Sorry, Japanese only! (1997年4月)

92.智頭急行と北越急行・3日目

北越急行

富山駅

目が覚めた。去年8月の旅行みたいに寝過ごすことはなく、無事に起きられた。

ここは富山ステーションホテルである。きのうは大阪南港から甲浦(かんのうら)まで船に乗っていて眠いので、今日無事に起きられるか心配だったが、特急ひだの中でかなり眠れたのでなんとか起きられたようである。

ホテルをチェックアウトし、夕食を買ったローソンで朝食も買って富山駅に向かった。

これから越後湯沢まで特急はくたかに乗るのだ。今まで東京と富山・金沢の行き来は長岡まで上越新幹線に乗って、そこから新潟始発の特急に乗って富山・金沢に行くのが普通だった。もちろん全区間JRであった。

それが、越後湯沢の近くから直江津の近くまで通る線路をJRでない私鉄を造って通してしまったのである。こんなに苦労しても、たいして時間の短縮になっていないところが泣かせる。

しかしできた私鉄、北越急行(ほくえつきゅうこう)は、いままで列車が通っていなかったところを通っている。でもそういうところの住民はみんな自家用車を持っているだろう。どれだけ地元民が乗っているのだろうか。

そんなことを考えながら、ぼくはJR発足10周年記念・謝恩フリーきっぷを見せて改札を通り、特急はくたかの出るホームに向かった。

フリーきっぷは自由席にしか乗れないため、自由席の場所で待つ。でも金沢から来る特急だから満席かもしれない。日曜日だし。


富山~直江津

はくたかがやってきた。乗って自由席に入る。なんとかあいている席があったので海と反対方向の窓ぎわにすわる。発車だ。

さて、この特急が通る北越急行ではJR発足10周年記念・謝恩フリーきっぷが使えない。
だからあらかじめ直江津→越後湯沢の乗車券と自由席特急券を買ってあるが、車内で犀潟→六日町の精算をしてもらうともっと安くなったらしい。

もともとの予定では直江津までと越後湯沢から先は青春18きっぷで普通列車に乗る予定だったので、それなら直江津から越後湯沢まで乗車券を買う必要があったが、フリーきっぷが発売になったため予定を変更したのである。

でも買う券を予定通りにしてしまった。消費税が3パーセントから5パーセントに上がったということもある。車内精算では5パーセントだが、事前に買っておけば3パーセントで済んだというわけである。でもそれ以上にJR部分も一緒に買うと高かったわけである。

そんなこととは知らずに車内改札に備えてフリーきっぷと直江津→越後湯沢の券を用意した。じきに車内改札がやってきたので「越後湯沢まで行きます」と言って券を見せた。これでOKである。

朝食を食べ終えるとはくたかは魚津を過ぎていた。このあたりから直江津まではところどころ海の見える区間である。

海に高速道路が走っている。山はフォッサマグナとかいうやつの関係で道路が通せなかったため海に道路を通しているのだ。まだ通ったことはないが、冬の風の強い時など横風でたいへんだろう。風のため通行止めになるかもしれない。

そんな区間を過ぎ、トンネル区間を過ぎて直江津に着いた。さあ、ここからいよいよ北越急行の区間である。


直江津~十日町

なぜかにぎやかな家族連れがやってきた。夫婦と男の子とおじいさんおばあさんの5人連れのようである。

あいている席があったのでおじいさん以外の4人はあいている席にすわったが、おじいさんはぼくのとなりにすわった。そしてはくたかは発車する。また車内改札が来たが、ぼくはもう受けているのでチェックはされない。5人家族は越後湯沢までの券を見せていた。

車内改札が済むとはくたかは犀潟(さいがた)を過ぎた。右に分岐し、いよいよ内陸に入っていく。とたんにトンネルに入り、長いことトンネルをずっと通っていく。

なんても北越急行は70パーセント以上ずっとトンネルだとのことである。これじゃ景色が見えない。

富山から犀潟まではけっこうガタガタしていたのだが、犀潟を過ぎると振動が少なくなった。よくわからないが振動の少ない路線なのだろう。

ここでとなりのおじいさんが、なぜかぼくに日本酒をおごってくれると言う。いや、ぼくは自前で酒を持っていますからと言ってバッグの中の、消費税が上がる前にまとめ買いしておいたスーパーホップスを見せたが、それでもくれると言う。

本当はぼくはビールだとそれほど悪酔いしないですむが、日本酒だと悪酔いすることが多いのでなるべく飲みたくなかったのだが、せっかくなので飲むことにする。ワンカップである。ぐびぐびぐび。ぷはー。

男の子の母親が柿の種をおじいさんに渡した。そしておじいさんが柿の種をぼくに渡す。まあ日本酒を飲むときは悪酔い防止のためおつまみは必要だろうと思い、ありがたくいただくことにした。ぼりぼり。

そして日本酒を飲んでいるうちにおじいさんが語り始めた。なんでもおじいさんたちは北越急行沿線に住んでいるらしい。そしてどんなものか一度乗ってみようと思い、日曜日の今日直江津まで来てはくたかに乗っているとのことだ。


十日町~越後湯沢

はくたかは十日町に到着したのだが、なんと飯山線への乗り換え案内がない。そんなものなのだろうか?

