Sorry, Japanese only! (1985年6月)

110.はじめてのひとり観光宿泊旅行・3日目~4日目

定期観光バス・弟子屈~美幌

起床

目が覚めた。残念ながら窓の外は今日も雨である。
ここは北海道、国鉄釧網本線の弟子屈(てしかが)駅の近くの民宿である。

まずはきのう抜いておいたコンセントをさしてズームイン朝を見る。でも30分くらいすると電源がバチンと切れた。時間切れである。そして朝食の時間になった。

朝食ももちろんうまかった。ごちそうさま。オートバイの兄ちゃんは釧路の方に行くと言うので、おとといぼくが泊まった釧路の宿の電話番号と場所を教えておく。

ちゃんと予約したぼくと違い、兄ちゃんは宿を決めずに旅行しているらしい。でもこの民宿が客2人であることからして、6月は宿を予約しなくても泊まれるのかもしれない。

あとはまたワゴン車で送り迎えである。美幌(びほろ)行きのバスに乗ると言ったら今度はバスターミナルまで送ってもらった。
きのう来たバスターミナルであるが、窓口はまだ開いていない。ようやく開くと美幌まで乗車券を買った。


摩周湖

そして阿寒湖からバスがやってくる。ぼくとほかの弟子屈からの客が乗るとお客は10人くらいになった。そして摩周湖に進む。

バスは山をのぼって摩周湖に着いた。当然と言うか、摩周湖は霧であった。雨も降っているし、まあこんなものだろう。

こんな日でもじゃがいもを売っている兄ちゃんががんばっている。

「今日は景色を見る日じゃないよ!食べる日!」

それもそうかと兄ちゃんにじゃがいもにバターをつけてもらって買う。食べるともちろんうまい。北海道のものはとにかくなんてもうまいのである。

晴れていれば湖が見えるかもしれない見晴台に行っても晴れるはずもないので、またバスに戻る。


硫黄山

バスは発車する。さっき来たのが摩周湖第一展望台で、次に摩周湖第三展望台にも寄ったのだが、ここはみやげもの屋もないところである。
やっぱり湖は霧で見えないので、きのうの双湖台(そうこだい)と同じく通過である。さらに進む。

このあと川湯温泉でお客が降りたり乗ったりする。次は硫黄山というところだ。
降りると目の前はごつごつした山である。ためしに岩場をのぼってみると、ところどころ硫黄の色が見え、水蒸気が吹き出している。
こんなところもあるんだなあと思いながらバスに戻る。


砂湯

次は砂湯だ。屈斜路湖(くっしゃろこ)の湖のほとりなのだが、相変わらず雨は降り続いている。
なんでも湖のそばに温泉がわいているらしい。入っている人もいるようだ。
ここで美幌から来る定期観光バスとすれちがうため、そっちに乗る人もいて客が減る。

次は和琴半島というところだが、特に何もあるわけではなく、もし晴れていれば湖やまわりの木々がながめられるところらしい。
またバスに乗り、湖を右に見ながら坂をのぼっていく。


美幌峠

そして美幌峠に着いた。ここで降りると屈斜路湖が一望できるが、雨のせいでところどころ雲がかかっており、ぱっとしない風景である。

湖と反対側も景色は見えない。美幌峠にはみやげもの屋があるが、特に何も買うこともないだろう。またバスに乗る。あとは美幌に行くだけである。坂をおりていく。

長いこと進んで町っぽい集落に入り、ようやく美幌駅に到着した。
このバスは女満別(めまんべつ)空港行きで、何人かは空港まで行くがここで降りる人の方が多い。

みんなぼくと同じで梅雨の本州から脱出して梅雨のない北海道を旅しようと思い、雨に当たってしまったのである。

バスは行ってしまった。まだ国鉄の列車が来るまで1時間以上あるし、食事もまだなのでどこで食べようか考えた。雨はすっかり上がっている。

石北本線その1

美幌駅周辺

弟子屈(てしかが)バスターミナルから乗ってきた女満別(めまんべつ)空港行きバスを美幌(びほろ)駅で降りたが、次の網走行き特急オホーツクまでは1時間以上ある。さてどうしよう。

