1995年7月にJR東日本は完乗しましたが、東日本エリアの私鉄はまだ乗っていない路線がけっこうありました。中でも雪で1月に乗れなかった由利高原鉄道が悔やまれるところでした。
でも時刻表によれば、始発のやまびこで盛岡に行き、角館に行ってから秋田内陸縦貫鉄道に乗って鷹ノ巣(鷹巣)に行き、特急たざわで秋田に行き、さらに羽後本荘に行って由利高原鉄道に乗れば、特急いなほで最終の東京行き上越新幹線に新潟で間に合うのです。ことしは10月に鉄道の日記念・本州乗り放題きっぷで旅行したし、またいつか旅行しようかと思っていました。
11月中旬になってから、時刻表の12月を見て、ふとあの秋田内陸縦貫鉄道と由利高原鉄道を1日でまわるルートはまだ乗れるか見てみました。
乗れません!鷹ノ巣から秋田までのたざわの時刻がすれてしまい、普通列車で秋田に向かって由利高原鉄道に乗るとどうしてもその日のうちに東京に帰れないのです。
ぼくはこれを見て、これはダイヤが変わらない11月のうちにウィークエンドフリーきっぷを使って乗るしかないなと思いました。さっそく次の土日の土曜にこの2つの路線に乗ることにしました。
さて日曜日にどこに行くのがいいでしょうか。まだ残っている路線には弘南鉄道大鰐線がありましたが、ちょっと1日で行って帰ってくるのはつらいです。
ちょっと近いところにくりはら田園鉄道がありますので乗ってみようと思いました。それから途中の福島交通にも乗ることにしました。
こうしてウィークエンドフリーきっぷを買い、アパートもより駅の始発の電車で新幹線やまびこへと向かったのです。
仙台まで
なんとか朝早く起きて、始発の盛岡行きやまびこに乗ることができた。
しかし、自由席はものすごい混雑である。おそらくみんなウィークエンドフリーきっぷを使っているのだろう。この分だと少なくとも仙台まではすわれなさそうだ。
やまびこは宇都宮の平野を過ぎ、栃木と福島の県境の森に入っていった。いつもならいい景色だなあと思うところだが、今日はどうしようもなさそうだ。
車内販売がやってきた。ビールだ。混雑しているのにたいへんそうだ。立っている客をかきわけてお姉さんが進んでいく。
もしもアサヒのスーパードライが売っていたら買おうかと思っていたが、どうやらビールはキリンとサッポロしか売っていないようだ。東海道新幹線ならスーパードライを売っているのになあ。
居酒屋で飲めるビールが1メーカーだけなのといっしょで、路線によってビールのメーカーは限定されているのだろう。やまびこは進んでいく。
福島を過ぎ、トンネルを抜けて仙台に着いた。降りる客はいるが、すわれるほどは降りなかった。そのままやまびこは進んでいく。仙台から北は各駅停車だ。
仙台~盛岡
11月なので雪が降っているわけでもなく、もう紅葉シーズンは去ったはずなのに、ものすごい客の数である。もしかしたらいつもウィークエンドフリーきっぷの使える時期の土曜朝のやまびこはこれくらい混雑するのかもしれない。
一ノ関を過ぎ、北上を過ぎ、だんだん客は減ってきたが、それでもすわれない。
しかし新花巻で、ようやく席があいた。わずか1駅だけだがすわろう。
すわってひといきつくともう盛岡である。
盛岡では青森方面の特急はつかりも秋田方面の特急たざわも接続が良い。やまびこは定刻に着いたようなので予定のたざわに乗れそうだ。
やまびこは終点盛岡に到着した。階段をおり、中間改札にウィークエンドフリーきっぷを見せて通った。さあ、角館(かくのだて)までたざわに乗ろう。
旅行記本文
東北新幹線を盛岡で降りて、中間改札を通って田沢湖線の特急たざわの出るホームにやってきた。
新幹線やまびこでは新花巻までずっと立っていたので田沢湖線ではどうだろうと自由席の車両に入ったが、やっぱりいっぱいである。デッキで立つことにした。それにしても、東京駅を朝一番に出るやまびこって、やまびこ自体も混雑しているが、盛岡で乗り換えの電車も混雑しているんだなあ。
たざわは発車し、市街地を出て盆地を進んでいく。
車内販売が通りかかった。よく見ると、ああ!スーパードライだ!
