112.ムーンライト九州と新宮夜行・3日目
紀勢本線その1
新大阪駅
西九条から乗ってきた電車を大阪で乗り継いで、新大阪までやってきた。
案内によれば、これから乗る新宮(しんぐう)行き夜行の普通列車は大阪に向けて一番右側のホームから出るらしい。階段を上がり、通路を進んで新宮行きの出るホームにやってきた。
けっこう客がいる。JTB時刻表に載っていない鉄道の日記念・本州乗り放題きっぷであるが、JR時刻表をしっかりチェックしている人がけっこういるのだろう。それとも、そんなきっぷなんか知らない、新宮方面に用事があるから普通のきっぷで乗るという人も多いのだろうか。
アナウンスがあった。
「今度の新宮行きは、前3両が新宮行きで、うしろ3両は途中の紀伊田辺止まりとなります」
そりゃたいへんだ。ちゃんと前の方に行こう。けっこう前の方で待つ人が多いようだ。みんな新宮までいっしょなのかな。
発車時刻が近づいたがまだ電車は来ない。発車直前になってようやく入線してきた。大垣行き夜行と同じような、けっこう古めのボックス席の電車だ。端の2人がけの席にすわる。そしてまもなく発車。
新大阪~天王寺
電車は新大阪駅を発車していく。なんでもこの電車は大阪駅を通らないそうだがどこを通るのだろう。
窓の外を見ると、電車はとりあえず淀川を渡る。しかしそこから、東海道本線をはずれて右の方に分岐していく。
なんだか人家の少ない、倉庫街っぽい場所である。前方に高速道路が見える。
電車はずんずん高速道路に近づき、なぜか踏切を渡った。踏切を渡ると前方に線路の高架線がある。あれは東海道本線のようだ。電車は東海道本線らしい高架の下をくぐってさらに進んでいく。東海道本線は右手に去っていく。
左手に別の線路が近づいてくる。おそらく大阪環状線だろう。そして環状線と合流する。あれ?ここは西九条駅じゃないか。
なんともおもしろい場所を通るなあと思った。
あっちの方にタワーが見えてきた。どうやらあれが通天閣らしい。このあたりは大阪駅とはまた違った雰囲気だなあ。
天王寺〜和歌山
ずっと通天閣が見えていたが、やがて見えなくなり、天王寺に到着した。お客がたくさん乗ってくる。新大阪駅から乗っている客より多いくらいだ。
確かこの新宮行きは、何年か前は天王寺始発だったという話だから、その時からずっと天王寺から乗っている人も多いのかもしれない。それとも、鉄道の日記念・本州乗り放題きっぷがなければ天王寺でもすわれるのかもしれない。
ともかくぼくのとなりの席は埋まり、立ち客も出た。そして阪和線に入っていく。なにもかもきょう初めて乗る路線である。和歌山県に行くのも初めてだ。
天王寺までは都会だったが、阪和線は住宅街っぽい場所である。人家は多い。そんな景色がしばらく続く。
しかし何十分かするとだんだん人家が少なくなっていった。暗いのでわからないが緑が多そうだ。そして電車は和歌山県に入っていく。
電車は和歌山駅に到着した。多少客が降りるがそれほどでもない。和歌山で降りる人はうしろの3両に乗っているのかもしれない。
ここまで全然海が見えなかったが、和歌山から先は海が見えるのだろうか。電車は和歌山を発車し、いくつかの駅に停車していく。
そのうち暗い海が見えてきた。海の中にデジタル時計が見える。なんだかとても不思議な風景だ。毎日毎日この電車は同じ時刻のデジタル時計を見ているのかと思うと不思議に思う。
しばらくすると海は見えなくなる。夜行3連泊なのでもうそろそろ眠くなってきた。少し眠ろう。
紀伊勝浦〜新宮
目が覚めた。もう紀伊田辺は過ぎたようだ。多少客も減っているようだ。時刻からすると紀伊勝浦のあたりのようだ。どこかの駅で停車した。
