Sorry, Japanese only! (1994年6月その2)

87.五能線の海・松本電鉄

説明

ある日時刻表を見ていたら、「ノスタルジックビュートレイン」という、なんだかおもしろそうな名前の列車を見つけた。なんでも五能線というところに走っているそうだ。おいそれと行けない場所だなあと思ってさらに時刻表を見ると、上野から出ている夜行の急行津軽で東能代まで行くと乗り継げることがわかった。なんとしても行ってみたくなった。

ことし2月にTiara(ティアラ)の菊池奏衣(かなえ)ちゃんと渡辺幸恵(ゆきえ)ちゃんを見るため、ハートランドフリーきっぷ2枚と北海道フリーきっぷを組み合わせてさっぽろ雪祭りに行ったのだが、この時使ったハートランドフリーきっぷがまた使いたくなった。これで行ってみよう。

しかし土曜の夜に津軽に乗ったのでは不経済だ。時刻表をさらに見ると、津軽は宇都宮で日付が変わることがわかった。そうだ、金曜の夜に宇都宮まで行って、宇都宮から津軽に乗ればハートランドフリーきっぷが有効に使えるぞ、と思った。よし、宇都宮までは東武鉄道が来ているから東武で宇都宮に行こう!と考えた。

あと、2月の旅行も最後に酒田から直江津、松本とぐるっと回って千葉行きのあずさに乗る計画を、雪のため断念したことがあったので、このルートも通ってみたい。

以前ならアイドルを見に行くとか、目的のある時しか遠くまで行かないぼくだったが、これからはいろいろな路線に無目的に乗ってみたいと思い、さっそくハートランドフリーきっぷを買った。さあ、出発だ。

東武日光線

業平橋~南栗橋

都営浅草線の電車は、無事押上駅に到着した。

ちょっと前に業平橋(なりひらばし)駅に押上寄りの出口ができて、乗り換えられるようになった。
以前は浅草で乗り換える必要があったが、浅草線から東武はなぜか横断歩道を渡る必要があったので、押上の乗り換えはありがたい。

しかし業平橋に押上側から入ると、たいてい臨時ホームを端から端まで歩いて階段を上がる必要があるのがめんどうである。ぼくは押上駅を出て業平橋の券売機で東武宇都宮まできっぷを買い、改札を通った。
ありゃラッキー。臨時ホームに電車がある。
このホームは1日に何本かある業平橋始発の電車で、押上から乗り換えるには便利な電車なのである。しかも南栗橋行きだから終点まで乗っても良い。

まずは乗る。浅草始発の電車と違ってすいていて楽にすわれる。もちろん北千住では満席になるのだが。すわってしばらくすると発車だ。まずはいねむりしていこう。
北千住で満員になり、そのまま時間が過ぎたらしいが、気がついたら東武動物公園を過ぎていて、客もまばらだった。そのまま南栗橋に着いた。


南栗橋~新栃木

ここは車庫があるくらいだから畑が広がる人家が少ない駅である。景色もいい。そのまましばらく新栃木行きを待った。やってきたので乗る。

4月に鬼怒川温泉行きの特急に乗った時は見晴らしのいい景色だったが、さすがに夜なので特に景色は見えない。金曜の夜でもこのあたりはお客も少ないようだ。左手に山が見えてきた。たぶん両毛線を通る時に大平下(おおひらした)で南に見える山だろう。大平山(おおひらさん)というのかな。
市街地に入り、栃木に着いた。そこを過ぎると終点新栃木である。ここでしばらく東武宇都宮行きを待つことになる。

ぼくはホームにあった自動販売機で暴暴茶(ぼうぼうちゃ)を買った。ジャッキーチェンが宣伝していたお茶だ。けっこういい味であるが、ここ新栃木で飲んだのが最後になってしまった。缶の飲み物は移り変わりが激しく、うまい飲み物でもずっとあるとは限らないのが悲しいことである。

何本か新栃木止まりの電車がやってきて、同じように東武宇都宮方面、東武日光方面に乗り換えるお客で10数人になった。そしてようやく東武宇都宮行きがやってきた。これが最終電車である。これでも宇都宮で急行津軽には楽々間に合う予定である。

東武宇都宮線

夕食

新栃木駅で東武宇都宮行きの最終電車に乗った。お客は多少はいたが、全員すわれるくらいしかいなかった。そして発車。
住宅地を通っているみたいだが、それほど降りていく客はいなかった。かなりの客がこのまま東武宇都宮まで行くのだろう。
予想通り客が多いまま電車は終点東武宇都宮に到着した。

