123.ムーンライト高知とムーンライト松山・2日目
土讃線その1
新今宮〜大阪
新今宮の時計まわりの大阪環状線ホームで電車を待つ。じきにうすい茶色の電車がやってきた。
乗ってすわる。大阪ではもう午後10時なら環状線はすわれるのだ。
つい3ヶ月前に新大阪から新宮まで夜行快速に乗った時もここに乗ったっけなあと思い出した。確かあの時は通天閣が見えたっけと思い出した。
右側の窓に注意していると通天閣が見えた。うん、予定通り進んでいる。
そのまま電車は暗い中を進んでいき、じきに3ヶ月ぶりに大阪駅に到着した。
大阪駅
まずは改札を出て、次の青春18きっぷにあしたの日付を入れてもらおう。なにしろこれから乗るムーンライト高知は大阪駅を出る時はすでに午前0時をまわっているのだ。
確か5年前にムーンライト九州の指定席券を払い戻した窓口があったよなあと思ったらちゃんとあった。まずはここにまだ日付の入っていない18きっぷを出し、日付を入れてもらった。
そしていったんその18きっぷはしまい、今日の日付の18きっぷで改札に入る。
ムーンライト高知の指定席券も確認する。うん、ちゃんとある。席番も書いてある。
時刻表にはムーンライト高知の出るホームが書いてあった。どうやらふだん福知山線が出るホームから出るようだ。
このホームからは急行だいせんも出るらしい。どうやら並んでいる人はだいせんの客らしい。
なるほど、ムーンライト高知は全車指定席だけど、だいせんは自由席があるから並んでいるのだろう。
そのうちだいせんの客車がやってきた。全員乗り込む。あまり混雑していない。こんな寒い時期に山陰地方に行く人は少ないのだろう。
発車時刻が来てだいせんが発車していく。客車が発車する時はなかなかおもむきがある。
そして時間が過ぎる。12時を過ぎた。
就寝
京都からムーンライト高知がやってきた。この列車はムーンライト松山と併結して運行されるので、場所を間違えないようにして指定席を探してすわった。
ほとんど席も埋まった所で発車である。
さすがに全車指定席だけあって、大垣行き夜行にみられるようなずっと立っている人や、通路にぶったおれている人はいない。おだやかな雰囲気である。
ただしけっこう古い客車である。すきま風が吹き込んできそうな客車である。
そんなすきま風に負けないようにとめいっぱい暖房を効かせて客車は神戸のあたりを走っていく。
ななめうしろにカップルがすわっている。仲良くおしゃべりしている。
この車両はほとんど1人旅らしい男が中心なのでなんとなく浮いている感じである。
と言うかうらやましい。
そんな思いもちょっとの間で、たちまち眠ってしまった。
起床
気がつくともう明るくなっていた。腕時計の時刻からすると御免(ごめん)のあたりを走っているようだ。きのう乗った大垣行き夜行に続けて2連続の夜行なのでちょっとつらい。
まあ、もっとつらい北海道旅行をおととししているから、あの時よりはましなのだが。
あの時は車中3泊、宿1泊、さらに車中3泊という旅行だった。
とりあえず夜行列車の朝独特の雰囲気に包まれ、みんな起き出したようだ。
そしてだんだん列車は市街地に入っていき、終点高知駅に到着した。さあ、降りよう。
改札には中年女性の改札員がいた。大阪駅で日付を入れてもらった青春18きっぷを見せると、女性は定期券に使われるような大きな文字の日付で18きっぷの小さい文字の日付に上書きした。
そしていったんぼくは改札を出た。
土佐電鉄
高知駅前
高知駅を降りたぼくは、これから予土(よど)線に向かうため、窪川(くぼかわ)駅まで行く必要があるのだが、窪川駅まで行く普通列車は少なく、途中の須崎(すさき)という駅まで行く列車がいくつかあり、窪川行きは数時間後にしかない。