なぜか女性グループ客が3人ほど乗ってきた。こんなところから乗ってくるとは、この電車はとても活用されているんだなあと思う。おそらく名古屋の方向に向かうのだろう。
紀伊勝浦を過ぎたということはもうすぐ新宮ということだ。もうそろそろ起きる準備をしよう。
新宮到着は朝5時で今は10月だからまだまだ暗いけど、多少明るくなった海が見える。やっぱり紀勢本線は海が見えていいなあ、いつか昼間通ってみたいなあと思った。
そして定刻通り、電車は終点新宮に到着した。客はけっこういる。終点まで乗る客が多いようだ。電車を降りる。
さてきょうは鉄道の日記念・本州乗り放題きっぷを使い始めて3日目である。きょうじゅうに東京まで戻らなければならない。
だから始発の列車に乗らなければならないが、始発は朝6時の松阪行きで、まだ1時間ある。ぼくはいったん新宮駅の外に出てみることにした。
紀勢本線その2
新宮発車
新大阪から乗ってきた電車を新宮(しんぐう)で降りた。松阪行きのディーゼル車が出るまで約1時間あるので、まずは駅の外に出てみた。
駅前はけっこうな街並みの場所である。そしてまだ朝5時なのに、駅弁屋が開いていた。さすがは毎日夜行列車が到着する場所である。
とは言ってもその夜行列車を降りた客はそれほど多くない。何人かは駅弁を買っているようだ。
駅舎に入ってみてみると、うどん屋も開いているようだった。さてうどんと駅弁とどちらにしようかと思ったが、やっぱり駅弁を買うことにした。松阪行きまで時間があることだし、駅弁が傷まないうちに食べてしまおう。
食べ終わると待合室でしばらく休む。そのうち松阪行きの出る時刻が近づいた。鉄道の日記念・本州乗り放題きっぷを見せて改札を通る。和歌山の方に戻る電車も出ていて、それに乗る客もいるようだ。
松阪行きディーゼル車は地下通路を進んだ先にあった。今まで乗ってきた電車と比べるととても古いディーゼル車である。客は少ないので適当に端のボックス席にすわる。たちまち眠ってしまった。
ディーゼル車は発車したようで、途中何回か学生が乗ってきて満員になったようなおぼろげな記憶はあるが、もう一回眠って起きるともう学生の姿はなく、閑散とした車内であった。もう午前8時過ぎである。
松阪到着
左右を見ると山の中である。なんだか今まで見たことのない景色のような気がした。
ぼくが普通に見ているいわゆる山並みというものは、山が遠くに見えて、その山は頂上付近の植物が見えるということはめったにない。そんなに近くに山があるということはないのだ。
しかし三重県南部の紀勢本線では、遠すぎず近すぎない場所に中くらいの高さの山があり、びっしりと植物があるのだ。今までこんな風景は見たことがないなあと思った。
そんなふうにして、見たことのない風景を見ながらお客の少ないディーゼル車は進んでいった。
そして多気(たき)を過ぎる。今日はこのあと鳥羽(とば)に行って、フェリーで伊勢湾を越えて愛知県側の港に行って、バスと電車を乗り継いで豊橋に行って東京に帰ろうとしているので、ここで降りてもいいのだが、松阪まで行くことにする。
そのわけは、後で名松線に乗る予定なので、松阪~多気をあらかじめ乗っておけば紀勢本線は全部乗ったことになるからだ。
多気からは景色は平野になり、そのまま終点の松阪に到着した。ここで今まで乗ってきた古いディーゼル車を降りた。
さて、ここから鳥羽まで行かなければならない。鳥羽行きのホームはどこかなといったん階段を上がってみたが、どうやら同じホームから出るようなので同じホームを降りて鳥羽行きを待つことにした。
参宮線
松阪〜鳥羽
新宮から乗ってきた古いディーゼル車を松阪で降りて、鳥羽行きのディーゼル車を待った。
やってきた。去年水郡線で乗ったのと良く似たけっこう新しいディーゼル車である。
