがそんなにいないようだ。やまびこは発車する。
やまびこは、きのうも通ったレールをすいすい進んでいく。きのうと違って客が少ないので窓の外が良く見える。雪の山が多少遠くに見えるいい景色である。
やまびこは遅れることもなく、きのうも降りた目的地、北上に到着した。きょうもここで降りる。
さあ、時刻表どおりなら横手行きのディーゼル車の発車までそんなに時間がない。急いで乗り換えようとぼくは階段をおり、中間改札に行き、ハートランドフリーきっぷを見せて通った。きょう向かうのは北上線だ。
北上線
北上駅
一ノ関から乗ってきた新幹線を北上で降り、階段をおりて在来線ホームへと向かった。
長い通路を急いで走り、ようやく北上線ホームだ~と思ったが、もう来るはずのディーゼル車がまだ来ていない。
お客はけっこうたくさんいて、みんな列車を待っている。発車時刻が来ても同じ状態だ。
そのうちお客がさらに増えたようだ。やっぱり雪の季節は列車が遅れるのかなあ。
数10分が過ぎ、なんとかディーゼル車がやってきた。お客が降り、ホームにいたお客が乗る。
もちろんすわれない。
お客はいかにも青春18きっぷで旅行中、といった人たちがけっこういる。
大きな3脚つきカメラを持った人がいる。それから地元のお客らしい年を取ったおじいさんおばあさんもいる。なかなか大盛況のディーゼルカーであった。
すれちがい
定刻よりかなり遅れて横手行きディーゼル車は発車した。しばらくは平野を進む。
雪の中を列車は進む。各駅停車なので各駅に停車するが、よく見るとどの駅もホームが1つですれちがえる構造になっていない。
さてどこですれちがうのかと見守っていたら、そのうちホームが2つある駅に停車した。
うまいぐあいに北上行きの列車がやってきた。うまくすれちがえそうだ。
はて、こっちの列車はこんなに遅れているのにどうしてうまくすれちがえるのかと疑問に思ったが、よくよく考えたら向こうも同じ時間だけ遅れていたらすれちがう駅に着くのは同じ時刻になってうまくすれちがえることがわかった。
逆に言うと、ひとたびどこかの列車が遅れると、いもづる式に他の列車も遅れてしまうのだ。すれちがう駅が少ないのも考え物だなあと感じる。
すわれないまま、列車は山の中へと入っていった。
ほっとゆだ~横手
そしてディーゼル車はほっとゆだ駅に着いた。かなりのお客が降りていく。けっこうここが目的地の人が多いようである。ぼくが去年急行津軽の中で会った人も横手で降りてほっとゆだに行くと言っていた。人気なのだろう。
そしてここから乗ってくる人もいる。けっこう沿線はJRを使うお客が多いんだろうなあと感じた。
しばらく停車し、ようやく発車した。お客は多少すくなくなったが、まだすわれない。
山は続く。北上線は山の中の路線である。
雪の中を進んでいく。さすがに急いで走って遅れを回復しようとは考えていないようだ。
多少山が少なくなったころ、ディーゼル車は横手に着いた。お客が降りていく。なぜかみんな出口に向かうようだ。
横手駅
ここから奥羽本線に乗り継いで先に向かう人はとても少ないらしい。
横手の予定到着時刻よりすっかり遅れてしまっている。北上での遅延がそのまま持ち越されたか、もしくは北上線内でさらに遅れているようだ。
すでに秋田行き特急こまくさが出る時刻は過ぎてしまったなあ、どうなるのかなあと思っていたら、いきなり普通列車がやってきた。
どうやらこまくさの1本前に出るはずの普通列車が今ごろ来ているようだ。奥羽本線も列車が遅れているのである。
ぼくはこの時ほど701系の電車をありがたいと思ったことはなかった。なにしろ暖房がきいた中に入れるのである。そうでなければずっとホームでこごえていなければならないのだ。そんなわけでぼくはあまり701系はきらいではない。
ぼくは遅れているその秋田行き電車に乗り込んだ。
奥羽本線
旅行記本文
北上から乗ってきたディーゼル車を横手で降りて、秋田行きの電車に乗り込んだ。
お客はほとんどおらず、がらがらである。