その間高知駅でぼ~っとしているのもなんなので、土佐電鉄にでも乗ってみることにした。
ただし数時間しか余裕がないので全路線に乗るのは無理そうだ。高知駅前から桟橋通五丁目まで延びている路線だけ乗ることにした。
まずは駅前に出て、土佐電鉄の高知駅前の停留所を探した。
あったあった。駅を出て左側に乗り場があった。
乗ってすわった。お客は多少は多いが満員というわけでもない。
高知駅前〜桟橋通五丁目
電車は発車した。大きく左に曲がり、南へと進んでいく。
停留所ごとにお客が乗ってくる。
東西に通じる大通りに面した交差点を通る。もう1路線の土佐電鉄の路線を直角にまたぎ越していき、はりまや橋に停車した。ここでかなりのお客の乗り降りがある。
もう一方の路線に乗り換えの人も多いだろう。
はりまや橋というから何か橋があるのかと思っていたが、用水路のような運河のような細い水路が見えるだけであった。昔ここが市街地でなかったころはどんな風景だったのかはこの時も今もあまり想像できない。
はりまや橋を発車した時点では満員だった車内も、停留所を経るごとにお客が降りていき、終点の手前でお客は2~3人になった。
そして電車は終点、桟橋通五丁目に着いた。運賃を払って降りた。
この終点は道路からちょっとだけ奥まった場所にあって、ちょっと歩いて道路の所まで来た。
「桟橋」という名前が付いているが、桟橋らしきものはあたりには見えず、運河のような水路の一部が見えるだけであった。
朝食
少しあたりを歩いてみると、喫茶店を見つけた。どうやら営業しているようだ。となればモーニングセットで朝食と行きたいところだ。
去年8月に名鉄の八百津(やおつ)駅前の喫茶店でスパゲティを食べている。喫茶店に寄るにはその時以来だ。
仕事が営業の人だと外回りの途中に喫茶店に寄ったりするだろうし、恋人がいる人だと恋人と喫茶店に行くこともあるだろう。
しかし内勤で恋人がいないぼくには喫茶店は「代用食堂」としての価値しかないのである。
こうやって各地で喫茶店しかない場所だけでお世話になる場所なのである。
喫茶店に入り、いすにすわって休む。なにしろムーンライト高知の座席は堅いので足腰が疲れている。そんな時にいすにすわれるのはありがたい。
やがてモーニングセットがやってきた。う~ん、トーストはいいなあ。
それなりにおなかにものが入ったところで喫茶店を出た。
さてこの喫茶店は、駅名は忘れたが桟橋通五丁目のとなりの停留所の目の前なのである。
帰りはここの停留所から高知駅前まで帰ろうと思い、安全地帯で高知駅前行きの電車を待った。
そのうち電車がやってきたので乗った。
帰り
高知駅前に向かうにつれてだんだんお客が乗ってきた。立つ人も出てきた。
そんな中、なぜか女性がぼくに質問してきた。
「あの~、この電車に乗るの今日がはじめてなんですが、この電車、運賃はいくらですか」
「ぼくも電車に乗るの今日がはじめてなんですよ。え~と、160円のようですよ。」
「どうもありがとうございます」
ぼくはその時、大きな荷物を持っていた。いかにも旅行者である。なのに質問してきた。
う~ん、なぜだろう。地元の人と思ったのかなあ。
たぶん大きな荷物を持っている人は旅行者、とは全く考えなかったのだろう。きっとそうだ。
またはりまや橋にやってきた。多少お客が降りたが、乗ってくるお客も多く、車内は混雑したまま高知駅前へと進んでいく。
そして電車は右に曲がり、高知駅前に到着した。
運賃を払って降りた。
喫茶店でだいぶゆっくりしていたにもかかわらず、窪川行きの列車はまだまだで、その1本前の須崎行きに間に合う時刻だった。
ぼくは須崎行きに乗って須崎で降りて、駅前を散歩してみようと考え、青春18きっぷを取り出して改札に近づいていった。