なんとなくぼくは駅前を散歩してみた。美幌峠で降っていた雨はやんでいた。そして、通りにほっかほっか亭を見つけた。

ぼくが住んでいる寮の近くにもほっかほっか亭があり、日曜日のお昼には行列ができて何十人も並ぶほっかほっか亭である。それが北海道にもあるのである。たぶんこういうところだから全国どこでも同じメニューだろう。

ぼくは迷うことなく中に入り、弁当を注文した。そして弁当を受け取ると美幌駅に戻って待合室で食べた。まだ列車までは時間があるのであまり人がいない。

今まで同じバスに乗っていたお客たちがいたくらいである。なにしろ網走行きだけでなく、札幌行きのオホーツクも同様に待ち時間があったのである。


美幌~網走

しばらく待つと改札が始まった。北海道ニューワイト周遊券なので特急券はいらない。ホームで待つとオホーツクがやってきた。自由席にすわる。そして発車。

網走までは山の中を走った。2日前に通った石勝線や根室本線も木々の多いところだったが、ここも多い。はじめての北海道旅行は観光地で観光しているときもいいが、列車に乗っているときも楽しいなと思った。

しばらくすると網走に着いたのでオホーツクを降りる。思ったよりお客は少ない。

今日の宿はウトロなのでここから斜里までさらに乗り継がなければならない。
ぼくは次の列車に乗ろうと、案内を探した。

釧網本線その1

網走~斜里

美幌から乗ってきた特急オホーツクを降り、釧網本線のホームに向かうと急行しれとこが待っていた。乗ってみたががらがらである。しばらくするとしれとこは発車した。

やがてオホーツク海が見えてきた。さわやかな海である。今日は摩周湖は霧だったし、屈斜路湖や美幌峠でもどんよりと曇っていたが、ようやく晴れてきた。これであしたの知床は良い天気で過ごせそうである。

しばらく海を見ているとじきに斜里である。斜里に着いた。まずは降りてバスターミナルを探す。駅のそばにあった。小学生や中学生でいっぱいだ。ぼくと同じ観光客も数人いる。

窓口があったので、ウトロの宿から言われた宿もよりのバス停の名前を言ってきっぷを買った。そしてバスに乗る。

当然というかなんというか、観光客は全員すわらせてもらえるが、小学生や中学生は全員はすわれず、立つ客がおおぜいいる。


斜里~ウトロ

バスはウトロに向けて発車した。なんだか北海道っぽい、まっすぐな道を進んでいく。停留所で生徒たちが降りていく。しばらく斜里近くのやや閑散とした場所を進んでいたが、じきにオホーツク海が見えてきた。そして海に夕日が見える。

考えてみれば知床半島は北東に延びていて、今は6月なので夕日は北寄りなわけだ。だから知床では夕日が海に沈んでいくのだ。

いい景色だなあと思うと、停留所でないところで停車した。右手に見える滝がオシンコシンの滝だと言う。

生徒の方が客が多いのに、わずかな観光客のために毎日ここで停車するわけである。生徒たちは慣れているんだろうなあと思った。さらに進み、ウトロの街に入ってきた。そのうちぼくが降りる停留所が来たので降りた。宿はバス停の目の前だった。

宿はいい宿だった。風呂に入ってから食堂で夕食である。お客はぼくの他に2人で、知床岬に船で行く人だとのことだった。食事もうまく、満足した。

でも部屋は古かった。テレビもないので持ってきたポケットラジオをつけた。とんねるずの二酸化マンガンくらぶをやっていた。ラジオを聴きながら、あしたのウトロの観光に備えて眠りについた。

