115.急行砂丘と急行かすが・2日目
山陰本線その2
旅行記本文
目が覚めた。
ここは福知山駅の近くにあるホテルである。窓の外を見ると、小雨が降っているようだ。でもなんとか列車は動いているようだ。
今日も同じホテルに泊まるので荷物の一部を置いて出発である。福知山駅に行く。
今日は北近畿タンゴ鉄道にすべて乗る予定である。まずは西舞鶴~宮津の間を乗らなければならない。そのためにはいったん山陰本線で京都の方向に進み、綾部(あやべ)まで行く必要があるのだ。
北近畿ワイド周遊券のB券を見せて改札を通り、綾部に行く電車の出るホームに向かった。電車に乗る。こんな雨っぽい天気なので客は少ない。そのまま発車だ。
どんよりと曇った天気の中、電車は進んでいく。それほど時間もかからずに電車は綾部に到着した。ここで降りる。
今日の予定は、ここから天橋立行き特急タンゴディスカバリーで天橋立(あまのはしだて)に行く手はずなのだ。特急タンゴディスカバリーは西舞鶴経由なのでちょうどいいのである。
でも多少特急が着くまで時間があるので、いったん改札を通って待合室に向かった。待合室は閑散としていた。いちおう3連休ではあるのだが、こんな天気では観光客も少ないのだろう。
どんよりとした雲を見ながら待合室で過ごした。もうそろそろ時間だろう。ぼくは待合室を出て改札を通り、ホームに向かった。
北近畿タンゴ鉄道その1
綾部~西舞鶴
綾部の待合室を出て、改札を通ってホームに向かった。
ホームで待つと京都の方から特急っぽい列車がやってきた。天橋立の方に向かうタンゴディスカバリーのようである。ドアが開いて列車に乗る。
デッキから車内に入るとまるでお客がいない。確かに雨模様の天気ではあるが、3連休のなかびなのにこんなにお客がいないなんてなあと思いながら席にすわる。
すわった座席は体重をかけると倒れるので、お、これがうわさの「簡易リクライニングシート」かな、と思いながら乗りごこちを確かめているうちに列車は発車する。
西舞鶴までは去年10月に乗った区間で、そう言えばあの時も空が曇っていたなあと思い出す。海が見えるわけでもなく、お客も少なくはっきりしない気分のまま西舞鶴に着いた。いよいよここから北近畿タンゴ鉄道である。
西舞鶴~天橋立
なぜか今まですわっていた自由席は北近畿タンゴ鉄道内では指定席になるらしいので、別の車両に移動することにした。その車両もまるでお客がいない。
ためしに座席に体重をかけてみると、あれ?こっちの座席は倒れない。
もといた車両に戻ってみて、ぼくがすわった座席の近くの座席も体重をかけてみた。あれ、倒れない。
どうやらこの座席は簡易リクライニングシートではなく、単にストッパーがこわれたリクライニングシートだったようである。
自由席に戻ってすわる。北近畿タンゴ鉄道は舞鶴線に比べると左右に植物が多いようである。
海沿いを進むはずであるがそんなに海は見えず、お客も乗ってこないまま宮津に着いた。ここは多少大きめの駅のようである。
そこから1駅進んで天橋立に着いた。雨は小雨のようで、台風はまだそれほど日本に近づいてはいないようである。
降りてみると、正装した若い女性たちがいる。結婚式の友人代表のような衣装である。たぶんここで結婚式でもあるんだろうなあ、雨の中たいへんだなあと思いながら、北近畿ワイド周遊券のB券を見せて改札を出る。
お、この駅は駅弁が売っているようだ。たぶんケーブルカーに乗った先で食べると都合がいいかもしれないと思ったのでここで買っていくことにする。
「磯の香」という駅弁を買った。そしてぼくはケーブルカーの駅に向けて歩き始めた。
丹後海陸交通
徒歩
天橋立(あまのはしだて)駅で「磯の香」という駅弁を買うと、かさをさしてぼくは歩き始めた。
まず橋を渡る。すると松林が続いている。
松林の中は車の来ない道が続いていて、たまに自転車が追い抜いていく。
ためしに道をはずれて右に行ってみると砂浜が続いていた。いい景色の砂浜で、若狭湾が続いている。
今度は左に行ってみる。やはり海岸に出るが、こちらには砂浜はない。地面からすぐに海が続いていた。また中央の道に戻ることにしよう。
松林はまっすぐな木々は少なく、曲がりながら育っている松が多かった。人手をかけて補強されている松もあった。かなり幹の太い松もあり、何百年も育っているらしい松であった。
そんな松林を1キロ以上歩いて、ようやく細長い陸地を通り過ぎた。天橋立のそばは橋になっていたが、こちらは橋になっておらず、陸地はケーブル側では連続しているようである。なかなか不思議な地形である。
ケーブルカー
そこからしばらく歩くとケーブルカーの駅に出た。往復の乗車券を買う。ケーブルカーのそばにはリフトもあるが、雨天休止のようである。
ケーブルカーに乗る。あまりお客はいない。それほど時間もかからずに頂上の駅に着いた。降りてみたが雨はやんでいない。
振り返って今まで歩いてきた細長い陸地を見てみた。海の中に松が広がる陸地が続いている。不思議な地形である。