乗ってはみたがお客はほとんどいない。そして発車である。まずは何分か前に通った多気まで進む。そこから分岐し、紀勢本線のレールが分かれていく。
海からそれほど離れていない場所を通る路線だけあって、紀勢本線と比べるとそんなに山が見える場所は通らないようである。もっとも海も見えない。だんだんと家並みが多くなって市街地に入り、伊勢市に着いた。
まちなかの駅だがそれほど乗り降りもなく、また発車する。ディーゼル車はさらに進んでいく。
のどかな場所を進む路線である。こうやって列車にゆられていると仕事のことなんかすっかり忘れてしまう。でもディーゼル車は終点が近づき、多少家並みの多い場所に入り、鳥羽駅に到着した。ここで降りる。鉄道の日・本州乗り放題きっぷを見せて改札を通る。
鳥羽駅〜鳥羽港
いかにも港町っぽい感じの場所であるが、駅の近くに港はないようだ。それらしい方向に歩いていく。
港町っていうのはいいものである。以前鎌倉から逗子まで歩いた時、鎌倉からトンネルを抜けて逗子側に出たらいかにも港町っぽく、船がずらっと並んでいた場所に出たことがあったが、なんだか雰囲気はそれに近いものがある。
道はそれほど広くなく、車通りもあまりない。でもけっこう鳥羽駅から歩いたなあ。
となりを見るとレールがある。架線もあり、近鉄のレールのようだ。どうやら今近鉄のレールに沿って進んでいるらしい。なおも歩く。
おお、港だ。フェリーの港っぽい建物が見えてきた。そしてなんと近鉄の駅も見えてきた。鳥羽の港は近鉄の鳥羽のとなりの駅がもより駅のようだ。道を渡り、ぼくはフェリーターミナルに近づいていった。
フェリー・鳥羽〜伊良湖岬
旅行記本文
参宮(さんぐう)線の鳥羽(とば)駅から歩いて歩いて、なんとか港までやってきた。まずは港に入ろう。
港で次のフェリーの時刻を調べると、次の船は伊良湖岬(いらごみさき)行きが先に出ることがわかった。きょう中に東京に帰るには一番いいフェリーである。券を買ってしばらく待つ。
今までいろいろな港で船に乗ってきた。7月には青森や函館でフェリーに乗ったし、去年は宇野から高松まで乗った。鳥羽の港の雰囲気は、さらに以前に乗った久里浜~金谷のフェリーの雰囲気に似ている。どことなくこじんまりとした港である。
さていよいよ乗船だ。ここの船も自家用車が乗り込む脇から歩いて乗り込んでいき、階段を上がって客室に入る。そして座席にすわる。いい場所である。
海を見ると鳥羽の港は、ここのフェリーターミナルからJRの鳥羽駅の方向に広がっているようだ。そして海の中に島が見える。神社っぽい場所が島の中にあるのが見える。そして伊良湖岬に向けて出航だ。
7月に続いて足かけ4日間の長い旅行である。そのしめくくりがこのフェリーなのである。
船というものは何度乗ってもいいものである。三重県の海岸がどんどん離れていく。見える海は日差しを浴びてキラキラ輝いている。そしてだいぶ海岸が遠くなってきた。いっぽう愛知県の海岸はまだまだ見えない。おだやかな海である。
客は数十人乗っている。数時間に1本の鳥羽と伊良湖岬を結ぶフェリーであるが、ぼくみたいに徒歩の人は少なく、たいてい自家用車であろう。みんな海が好きな人たちらしく、特に船酔いとかしている人はいないようだ。そんなふうにして時間が過ぎる。
伊良湖岬が近づいてきた、岬というくらいだから陸地が狭いところで、港は見えるものの港の左右はすぐ海である。そんな港にどんどん近づいていって、そしてあたりまえのように接岸。ほとんどの客は自家用車なので車の方に向かい、徒歩客数人が徒歩の出口に向かう。
そして出口が開いた。歩いてフェリーを降りる。豊橋に向かうバスまでは時間があるようなのでしばらくフェリーターミナルでもながめていよう。