やまびこでは車内販売はキリンとサッポロしかなく、アサヒのスーパードライは売っていなかった。しかしたざわでは売っているのだ。東海道新幹線ではスーパードライは売っているし、東北新幹線で売らないのは深いわけがあるのだろうが、スーパードライはうまいのでいつでも飲みたいものである。すぐさま買ってグビグビ飲む。ぷはー。うまいなあ。
そのうち岩手・秋田県境にさしかかる。山がすぐそばに見え、ところどころ川も見えていい景色である。田沢湖駅でお客がかなり降りてすわれるようになった。目的地の角館(かくのだて)まではすぐそこだが、すわっていこう。スーパードライの酔いがここちいい。
それほど時間もかからずに、特急たざわは目的地、角館に到着した。ここで降りる。ウィークエンドフリーきっぷを見せて改札を出た。
時刻表では秋田内陸縦貫鉄道の鷹巣(たかのす)駅に行くディーゼル車まで時間があるので、角館を散歩してみようと思ったが、その前にまずきっぷを買おうと、きっぷ売り場を探すことにした。
発車
盛岡から乗ってきた特急たざわを角館(かくのだて)で降りてみた。さて鷹巣(たかのす)まで行くきっぷを買おう。
いったんJR角館駅を出てみると、右手に別の駅舎があった。こちらが秋田内陸縦貫鉄道の角館駅の駅舎のようだ。雨が降った時はかさをささないと乗り換えの時にぬれてしまうだろう。
とりあえず鷹巣まできっぷを買っておいて、まずは駅の周辺を散歩することにした。
車が通る狭い道を進む。あまり大きな店はないようだ。それほど大きな街でもないようだなあ。まあいいか。引き返そう。
引き返して駅舎で待つと発車時刻が近づいた。きっぷを見せて改札を通ってディーゼル車に乗る。ボックス席のある多少古いディーゼル車だ。土曜の午前中、まだ学校は授業が終わっていないようでそんなに学生は乗ってこない。そして発車である。
ディーゼル車は田沢湖線と分かれて北に進んでいく。平野をしばらく進んでいくが、やがて長いトンネルに入った。今日は朝早かったし、東北新幹線でも田沢湖線でもずっと立っていたのでやがて眠ってしまった。
到着
気がつくと、いつのまにか高校生に囲まれていた。どうやら沿線に高校があり、鷹巣方向に帰る学生らしい。沿線に高校があるくらいだから、それほどさびれた場所ではないのだろう。
男子学生がぼくに何か話しかけてきているようだが、何を言っているのかさっぱりわからない。このあたりは津軽地方などと同じで、何を言っているかさっぱりわからない方言を使っている地方のようだ。
ディーゼル車は進んでいく。学生は降りていくだけで、別の高校の学生が乗ってくるということはないようだ。全国のローカル線で、こういう高校生しかお客がいない光景が見られるのだろう。
高校生が乗ってきたあたりでは山が迫るせまい平野だったが、進むうちに山は遠くに見えるようになった。
だいぶ時間がたったころ、ディーゼル車は終点、鷹巣に到着した。どうやらここはJR鷹ノ巣(たかのす)駅とホームを共有しているようで、そのまま乗り換えられるようだ。
4月に愛知環状鉄道から中央本線に乗り換えた高蔵寺(こうぞうじ)みたいな場所だ。同じ中央本線の東京にある武蔵境も、西武多摩川線のホームが中央本線のホームと共有(1995年現在)なので似たようなものだろう。
高校生たちにつづいてぼくはディーゼル車を降りた。ぼくみたいに特急たざわに乗るためにホームにとどまる高校生はいなかった。定期券じゃ特急には乗れないし、鷹ノ巣駅近くのどこかで普通列車を待つのかな、と思った。