ケーブルの駅から歩いて進むこともできるようだが、この雨の中、あまり動きたくない。天橋立で買った磯の香でも食べていくことにしよう。
いすにすわって磯の香を食べた。海のそばの駅弁だけあって、海の幸が豊富な駅弁であった。満足するとまたケーブルカーで下におりることにした。
行きと似たような人数しかおらず、ケーブルカーは無事登り口の駅までおりてきた。さあ、天橋立駅まで戻ろう。
船・一の宮~天橋立
旅行記本文
ケーブルカーを降りて、天橋立駅に向かうことにする。行きは歩いてきたが、帰りは交通機関を使おう。
時刻表に書いてあるとおり、ケーブル山麓駅から天橋立駅までは、バスは1時間おきだが船は20分おきである。だから港に向かった。
行きに歩いてきた、松がある狭い陸地の西は湖のようになっている。船はそちらを通るようである。船に乗る。さすがに台風が近づいていて雨が降っているので観光客は少なく、船にはすわれた。そして出航。
船は狭い陸地の近くをブロロロと進んでいく。なんにしても海はながめがいいものである。
船はそのまま進み、数時間前に渡った橋の下をくぐって駅の近くの港に到着した。ここで降りる。
なんにしても時間が短縮できるのはいいことである。さあ、天橋立駅に戻ってまた列車に乗ろう。
北近畿タンゴ鉄道その2
計画
ケーブルカーの駅近くの港から乗ってきた船をおりて、天橋立駅まで歩いてきた。
けっこう短時間で天橋立駅まで帰ってきたわけである。当初の予定では福知山に戻って、あした特急で豊岡に行き、北近畿タンゴ鉄道経由で大阪まで行こうと思っていたのだが、この分だときょう天橋立から豊岡まで乗った方がいいかもしれない。
時刻表を見ると、今日は臨時列車の特急タンゴディスカバリーが久美浜から福知山経由で走っているので今から豊岡に向かって久美浜に戻ればその臨時列車で福知山まで乗ることができて、そうすればあしたは福知山から直接大阪に行けそうである。
そうすれば、あしたは奈良から急行かすがに乗ることにしているから大阪で余裕ができて、その間に大阪で乗っていない私鉄に乗れそうである。よし、まずは豊岡に向かおう、と思った。
豊岡行きまではけっこう時間があるが、それまでの間に久美浜行き特急タンゴエクスプローラーが走っている。
よし、まずタンゴエクスプローラーで途中の網野まで行って1時間ほど過ごし、城崎行きで豊岡に行って、西舞鶴行きで久美浜に行き、臨時特急で福知山に行こうと考えた。そう考えて周遊券で改札を通る。
天橋立~網野
やってきた。タンゴエクスプローラーだ。まずは自由席に行く。列車は出発する。数時間前に綾部から乗ったタンゴディスカバリーよりお客は多い。と言っても10人ちょっとしかいない。
すわってあたりをながめると、おや?天井の一部が半透明になっている。
もしかしたら晴れていれば日光が入ってくるようにするための天井の窓なのかもしれないなあと思う。
でも、なぜかそこに見えるのはディーゼルカーの排煙なのである。ディーゼルカーの排煙を見てもおもしろくないし、なんなのかなあと思いながら排煙をながめていた。
それからさっきからコトコト音がする。どうやら窓ガラスに列車の左右の木々が当たる音のようである。
そう言えば去年立山黒部アルペンルートを通り、富山地方鉄道の立山~電鉄富山間の電車に乗った時にも同じように窓ガラスに木々が当たっていたなあと思い出した。
もしかしてJRと比べると私鉄は線路のまわりの木々を刈り取る人手が足りなくて、それで木々が伸びたままになっている路線が多いのかなあと思った。
そんなことを考えているうちにタンゴエクスプローラーは網野に到着した。ここで降りて、周遊券を見せて改札を通る。
駅前をながめてみたが、家並みは多少多いようである。でも目につくのは自転車屋くらいなものである。
駅前はコンビニがあるくらいの駅がちょうどいいなあと思いながら、城崎行きの列車を駅前で待つことにした。
北近畿タンゴ鉄道その3
網野~豊岡
家並みはそれなりにあるが大きな店のない網野駅の駅前で1時間ほど過ごして、また駅の中に戻り、城崎(きのさき)行きのディーゼル車を待った。じきにやってくる。どこにでもありそうな古いディーゼル車であった。
お客はほとんどなく、発車して進む。列車の中からはあまり海は見えない。去年乗った小浜線もそうだったが、海沿いの路線だからと言って海が見えるわけではなさそうだ。京都府と兵庫県の県境なのでずっとお客は少ないようだ。
そのままけっこう大きな豊岡駅にやってきた。ここで降りる。なぜかディーゼル車はもと来た方向へと進んでいく。あとで地図を見たら城崎へ行くには方向を変える必要があるようだ。
予定では久美浜まで戻り、そこから福知山まで特急タンゴディスカバリーに乗ることになっているが、時間があるので改札を出ることにした。
改札を出たのはいいが、久美浜に向かう列車の案内が見つからない。どこにあるのだろう?