日曜日とは言え、やっぱりこんな雪の日に電車に乗る人もいないのかな。
それにしても快適な車内である。オールロングシートとは言え、ちゃんと暖房が効いていてすきま風のない車内は雪国ではとてもありがたい。
電車は大曲を過ぎたが、やっぱりお客は少なく、雪がうずまく景色を見ながら秋田に着いた。
たっぷりと遅れて着いたので、すでに特急いなほは出てしまっている時刻である。
しかし駅の案内を見ると、どうやらいなほも遅れていて、なんとか間に合いそうである。
ここはお客は多く、しかめっつらをした客たちが黙って電車を待っていた。
予定では由利高原鉄道に乗るつもりだったが、もし乗ったら無事に帰れるかわからない。
このまままっすぐ新潟経由で東京に帰ることにした。
羽越本線
旅行記本文
横手から乗ってきた電車を秋田で降りた時にはもう新潟行きいなほが出る時刻をすっかりまわっていたが、いなほが遅れていたためなんとか間に合いそうだ。案内に従って他の客についていって自由席の位置に並ぶ。
30分ほど遅れて青森からいなほがやってきた。お客はそれほど多くなく、なんとかすわれた。そのまま発車である。
そのうちくもった窓の外から暗い日本海が見えてきた。1月の日本海は暗い海である。
秋田~酒田間を走るのはきょうが初めてだが、海は季節によっていろいろな姿を見せるのでいいものだなあと思う。けさ見た石巻線の石巻~女川の海がけっこうおだやかだったのに比べると違うものだなあ。
酒田近辺で海を離れるが、鶴岡を過ぎてまた海のそばを通る。
それにしても、半分眠りながらこうやって景色をながめることができるのは列車の旅の特権だなあと思う。
村上を過ぎ、海を離れていく。新潟の平野に来て、新発田から白新線に入るころにはそろそろ暗くなり始めてきた。
結局遅れを取り戻すことはできず、ダイヤどおりの上越新幹線には接続しないらしい。まあ、いなほと違って新幹線は1時間に何本か通っているからいい。
この列車に接続するのは臨時の上野行きだとのことだ。日曜だと上野行きが出ているのだ。最近上野の新幹線から在来線に行く長いエスカレーターを通っていないけど、どんなものだろう。
そんなことを考えているうちにいなほは新潟駅に到着した。階段を上がり、中間改札でハートランドフリーきっぷを見せて通った。あとは新幹線に乗ればこの旅行も終わりだ。
上越新幹線
旅行記本文
秋田から乗ってきた特急いなほを新潟で降りる。すでに接続の上越新幹線は待たずに発車してしまったが、上越新幹線はたくさん走っているので待たずに乗ることができる。
今度のあさひは臨時列車なので上野行きだ。ひさしぶりに上野の長いエスカレーターに乗れるなと思いながら、ハートランドフリーきっぷを中間改札で駅員に見せて通り、新幹線ホームに行く。
自由席に行く。いなほの自由席にはけっこうな人数が乗っていたはずだが、新幹線にはあまり乗ってこない。新潟に用事のある人が多いのだろうか。
とりあえずあさひは発車する。東北の列車は雪でかなり遅れていたが、上越新幹線はじょうぶな路盤なのできょう遅れることはないようだ。
雪の見える新潟県をあさひは走っていく。しばらく眠ることにしよう。
起きるともう関東平野に入っているようだ。こちらには雪はない。
そのまますいすい進んでいく。大宮を過ぎるとあまりスピードを上げなくなり、赤羽を過ぎたあたりで地下に入っていく。
そしてそのまま上野の地下ホームに着いた。臨時列車なのでここで終点である。あさひを降りた。
エスカレーターに乗る。長ーい長ーいエスカレーターである。
このエスカレーターに乗るのも、就職した最初の年に仙台に行った時以来だなと思った。あまり乗ることのなかったエスカレーターだが、たまには乗ってみるのもいいものだなと思いながら、大連絡橋までやってきた。今回の旅も、なんとかアパートまで帰れそうだなと思いながら、山手線に乗ってアパートに帰ることにした。
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