秋田に向かう特急たざわは向かいのホームから出るらしい。ぼくはそのままたざわを待つことにした。
旅行記本文
角館(かくのだて)から乗ってきたディーゼル車を鷹巣(たかのす)で降りた。いっしょに乗ってきた学生たちはみんな改札を出ていくようだ。
どうやらこれから乗る秋田経由盛岡行きの特急たざわはすぐ向かいのホームから出るようだ。4月に菅野美穂ちゃんと握手する時に、岡崎から乗ってきた愛知環状鉄道から、名古屋行き中央本線に高蔵寺(こうぞうじ)で乗り換えた時も高蔵寺では愛知環状鉄道の向かいから中央本線に乗れて便利だったが、それと同じようだ。
ただしJRとしての駅名は鷹巣ではなく鷹ノ巣だということだ。三ノ宮もJRが三ノ宮で私鉄が三宮だから似たようなものだろう(その後阪急・阪神・神戸高速鉄道の三宮は神戸三宮になっている)。
去年の10月に大館で花輪線から特急いなほに乗り換えた時はいなほに待ってもらって乗ったものだったが、今度はそのようなことはなく、ゆったり待っているうちに特急たざわが到着した。乗ってみる。さすがに空席はあった。
たざわは秋田に向けて進んでいく。途中東能代(ひがしのしろ)までは平野を進んでいく。それほど高い山も見えず、いい景色である。
東能代を過ぎると植物のおいしげる中を進むようになる。このあたりは大きな都市もなく、自然の残るいい場所である。去年10月に降りた八郎潟を過ぎ、追分を過ぎた。秋田が近づいてもしばらく草むらが続き、秋田の近くになってようやく都会になってくる。
そしてたざわは目的地、秋田に到着した。定刻通り到着したのでどうやら今日は目的通り由利高原鉄道に乗りに行くことができそうだ。とりあえず飲み物でも買おうかと思い、いったん改札を出て駅の外のJC(コンビニ)に行くことにした。
旅行記本文
鷹ノ巣(たかのす)から乗ってきた特急たざわを秋田で降り、いったん駅の外に出た。
駅前にはJC(コンビニ)があったので弁当を買う。なにしろコンビニ弁当は駅弁より安いので最近はもっぱら駅弁よりもコンビニ弁当である。どうせこれから乗る電車はオールロングシートだし、待合室のいすの上で弁当を食べてしまおう。だいぶ午後もおそい時間だが、なんとか昼食にありつけた。
そしてまたウィークエンドフリーきっぷで改札を通る。めざす羽越本線の電車のホームに行き、電車の入線を待つ。
やってきた。電車に乗る。土曜の午後だが意外と電車は混雑しておらず、なんとかすわれた。
そして電車が発車する。
このあたりは1月に通っただけで、あの時は雪が舞っていた。だからしっかり雪のない景色を見ておこう。
電車はすぐに市街地をはずれて人気の少ない場所に入っていく。それほど海が見えるわけではない。
あまり時間もかからず電車は目的地、羽後本荘に到着した。ここで降りる。
まあとりあえずここまで列車が遅れることもなく乗り継げた。ぼくはいったん改札を出て、由利高原鉄道の矢島まできっぷを買うことにした。
羽後本荘~矢島
秋田から乗ってきた電車を羽後本荘駅で降りるとまずは由利高原鉄道のきっぷ売り場を探した。自動券売機が見つかったので矢島まできっぷを買う。
そして改札を通り、ディーゼル車に乗る。あまり新しくはないがボックス席のあるディーゼル車だった。ディーゼル車は発車する。
高校生たちがいることはいるが、土曜日なのでかなりの生徒は早い列車に乗ったらしく、それほど乗っているわけではない。