土讃線その2
高知〜須崎
午前9時ちょっと前、高知駅。
ぼくは青春18きっぷを取り出して改札に入った。すでに須崎行きのディーゼル車はホームにあったが、あまりお客はいなかった。
乗ってすわってしばらくするとディーゼル車は発車した。
高知の市街地は狭く、走り出してすぐに郊外に出てしまった。そしてそのまま畑の中を進む。
そのうちぽっかりとした谷間に出た。
左右に山があり、山の下の方から山頂まで緑色の植物でおおわれている。
あれはお茶だろう。
空にはもやがかかったようで、山のどこかから煙が出て、煙のすじが1本、ぼーっと立ちのぼっている。なんとものどかな風景だ。
この旅行のかなり後で見たテレビで、静岡のお茶は実は高知のお茶が混じっているとかいう話をしていた。もしかしたらそのお茶というのは、この時に見た左右のお茶の山で取れたお茶なのかもしれないと思っている。
須崎〜窪川
そんな風景を見て、他にも田舎の風景をながめた後でディーゼル車は須崎に到着した。
ここで約1時間、駅の外に出てすごそう。
とは言っても須崎は駅前にコンビニがあるわけでもなく、観光地っぽいものがあるわけでもなく、普通の小さな町だった。とりあえず適当に散歩して駅に戻って時間をすごした。
再びホームに戻って待つと高知からやってきたディーゼル車がやってきた。乗ってすわると発車だ。
また田舎の風景をながめてすごし、窪川(くぼかわ)に到着である。
もうお昼だし、ちょうどここから乗る予土(よど)線の宇和島行きのディーゼル車までは須崎と同じで1時間ほどある。ここで食事でもしていこう。
昼食
駅前の道をちょっとだけ進み、右手に見えた食堂らしい建物に入った。
食事をたのんでしばらく待つ。
しばらくすると12時になった。
なんだか作業着を着た人が10人ほどどやどやと入ってきて席を埋めた。
ありゃ、この食堂は近くの作業所で勤めている人専用の食堂だったか。
2日も休暇を取ってこの旅行に出ているが、世の中は確実に平日なのだということを改めて実感した。
なんとなく肩身の狭い思いをしながら作業員に混じって食事を終え、食堂を出た。
予土線まで時間があるから、ちょっと散歩しよう。
予土線
窪川駅
窪川駅の近くの食堂で食事をし終わって食堂を出た。まだもうちょっと予土線の発車時刻までは時間がある。ちょっと散歩してみよう。
駅から離れた大通りに着き、左右を見回し、とりあえず右に進んでみるが、特に目新しいものは見あたらない。
まあいいかと思い、駅に戻ることにした。
降りたJRの駅舎に入っていき、若井までの乗車券を買おうと思って自動券売機に向かう。
あれ?あるのは若井の隣の家地川(いえぢがわ)から先の駅名だけだ。若井がない。
う~んと思ったが、ふと去年11月に行った秋田県の角館駅のことを思い出した。
あの駅はJRの駅とちょっと離れた所に秋田内陸縦貫鉄道の駅舎があった。
もしかして窪川も同じ位置に土佐くろしお鉄道の駅舎があるかもしれないと思った。
JRの駅舎を出て、もしここが角館駅ならば秋田内陸縦貫鉄道の駅舎がある位置を見てみた。
あった!やや小さめの駅舎があった。ぼくはその駅舎に入っていった。
あったあった。土佐くろしお鉄道の駅舎である。若井駅行きのきっぷも売っている。
200円払ってきっぷを買った。中村行きのきっぷも売っているようだ。
こうやって、過去の経験が役に立つこともあるものだなあと改めて思った。もっと旅行して経験を積むともっと良いことがあるかもしれないと思った。
窪川〜江川崎
ぼくはきっぷを買うと、JRの方の駅舎に戻り、200円のきっぷと青春18きっぷを見せて改札に入った。階段を昇っておりるとすでに宇和島行きのディーゼル車は停車していた。