地図からわかる通りここは宇都宮の繁華街である。駅も大きく、駅を出ると飲み屋がたくさんある。まして今日は金曜日、お客が多い。
さてJR宇都宮駅に行かなければならない。東武の駅は大通りに面していないので、ちょっと歩いて大通りを探す。なんとか大通りに出た。さて、東に進もう。

でもまだまだ急行津軽の発車までは時間がある。ラーメン屋を見つけた。よし、ここでラーメンでも食べていこう。
ラーメン屋に入ってラーメンを食べる。時刻はまだ午後11時だ。急行津軽の宇都宮発車が0:15だからもうちょっとゆっくりしていこう。
こうやってふらっとラーメン屋に入るのがとても楽しい。しかしラーメンはたまにものすごくまずいことがあるからつらい。まずいラーメン屋があるからこそ、うまいラーメンだったときの喜びは大きいのである。


宇都宮駅

しばらく休んで、ラーメン屋を11時20分ごろ出発した。さらに東に歩く。ようやく宇都宮駅らしい建物が見えてきた。何度も通過している宇都宮駅だが降りたことはない。けっこう大きそうな駅である。さらに歩いてなんとか到着した。

駅にはまだ人がいる。急行津軽に乗る人もいるが、まだ普通列車もあるから飲み屋帰りの会社員もいるだろう。
きっぷを持っていなくて窓口が開いてなくて、どうすればいいか途方に暮れる客もいる。
たぶん駅員にきいて190円のきっぷでも買って乗って車内精算してもらうんだろうな。

ハートランドフリーきっぷだと0:00まで改札に入ることはたぶんできないだろうなあと思いながら、ぼくは改札前で0:00を待った。

奥羽本線その1

宇都宮~黒磯

JR宇都宮駅の改札前で時刻が0:00になるのを待った。
0:00になった。改札へ行く。同じように改札に行く客がいる。当然ながらそいつもハートランドフリーきっぷを持っている。

ホームにやってきた。多少客がいる。やっぱり宇都宮からの客もいるのだ。そして急行津軽がやってきたので乗った。
ありゃ。予想通りお客でいっぱいだ。仕方ない。立っていよう。津軽は発車した。
今年の2月も夜行のおおぞらに白糠から帯広まで立っていたことがあるので、まあよくあることである。

しばらくすると、通りがかりの青年がぼくに話しかけてきた。
「どこに行くんですか?」
「東能代まで行って、ノスタルジックビュートレインに乗る予定です。」
「ほーそれはいいですねー。自分は横手で降りて、ほっとゆだで温泉に入ろうと思っています。」
「そうですか。」
「いろいろ旅されているんですね。飯田線の中部天竜にある『佐久間レールパーク』はいいですよ。ぜひ一度行ってみてください。」
「どうもありがとうございます。それじゃ。」
「それじゃ。」
どうやら青年はちゃんと席を取っているようだった。もちろん上野から乗っているんだろうなあ。


黒磯~新庄

そのうち黒磯に着いた。ホームに到着する。
しばらくすると、照明がバッコンという音をたてて消えた。
そしてしばらくするとまたついた。
常磐線の取手の北で照明が消えることがあるが、ここでは駅で消えるのである。電源切り替えもなかなかたいへんなようだ。そしてまた発車する。

福島に着いた。車内を見回してみるが、まだまだ席はあかないようだ。
仙台に着いた。客は降りるがまだまだ席はあきそうにない。津軽は仙山線に入っていった。

6月なので、仙山線の途中で明るくなってきた。2月にも通った仙山線だが、いい雰囲気の路線である。山形に着いた。客が降りる。でもまだすわれない。
進行方向が逆になり、さらに進む。

そして新庄に着いた。客が降りる。車内を見回すと、あった!空席だ!
ぼくは席にすわり、たちまち眠ってしまった。


東能代到着

目が覚めた。

腕時計を見る。よかった。まだ東能代には着いていないようだ。
もう秋田を過ぎており、車内はがらがらになっていた。

急行津軽は4人がけのボックスシートで、3段式寝台にセットアップできる構造になっているせいかシート幅は広い。そのせいかかなりゆったりしている。景色は森の中であり、秋田と東能代の間は家並みの少ない景色のようだ。