知床観光船・硫黄山航路

起床

目が覚めた。
ここは北海道のウトロにある民宿である。朝食の時間になったので部屋を出る。窓の外を見ると、よかった、晴れている。

いっしょに泊まった2人は知床岬まで船で行くため朝早く出てしまったとのことで、ひとりで朝食である。海のそばなので海の幸の食事である。なんだかもしゃもしゃした海草っぽい草がある。けっこううまい。

食べ終わると知床五湖に行くバスに乗るためあいさつして民宿を出てバス停でバスを待った。
バスがやってきた。さすがにきのうと違って小学生は乗っていない。観光客ばかりの中、バスに乗って進む。ちょっと進むとウトロのバスターミナルに着く。ここで客が入れ替わる。

さらに進んでウトロの町を出て山をのぼっていく。羅臼(らうす)に行く道もあるが6月はまだ路線バスが羅臼まで通っていない。

山を進んでようやく知床五湖に着いた。観光客はたくさんいる。まずは湖めぐりに出かけよう。


知床五湖

一湖に行く。湖と言っても大きさは100メートルくらいなもので沼みたいなものだが、水が澄んでいるので湖なのだろう。
板でつくられた歩道が湖のまわりを通っている。観光客も多く、湖のまわりの植物もきれいでのどかな所である。

さらに進む。森の中の道を通って二湖に着いた。ここものどかなところである。天気も良く、気持ちがいい。

しかしちょっとおなかの調子が悪くなってきた。いったんバス停に戻ってトイレに行くことにする。二湖から三湖に進む道もあるが、バス停に戻る道もあるのだ。
トイレから出るとパック旅行のバスが来ていた。

「はい。これから湖を見学します。見るのは一湖と二湖だけです。」

というガイドさんのアナウンスが聞こえてきた。

パック旅行は時間が限られているからあわただしいのだろう。ぼくが乗った路線バスはゆったりしていて、知床五湖からウトロに戻るバスは2時間後である。

パック旅行の団体は一湖に行ったようなので、ぼくは今来た二湖への道を進む。そして分かれ道で三湖に向かう。

深い森の中である。ところどころ倒れた木がある。三湖はどこにあるのだろう。道は続いている。

そのうち木と木の間から湖がちらっと見えてきた。
さらに進むが、相変わらず木々の間からちらちら見えるだけである。
パック旅行の団体は一湖と二湖しか見ないのでここにはやってこない。静かな場所である。
ようやく湖がはっきりと見えてきた。この道は三湖をぐるっと取り囲むように通っているのである。いい雰囲気の場所である。そしてさらに進むと湖が見えなくなる。

四湖と五湖は行き止まりの道の前に湖があるだけだった。一湖や二湖、三湖に比べると小さそうである。明るい感じの湖だった。
そしてバス停に戻る。あとはまあ、出発まで休んでおこう。


キーホルダー

そして斜里行きのバスに乗る。もと来た道を通ってウトロのバスターミナルに着いた。ここで降りる。

もうお昼なので食事である。ぼくはなんとなく、町はずれにうまい店があるような気がしたので、バスターミナルから離れて歩いてみた。

ぽつんとした食堂があった。入ってみるとぼく以外にお客はいなかった。
めしをたのむと、みそ汁の中にはきのう民宿の食事で出た、もしゃもしゃした海草が出てきた。やっぱり観光地の食事はうまいものである。

次は観光船であるが、出航まで1時間以上ある。ともかく港に向かうことにする。
バスターミナルから港に向かう途中で、木彫りの彫刻を売っているみやげもの屋から、「荷物預かりますよー」と言われた。出航まで時間もあるし、まあ入ってみることにした。

気のいい兄ちゃんであった。コーヒーも飲ましてもらった。
この店にある彫刻はアイヌの人が彫った由緒正しいものだそうだ。兄ちゃんはその人のことを「先生」と読んでいる。特に熊の形をした彫刻が「売り」だそうだ。
あまり大きいものを買っても荷物になるだけなので、熊の手の形をした彫刻を買うことにした。