うろうろするうちに、この駅舎のとなりに北近畿タンゴ鉄道の駅舎があることに気がついた。
すなわち、今網野から乗ってきた列車は城崎行き、すなわちJR直通なのでJRのホームに到着するが、これから久美浜まで乗る列車は豊岡始発なので北近畿タンゴ鉄道のホームから発車するのである。とりあえず行ってみよう。
豊岡~久美浜
北近畿タンゴ鉄道の駅舎はJRの駅舎よりこじんまりしていた。もちろんぼくは北近畿ワイド周遊券のB券を持っているのできっぷを買う必要はないが、改札は閉まっている。そしてホームを見ると、あれ?さっき乗ってきた特急タンゴエクスプローラーの車両だ。
どうやら久美浜が終点のタンゴエクスプローラーは、豊岡まで回送されて、お客を乗せずにまた久美浜に戻り、そこから新大阪に向けてタンゴディスカバリーとして走るようである。
久美浜終着・始発なのに久美浜で待たず、豊岡まで行くのに豊岡終着・始発にしない、深い理由があるのだろう。理由はわからないが。
しばらくするとさっきまでタンゴエクスプローラーであり、これからタンゴディスカバリーとなる車両は、豊岡ホームを発車していった。予定通り列車が動けば久美浜で乗れるだろう。
そしてそのうち普通列車のディーゼル車がやってきた。改札も開く。北近畿ワイド周遊券B券を見せてディーゼル車に乗る。数時間ぶりの列車のようだがお客はそれほど多いわけでもない。じきに発車する。
同じような県境のさみしい景色を見ながら久美浜に到着。ここで降りる。降りたのはぼくだけのようだ。すぐそばにタンゴディスカバリーの車両があった。ぼくは自由席はどこだか探すことにした。
北近畿タンゴ鉄道その4
久美浜~宮津
豊岡から乗ってきたディーゼル車を久美浜で降りて、となりの特急タンゴディスカバリーの列車に乗り換えた。
お客は全くいないので自由席に楽にすわった。今日はこの列車で福知山まで行けば行程は終わりである。
しばらく待つと列車は発車する。さっき来た網野に着いた。
なぜか窓の外で「バンザーイ、バンザーイ」という声がする。声の主たちはみんな正装しているようだ。
おそらく天橋立駅で見かけた正装した女性が参加した結婚式か何かの参加者なんだろうなあと考えた。
そう言えばおととし10月に越美北線で福井駅に着いて、北陸本線で近江塩津に向かった時も列車の外に結婚式の参加者らしき人たちがいて、新郎らしき人を胴上げしていたなあと思い出す。
これから何回結婚式の参加者に列車で出くわすかなあと思いながらしばしまどろむことにした。
そのうち列車は天橋立を過ぎ、宮津を抜けて宮福線に入っていった。日もだんだんと暮れてきた。
宮津~福知山
なんとなくレールのゴトゴトした音が小さくなり、静かになったようである。
見るとどうやら高架を走っているようである。トンネルにも入る。けっこうトンネル区間が長い。
あとから思えばこの路線は国鉄末期に建設された路線なのだと気がついた。国鉄末期建設の路線は、高架を主体にした路線がけっこう多く、ぼくは北近畿タンゴ鉄道以来何回か出くわすことになるのである。
そんな高架の路線を、それほどお客も多くならないまま列車は通り、福知山に定刻通りに到着した。ここで降りて周遊券を見せて改札を出る。
さて今日は駅前スーパーの食品売り場で弁当でも買って食べることにする。スーパーには本屋もあったので「旅と鉄道」を買う。
スーパーでは「柿の葉寿し」が半額の490円で売っていたので買った。ホテルに戻って部屋に入って食べる。そして風呂に入って寝る。
眠る前に旅と鉄道を読んでみたら、今日乗ったケーブルカーのことも書いてあった。「丹後海陸交通」という会社名だそうである。
台風は日本にやってくるだろうか、列車が運休になったりはしないだろうかと思いながら、ぼくは眠りについた。
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