乗って発車時刻を待つ。年輩のお客がけっこう乗ってきた。けっこうな混雑のままディーゼル車は発車した。
ディーゼル車は山の中を走り、窪川で乗っていた年輩のお客が降りていく。
そのうちディーゼル車は川のそばに出た。どうやらこの川が四万十川(しまんとがわ)のようだ。やっぱり川のそばを走る路線はいいなあと思う。
しばらく川のそばを走る。窪川から乗ってきたお客はどんどん降りていき、お客の数は10人ほどになった。列車はさらに進む。
そしてディーゼル車は江川崎駅に到着した。ここで長い停車である。トイレにでも行っておこう。お客はみんなトイレに向かう。若い男が多い。みんな青春18きっぷのお客らしい。
江川崎〜宇和島
トイレからみんな列車に戻って少し待つとまた発車だ。川から離れ、山の中に入っていく。
そのうち宇和島に向かうらしいお客が徐々に乗ってくる。
あとからあとから乗ってきて、けっこうな混雑になった。
江川崎では数えるほどしかいなかったお客が、気がつくといっぱいになっていた。
この予土線もローカル線の常として、始発駅近くと終着駅近くでお客が多く、途中駅でお客が少ない路線のようである。まあ短距離でも使われているのだから予土線は立派につとめを果たしていると言えるのであろう。
そのうち北宇和島駅が近づき、右から予讃線がやってきて合流した。そしてたくさんのお客を乗せたままディーゼル車は発車し、行き止まり駅である宇和島駅に近づき、到着した。
ぼくはたくさんのお客に混じって宇和島駅の改札で窪川で買った「窪川→若井」のきっぷを渡し、青春18きっぷを見せて通った。まずは駅の外に出て深呼吸した。
予讃線その1
計画
宇和島駅の外に出て深呼吸し、振り返って駅舎をながめてみた。
この駅は、そうだなあ、伊豆急下田駅に雰囲気が似ているような気がする。
伊豆急下田も宇和島も観光地の駅だし、行き止まりだし、そんなわけで雰囲気が似ているのだろう。
とりあえず次に乗る予讃線まであまり時間がないため、須崎や窪川みたいな散歩はあまりできず、再び18きっぷを見せてホームに戻ることにした。
さてこれからの予定だが、いじわるなことに、宇和島から八幡浜まで普通列車に乗ると、八幡浜から松山に向かう普通列車が発車する10分後に到着するダイヤになっているのだ。
ところが途中の卯之町(うのまち)で降りて追いかけてくる特急に乗ると、卯之町から八幡浜までのどこかで普通列車を追い越し、乗れないはずの普通列車に追いつくダイヤになっている。
昔の東北本線なんかにこういうダイヤがあったなあと思い出す。
そんなわけで先を急ぐため、卯之町で降りて特急に乗り、八幡浜から再び普通列車に乗り換える予定である。たいへんだけどがんばろう。
宇和島〜卯之町
さて八幡浜行きの普通列車に乗る。けっこう混雑している。さっきまで予土線に乗っていた人も乗っているかもしれない。
そのまま発車する。のどかな山の中の景色である。あまりお客は降りないまま進む。
卯之町が近づいた。今日の計画を完了するためには、ちゃんと降りなくてはならないなと思った。
そして卯之町に到着。まずは降りよう。そしてちゃんときっぷと特急券を買ってホームに戻って来ようと考え、改札に向かった。
予讃線その2
卯之町駅
予讃線の卯之町(うのまち)駅で改札を出ると、そこはお客でごった返していた。
特急も停まる駅にしては駅舎がとても小さな駅である。
ありゃ~きっぷ買えるかなあと心配したが、自動券売機に並んでいる人は3人くらいのようだ。
たぶん四国では八幡浜までの短距離の特急券は自動券売機で買えるはずだと思っていたので、そのまま行列に並んだ。
やっとぼくの番が来た。さて、特急券は思った通り300円だ。