そのうち急行津軽は東能代に着いた。長いこと乗ってきた電車だったが、ようやく降りる。
駅を出るとたいしたお店もない。雑貨屋っぽい店があるだけである。
入ってみたが、お菓子とパンくらいしか食べるものはない。でも夕方くらいまで食堂には寄れそうもないので買うことにした。

駅に戻ってパンを食べた。お客はノスタルジックビュートレインに乗るお客が何人かいるようだ。
そのまま駅で改札が始まるのを待った。

五能線

東能代駅でノスタルジックビュートレインの改札が始まるのを待った。ようやく始まった。
ホームに出ると、黄色っぽい列車がやってきた。あれがノスタルジックビュートレインなのだろうか?
何両か連結されているが、そのうち1両だけがながめがよさそうなデッキのある車両で、残りはどうってことのない普通のディーゼル車だった。

どうやらデッキのある車両は指定席らしい。そしてその車両とほかの車両は直接行き来ができない構造だった。
指定席券がないとデッキのある車両には乗れないらしい。どうしようか迷ったが、やっぱり自由席で行くことにした。

とりあえず乗って2人がけロングシートにすわる。お客はそこそこいるが、となりの能代で降りる人のようである。
そのまま発車。能代で大部分のお客は降りてしまう。ぼくは新庄から秋田まで眠っただけなのでまだ眠い。たちまち眠ってしまった。

ふと目が覚めた。窓の外を見ると、雄大な日本海が広がっている。
うーん、どうやら五能線の魅力はこの海らしい。逆に言うと、この海さえあれば別に特別な車両なんかなくてもいいのだろう。海を見ながらぼーっと進む。

指定席車両の方を見たが、どうやらいるのはほんの3,4人の鉄道ファンの男たちで、デッキで写真とか撮っているようだった。梅雨どきとは言え、お客が少ないものである。


りんごの木

深浦、鰺ヶ沢を過ぎ、内陸に入っていった。
ふと窓の外を見ると、どこかで見たような木がある。

あれは確か長野の長野電鉄に乗った時に見たりんごの木ではないか?
そうか、ここはりんごのふるさとだったっけなあと思い出した。

こういうほかの場所で見られないものが見えると旅行に来たなあという感じがして良い。
そのうちふたたび奥羽本線が見えてきた。川部である。

ここでノスタルジックビュートレインは向きを変え、終点弘前に到着した。
ここまで来たお客はごくわずかであった。ぼくはいったん弘前の改札を出ることにした。

奥羽本線その2

旅行記本文

弘前駅でいったん改札を出て待合室で待っていると、やがて青森行きの改札が始まった。これからどう進むか考えたが、まずはいったん青森に行こう。

ホームに出ると電車がやってきた。けっこう新しい電車だ。しかもボタンを押してドアを開け閉めする電車らしい。
しかしたいしてめずらしいものでもないと思った。なにしろぼくは、神奈川県の相模線でボタンで開け閉めする電車は経験済みだからである。
そんなわけであまり感動もなく、電車に乗る。
あとで知った話だが、以前は奥羽本線では冷房のない列車が走っていて、この新しい電車でようやく冷房が入ったらしい。意外とありがたい電車なのかもしれない。

電車は多少お客を乗せて発車した。津軽平野を進んでいく。このあたりはたいして山もなく、すいすい進んでいく。
そして4ヶ月ぶりに青森駅に到着である。さてこれからどうしようか。
時刻表を見て考えた。大湊線で大湊にでも行こう。ちょうど函館から特急はつかりがやってきて乗り継げる。ハートランドフリーきっぷなら特急券もいらない。

ぼくははつかりの出るホームに行って待った。今日はたいした食事もしていないが、大湊では1時間ほど待ち時間があるのでその間に夕食でも食べようと思った。

東北本線その1

旅行記本文

青森駅で盛岡行きのはつかりを待った。やがてはつかりがやってきて停車し、ドアがあいた。降りる客が出るのを待って乗る。空いている席はすぐに見つかった。
青森では列車の進行方向が変わるので席を逆にしよう。ガチャ。グルリ。4ヶ月前には札幌のライラックが方向転換する時にいきなりお客に席をまわされてひざに席をぶつけられたりしたけど、ここの席はまわしてもすわっている人のひざにぶつかることはなかった。