兄ちゃんによればこれは弟子が彫ったもので、安全のお守りなのだそうだ。
何か希望の文字があったら彫って、キーホルダーもつけると言われた。

安全のお守りなのだから「SAFETY」と彫ってもらった。500円払って受け取る。
そして出航時刻が近づいたので現金だけ持って港に行った。


観光船

乗船券を買って船に乗る。きのうおとといの雨がうそみたいにさわやかな青空である。

この船は硫黄山航路と言うようだ。硫黄山と言っても川湯温泉の近くの硫黄山とは別のようだ。ウトロと知床岬の中間にある場所なのだろう。
まあ日本は火山国なのだから、至る所で硫黄が出ているのだろう。

船は出航する。船の後ろにカモメがついてくる。そしてお客たちはどうやらカモメにかっぱえびせんをあげているようだ。

右には知床の森が見える。そして午後のおだやかな太陽が西の海に見えている。北海道は太陽の光は貴重なんだろうなあと思う。
斜里とウトロの間にオシンコシンの滝があったが、似たような滝が見える。
あのあたりには熊がいるらしく、人間は入っていけないらしい。ということは森は原生林なんだろうなあ。

しばらく進んだところで引き返す。相変わらずカモメはついてくる。こういう遊覧船はいいなあと思う。

もと来た港に着いて、また彫刻を売っている店に来て預けた荷物を引き取りに行く。
斜里行きのバスまではまだ時間があるのでまたコーヒーをごちそうになって、また北海道に来ようかなどといろいろ話した。


ウトロ~斜里

そしてバスターミナルに来た。今回も小学生はおらず、観光客だけである。それも10人ほどである。

バスが来てぼくたちは乗り込んだ。また海に浮かぶ太陽が見える。
おとといは1日中、きのうはお昼まで雨が降っていたので、本当に太陽は貴重なんだなあと思いながら海を見て斜里に着いた。そしてバスを降りる。

今日はこれから一気に夜行列車を含む国鉄の列車を乗り継いで函館に向かう予定だ。
無事列車が動いてくれることを祈りながら、列車を待つことにした。

(注意:2003年に知床五湖に行った時は、熊が出るとかで三湖~五湖に行く道は立ち入り禁止になっており、パック旅行客でなくても一湖と二湖しか行けませんでした。)

釧網本線その2

斜里駅周辺

ウトロから来たバスを降りた。全員観光客である。そして全員網走まで行く客である。しかし、次の網走行き急行しれとこまでは1時間ある。さてどうしよう。

きのう美幌でほっかほっか亭に行ったように、斜里もひょっとしたら駅近くにほっかほっか亭があるかもしれないと思い、ちょっと散歩してみた。あった。弁当を注文し、買って駅に戻ってきた。そして他の観光客に、あっちにほっかほっか亭があると教えたら、みんな行ったようだった。そしてぼくは駅で弁当を食べた。

そして客たちが弁当を持って戻ってきた。なにしろ待合室にいる客は、さっきバスを降りた客だけなのだ。そんなふうにして待っているとようやく改札が始まり、北海道ニューワイド周遊券の道内用の券を見せて通った。


斜里~網走

しれとこがやってきたので乗る。通学客もなく、がらがらである。お客はウトロから一緒の人たちばかりだった。

向かいのボックスにすわった夫婦と話してみた。なんでも1ヶ月仕事を休んで北海道じゅうをめぐっているとのことだ。自営業なのだろう。

正味5日しか北海道にいられないぼくとはえらい違いだなあと思った。そうやってオホーツク海を見ながら進んでいった。そして暗くなって、網走到着である。

ほとんどの人は網走で泊まるようだったが、なにしろぼくはあさってまでに帰らなければならないので、夜行急行の大雪に乗るのである。

月曜日は夜行のフェリーに乗り、二等の部屋でなんとか眠れたが、夜行の列車ははじめてである。うまく眠れるだろうか。

他のお客が改札を通って出ていくのを見送り、ぼくはホームに残って大雪を待つことにした。

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