バス・伊良湖岬〜田原萱町
旅行記本文
鳥羽港から乗ってきたフェリーを伊良湖岬の港で降りた。岬というくらいだから海にかこまれた場所である。
おだやかな場所だなあと思いながらしばらく海をながめていた。そしてバスがやってきたので乗る。けっこうな人数が乗り込んだが全員すわれた。バスは豊橋に向けて発車する。
このあたりは温暖な土地らしく、バスは花々が咲き乱れる中を進んでいく。海が見えていい景色である。
半島っていうのはどこも、どことなく他の場所とは植物が違うような気がする。それだけ独特の気候なのかもしれない。残念ながらぼくは植物についてくわしくないのであまり語ることができないのが残念である。
だんだんまわりの景色に家並みが増えてきた。だいぶ伊良湖岬から離れたところで、とうやく目的地、田原萱町(たはらかやまち)が近づいてきた。荷物をまとめて降りる準備をする。そして到着。運賃を払ってバスを降りた。
ここで降りる理由だが、この近くに豊橋鉄道という私鉄があるのでそれに乗って豊橋まで行く予定なのである。地図では交差点を右手に進むとあるはずだが、と思って交差点を渡って進んでみる。
あったあった。ここが三河田原駅のようだ。なんだかとても古い駅のようだ。ぼくは豊橋鉄道に乗ろうと駅舎に入っていった。
豊橋鉄道
旅行記本文
伊良湖岬から乗ってきたバスを田原萱町(たはらかやまち)で降り、歩いて豊橋鉄道の三河田原駅までやってきた。
新豊橋まできっぷを買い、電車に乗る。
なんとも古い電車であった。シートも壁も天井もすすけている。
なぜかつりかわがとても長い。電車が発車するとつりかわが左右に大きくゆれる。
古い電車自体は去年乗った日立電鉄で経験している。とても古かった。まあ同じくらい古い電車だろう。
客はとても少ない。これでやっていけるのかな?
電車から渥美半島の北の湾が見える。伊良湖岬から乗ってきたバスの景色もおだやかなものだったが、この電車の景色もおだやかだ。温暖な土地のようだ。
それでも新豊橋が近づくと徐々に客が増えてくる。それでも座席がいっぱいになるほどではない。景色が市街地に移り変わり、終点新豊橋に到着である。
かなり疲れたがいい旅行だった。でもあとは東海道本線に乗ればおしまいだ。
なにか職場にみやげでも買っていこう。新豊橋駅はこじんまりした駅のようだが、JRの豊橋駅ならなにかみやげが売っているかもしれないなあと思いながら、ぼくはけっこういっぱいいる客に混じって豊橋鉄道の改札を通った。JRの駅はどこだろう。
東海道本線その3
旅行記本文
三河田原駅から乗ってきた豊橋鉄道の古い電車を降りるとJRの豊橋駅を探した。それほど遠くないところにあった。さあ、まずは職場の同僚におみやげでも買っていこう。
豊橋駅の一角におみやげを売っている場所があった。これにしよう。お菓子を買うと改札を探した。なんとか見つかり、本州乗り放題きっぷを見せて通る。さすがに豊橋なので愛知御津や比叡山坂本と違ってびっくりされるようなことはない。
あとは2ヶ月前にも3回も通った道なので迷うことはない。2ヶ月前より若干早い時刻である。やっぱり伊勢湾フェリーに乗って良かった。
浜松、静岡と乗り換える。2ヶ月前は静岡から東京行きに乗ったが、もう少し早い熱海行きに乗ることにする。これでちょっとだけアパートに早く帰れそうだ。
それでも熱海に着くとまっくらになっていた。長かった3日間の旅行だったが、あしたは1日ゆっくり休んであさってからまた会社に行こうと思い、小田原までの途中の海を見ながら東京に帰っていった。
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