そして八幡浜までの乗車券は、もうすぐ値上げするが、今はまだ値上げ前なので230円である。特急券と乗車券を買って、これらを見せて改札を通り、再び降りたホームに戻った。
卯之町〜八幡浜
しばらくすると特急がやってきた。思ったとおりけっこう混雑している。愛媛県内なので人の行き来が多いのだろう。
自由席はいっぱいらしかったのでデッキで過ごすことにした。発車する。
さすがに特急は速い。青春18きっぷ旅行の途中の特急なのでよけいにそう感じる。
特急はけっこう起伏の激しい場所を通りすぎていく。もうちょっとでトンネルになりそうな切り通しなども通り過ぎる。
車掌がやってきたので特急券と乗車券を見せた。
そしてまた特急は平野を走るようになる。そしてホームの数の多い大きな駅が見えてきた。いつのまにか卯之町まで乗っていた普通列車を追い越しているようである。
特急は無事、八幡浜駅に到着した。ここで降りよう。そしていったん改札を出よう。
特急を降りて改札に向かう。きっぷと特急券を渡して改札を出た。さすがに卯之町とは違い、八幡浜はけっこう規模の大きな駅だった。まずは深呼吸した。特にやることもないので青春18きっぷを取り出してまわれ右して改札に戻った。
予讃線その3
八幡浜~伊予大洲
八幡浜の駅で、まずは今まで乗っていた特急宇和海が発車するのを待った。発車しないと「特急には乗れませんよ」などと言われてめんどうだと思ったからである。じきに宇和海が発車していった。
青春18きっぷを見せて改札を入った。普通列車の松山行きに乗るには階段を昇る必要があるようだ。
階段を昇っておりてホームに行くとちょうどディーゼル車がやってくる所だった。松山から来た折り返し列車のようだ。お客が降りてきた。その後に乗り込む。お客はそんなに多くない。接続が悪いからだろう。
ディーゼル車は発車した。
左手に海が見えてきた。その向こうに山が見えた。すなわち運河のような湾のような地形が続いているのである。港にはもってこいの地形だな、と思った。
伊予大洲〜五郎
運河のような地形はしばらくして終わり、平地を走ってディーゼル車は伊予大洲に着いた。お客はほとんど乗ってこない。そしてまた発車する。
ディーゼル車が次の駅、五郎に近づくと、右から線路の盛り土が近づいてくるのが見えた。
ぼくはこれを見て内子線の変遷を思い出した。
今は内子線関連の分岐駅は向井原(むかいばら)と伊予大洲だけど、昔は五郎が分岐駅だったのだ。
そして内子から向井原までレールを延ばして特急を内子経由にした時に、五郎のとなりの新谷(にいや)駅から伊予大洲に向かうレールを建設し、完成とともに五郎~新谷間が廃止されてしまったのである。
今見えている盛り土は廃止されたレールのなごりなのであろう。なかなか感慨深いものである。
五郎〜伊予市
ディーゼル車は五郎を過ぎてしばらくすると瀬戸内海沿いに出た。きれいな瀬戸内海である。
しかも夕日できらきら輝いている。なかなかいい景色だなあと思いながら過ぎていく。こういう景色を見るのも鉄道旅行の楽しみの1つなのである。
瀬戸内海から離れ、だんだん暗くなるとディーゼル車は伊予市駅に到着である。
ここで降りなければならない。
今まで内子線を経由しない予讃線の方に乗ってきたので、これから内子線経由の路線で伊予大洲まで戻らなければならないからだ。
とりあえず日が暮れるまでがんばろうと思い、ぼくはホームに降りた。乗り換え時間がちょっとだけあるので青春18きっぷを見せて改札の外に出ることにした。
内子線
伊予市〜内子
伊予市駅のまわりをまわってみると、伊予市の駅舎とは別に、小さな駅舎があり、小さなホームがあった。そこには「郡中港」(ぐんちゅうこう)と書いてあった。