羽後本荘付近の山々が見える、とてもきれいな景色ではあるのだが、11月終わりの日は短く、もう日は沈み暗くなってきた。列車は進んでいく。
それほど時間もかからずに終点矢島に到着である。多少乗っていた高校生たちがディーゼル車を降りて帰っていく。
矢島~羽後本荘
ぼくはいったん改札を通り、羽後本荘まできっぷを買ってまた改札を通ってディーゼル車に戻った。もうほとんどお客はいない。
矢島はこじんまりした駅なので、ディーゼル車から待合室が見えた。待合室にいるあの女の子かわいいなあ。
今になって思うとあの子は家族の迎えの車でも待っているんだろうなあと思った。
そしてとっぷりと日は暮れたころ、ディーゼル車は発車した。山ももう見えない。家々の明かりもそれほど見えてこない。
遅れることもなく、どうやら最終の新潟行き特急いなほに間に合いそうだ。
途中駅からも客は乗ってこない。そのまま静かにディーゼル車は終点羽後本荘に到着した。さあ、いなほに乗ってアパートに帰ろう。
旅行記本文
矢島(やじま)から乗ってきた由利高原鉄道のディーゼル車を羽後本荘で降りて、JRのホームに向かった。
とっぷりと日が暮れていて腹も減っているが、新潟行き特急いなほまでそれほど時間はないし、駅前に店とかもないようだったので夕食を食べるわけにもいかず、とっぷりとホームでいなほを待った。
いなほがやってきた。ドアが開く。自由席に乗る。がらがらであった。
ウィークエンドフリーきっぷが使える土曜日であるが、さすがに東北ではもう観光シーズンでない11月では客はこんなものかもしれない。すわると発車だ。
いちおう昼間なら海が見える右側の席にすわってはみたが、さすがに暗く、海は全く見えない。ほとんど客も乗ってこないまま酒田を過ぎる。
この列車は最終の上越新幹線あさひに接続していて、遅れると東京に帰れないはずなのだが、不思議と遅れる感じがせず、今日は列車に乗りっぱなしの1日だったなあ、12月になってこの「秋田内陸縦貫鉄道→由利高原鉄道」の乗り継ぎができなくなる前に乗れて良かったなあと思った。
いなほは新発田(しばた)を過ぎた。特に遅れる様子もなさそうだ。新潟が近づくと明かりが増えてきて、終点新潟に無事到着した。
ぼくはいなほを降り、階段を上がって新幹線ホームの方に進み、中間改札にウィークエンドフリーきっぷを見せて通った。改札近辺はあまり客もおらず、どうやら最終あさひはあまり混雑しないようだなと思った。
旅行記本文
羽後本荘から乗ってきた特急いなほを新潟で降り、中間改札をぬけて東京行き上越新幹線あさひのホームにやってきた。乗って自由席車両に進む。
最終のあさひだからもっと混雑しているかと思ったが、おもいのほかすいていた。すわってしばらくして発車である。
もう景色も見えないので、ゆっくりと眠る。
このままいったんアパートに帰るともう12時を過ぎてしまう。
まだ夕食を食べていないからアパート近くのコンビニで弁当を買って食べよう、そして土曜の夜だからユーミンのオールナイトニッポンでも聞いて、あしたは多少遅く起きてから新幹線に乗って福島交通とくりはら田園鉄道に向かおうと思った。
あさひはトンネルを何本かぬけて高崎に到着した。どうやら遅れずに東京に向かうようだ。なんとか終電に乗ってアパートに着けそうだ。
今夜のオールナイトニッポンでもユーミンは「おーらよっと!」と言ってくれるかなと思いながら、アパートに帰っていった。