たぶんこれで向かいにすわっている女性も席をまわすだろうと思ったが、いっこうにまわすことはなく、とうとうあい向かいのまま青森駅を出発してしまった。そのまま進む。

4ヶ月前の北海道旅行以来ひさしぶりに乗った特急であるが、やっぱり特急は乗りごこちがいい。たまに見える海もけっこういい。そのまますいすい進む。

もうすぐ日が暮れる、という時刻になってはつかりは野辺地(のへじ)に到着した。ここで降りる。
6月なので日は長く、まだなんとか大湊(おおみなと)まで景色は見えそうだ。ぼくは大湊線に乗り換えることにした。

大湊線

旅行記本文

野辺地駅でホームを移動して待つと大湊行きのディーゼル車がやってきた。乗ると発車である。お客はそれほど多くない。
すぐに野辺地の集落を離れ、森と海の見える場所に来た。

この路線は海もいいが、森がけっこう変わっている。他の東北地方とは異なる木々があるのだ。なぜ下北半島にだけこういう木々があるのかわからないが、植物のことにくわしい人にとってはおもしろいことなのかもしれない。
夕暮れの中を列車は進む。そのうちまた家並みが見えてきて、終点大湊に着いた。

さてここで約1時間待ちである。食堂にでも寄っていこう。駅からちょっと歩くと食堂があった。ショーウィンドウを見ると手頃な値段で料理が並んでいるので入ってみた。天ぷら定食を頼んだ。
約1日ぶりのきちんとした食事だったので、何を食べてもおいしかった。いや、海の近くの海産物だったのでほんとうにおいしかったんだろう。ごちそうさま。
なんと会計は1400円だった。あれ!そんなにしたんだ!
店を出てショーウィンドウを良く見ると、ちゃんと「天ぷら定食1400円」と書いてある。うーん、よく見ておけばよかった。今度から食事代は良く調べることにしよう。

そして大湊駅に戻った。野辺地行きのディーゼル車に乗る。今度はさっきより客が少なく、ほとんどいない。発車した。
だいぶ暗くなっているのでさっきとちょっと違う景色の中、列車は進んでいった。いろいろあったこの土曜日だったが、もうすぐ終わる。
列車は野辺地に到着した。ここから盛岡行きのはつかりに乗る予定である。

東北本線その2

旅行記本文

とっぷりと暗くなった中、野辺地のホームで待っていると、しばらくして盛岡行き特急はつかりがやってきた。乗ってみた。しかしお客は少なかった。

ハートランドフリーきっぷが1年中使えるようになって以来、土曜日曜のJR東日本の特急や新幹線の自由席は満員になることがとても多いのだが、列車によってはそれほどのこともない場合も多い。
特にこの時刻のはつかりは、盛岡で新幹線に乗り継いでも仙台までしか行けないので、たいていのお客はもっと早いはつかりに乗るからだ。でもきのう乗った夜行の急行津軽がきょうも走っている。
しかも青森行きと上野行きが両方走っているのだ。時刻表を見ると仙台から福島まで津軽に乗って、そこから青森行き津軽に乗り継ぐことができる。そうやって宿に泊まらずにすませるつもりなのだ。2月の北海道旅行でも8日の日程で宿には1泊しかしなかった。

はつかりの自由席にすわってしばしまどろむ。とは言っても盛岡で仙台行き新幹線にはすぐ乗り換える必要があるのでそんなに安心して眠るわけにもいかない。
あたりは暗い。まあこういう旅行だし、今のうちに眠っておこうかと思った。

気がつくと盛岡の手前だった。そして盛岡着。
ハートランドフリーきっぷを使うと新幹線に好きなだけ乗れていいなあと思いながら、ぼくは階段を上がり、乗り換え改札に行くことにした。残念ながら今回の旅行では新幹線はこれだけである。

東北新幹線

旅行記本文

盛岡駅で在来線ホームから乗り換え改札に行き、ハートランドフリーきっぷを見せて通った。
エスカレーターでホームに上がる。仙台行き最終のやまびこが停車していたので乗る。さすがにすいていた。
乗ってすわってぼーっとしているうちに発車した。4ヶ月ぶりの新幹線である。

暗い空の下をやまびこは進んでいく。やっぱり新幹線は速い。すいーっと進むスピード感覚は新幹線以外の乗り物にはないものである。

そんな感覚を味わっているとアナウンスがあり、仙台に到着である。
駅前に吉野家が2軒あることはわかっているが、天ぷら定食を食べたばかりなので食べたくない。
それほど待たずに上野行き津軽が出ることがわかっているので、駅で待つことにしようと思い、ぼくは乗り換え改札に向かうことにした。

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