なるほど、伊予鉄道の郡中港駅はJRの伊予市駅のすぐそばにあるのか、あとで伊予鉄道をまわる時には役立つな、と思った。
そしてふたたび青春18きっぷを見せて改札に入り、宇和島方面のホームに向かった。
今度来るディーゼル車は内子経由の列車である。しばらく待っていると列車はやってきた。
乗ってみると1車両につき20人程度のお客である。さすがに1時間半ぶりの列車であり、夕方の郊外方面の列車なのでこのくらいのお客がいるのだろう。
列車は発車し、向井原(むかいばら)でこれまで乗ってきた海沿いをまわる予讃線から離れていく。もっとも内子まではこちらも予讃線だ。
駅ごとに多少のお客が降りていく。こちらの路線もけっこうお客がいて使われているようだ。
山の中の路線と思ったが、なかなか谷間の人口は多そうである。
内子〜伊予大洲
そして内子、かなりのお客が降り、車内はかなり客が少なくなった。
海沿いの路線に比べて景色がつまらないけど、この路線も乗っておいて良かったと思う。
そして新谷(にいや)を過ぎた。右側の窓に注意していると、盛り土だけの路盤が右の方へと離れていくのが見えた。あれがさきほど伊予大洲(いよおおず)~五郎間で右に見えた、廃止された五郎~新谷間の路盤であろう。めずらしいものが見られてうれしい。
ディーゼル車は谷間を離れて平野に出ており、やがてさきほど通った伊予大洲に数時間ぶりに到着した。ここからはまた海沿いの路線を通って松山に行き、この旅3度目の夜行列車であるムーンライト松山に乗る予定である。ぼくはディーゼル車を降り、松山方面のホームへと向かった。
予讃線その4
伊予大洲〜松山
伊予大洲ではあまり乗り換え時間がないため、ホームでそのまま列車を待った。やがて到着する。
あとは数時間前の再現である。右手にさっきも見た廃止された五郎~新谷(にいや)の路盤が見える。
そして瀬戸内海が見えてきた。もうすっかり暗くなっている。遠くにあかりが見える。やっぱり暗くなっても海はいいなあと思う。
すっかり暗くなり、お客の数も増えないままディーゼル車は伊予市を過ぎた。
そしてだんだん市街地が近づいてくる。
そしてようやくディーゼル車は松山に着いた。無事着くことができて、まずはめでたい。
さて、松山に着いてはみたものの、もうムーンライト松山が出る時刻まで時間がないため、松山市街のどこかに行くわけにはいかない。
このままおとなしく駅でムーンライト松山を待つことにする。ぼくの旅行はこういうことが多い。
またあとでゆっくりと市電に乗りに来ることにしよう。
夕食
駅前にワゴン車の屋台ラーメン屋があった。
学生時代に大学に良く来ていたことを思い出す。それも深夜に。
ワゴンのラーメン屋が来る時刻に合わせて研究室に行き、ついでにラーメンを食べていたっけなあと思い出す。
松山の駅前のワゴンラーメン屋にラーメンを注文したら、
「オレ、もうあっちの方に行かなくちゃならないんだ。ドンブリはそこのゴミ箱に捨てていって。じゃあ。」
と言ってぼくからお金を受け取ってラーメンを渡すとラーメン屋は走り去ってしまう。
ぼくはラーメンを食べる。今日もうまい。
言われたとおりにゴミ箱にドンブリを捨てた。
松山駅
さてもうすぐ発車時刻だと思い、まずは青春18きっぷにあしたの日付を入れてもらうことにした。
窓口に行き、この冬最後になる青春18きっぷに日付を入れてもらう。
あとから考えると、5枚1組時代の最後の青春18きっぷの使用開始ということになる。
もちろん今の時点ではそんなことは知らず、待合室でしばらくムーンライト松山を待った。
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