東京都内のJRでは、地下鉄乗り換えの案内もしているのに、JRに直通するはくたかが飯山線の案内をしないとはどういうことなのだろうかと疑問に思った。もしかしたらずっとはくたかでは飯山線の案内はしないのかもしれないなと思った。

はくたかは十日町を過ぎるとまたトンネルに入ったが、ようやくトンネルを抜けた。そして六日町で上越線に入る。とたんに車体がガタガタし始めた。

おじいさんは、「この列車は新幹線に乗り入れているのかい。」と質問してきたので、ぼくははるか右手にある新幹線の高架を指さし、「いいえ、新幹線はあれです。」と言った。

そしてはくたかは越後湯沢の在来線ホームにすべりこんでいった。なかなかいい体験である。

おじいさんたちは越後湯沢でしばらく過ごして帰るとのこと。

越後湯沢にも新しいホームができているみたいだな、と思いながらぼくは新幹線に乗り換えるため階段を上がり、中間改札で直江津→越後湯沢の券を渡してフリーきっぷを見せて新幹線ホームに向かった。

上越新幹線

越後湯沢~新潟

越後湯沢駅の中間改札をぬけ、階段を上がって上越新幹線の新潟方面ホームに来た。

特急はくたかは多少混雑していたが、このホームにはまるで客がいない。やっまり日曜でも混雑する列車としない列車があるのかな。

この時刻の新潟行きは各駅停車のときである。ときがやってきたので乗って自由席に進む。ひとっこひとりいなかった。ときは新潟に向けて発車する。

はくたかでとなりにすわったおじいさんからもらった日本酒で酔っぱらっている。もうろうとしながら過ごす。

何度も乗った区間なので眠ってもいいと思いながら窓の外を見る。4月まだ早いので山々の上の方には雪が多少見える。でも盆地の下の方はもう雪はない。

長岡を過ぎると全く雪が見えなくなった。相変わらず客はなく、こんなのでいいのかなあと思いながらときは平野を進んでいき、とうとう客がないまま終点新潟に到着である。


昼食

日本酒もかなりぬけた。もうお昼だし、秋田行きいなほまで時間があるので食事でもしようと思い、JR発足10周年記念・謝恩フリーきっぷを見せて改札を出て、階段をおりて外に出た。

駅前なのに建物のたてこんだところである。

新潟駅に何度も行ったあとから考えるとそこは新潟駅の正面の出口から多少新津寄りに進んだところの出口なのだが、新潟駅に慣れない当時はそんなことは知ることもなく、近くに食堂はないかなあと探した。

あったあったラーメン屋だ。それほどピッカピカじゃない。ピッカピカのラーメン屋はあんまりうまくなさそうだ。こういう多少古びた店がうまいんだ。

もっとも古すぎる店はかえってまずいんだけど。

あまりピッカピカじゃないラーメン屋でラーメンを注文した。時間がある時はラーメンはすぐに出てくる。ラーメンを食べた。今日もうまい。ゆっくり食べる。

すっかりおなかもいっぱいになってラーメン屋を出た。

羽越本線

新潟駅

ラーメン屋を出て新潟駅に戻る。秋田行きいなほは数が少なくなっていて、たっぷり時間をかけてラーメンを食べたのだがまだ発車まで30分くらいある。でも改札を通ろう。JR発足10周年記念・謝恩フリーきっぷを見せて改札を通る。

なんといなほはすでに入線していた。新潟駅は特急の入線が早いようだ。
ひどいところだと始発駅でも発車5分前に入線ということがあるのに、これはありがたい。早々にすいている自由席に入ってすわる。

おっと、羽越本線に乗ったら海を見なくちゃな、と思い、「こっち側に乗ると海が見えるんだよね」と言いながら左側の席に移ると、JR発足10周年記念・謝恩フリーきっぷを使っているらしい若者がぼくの言葉を聞いて左に席を移した。
そうこうするうちに多少客が増え、いなほは秋田に向けて出発した。


新潟~秋田

多少はお客が多いようだ。なにしろ秋田新幹線が開業しているのだ。開業から半月たっているが、謝恩フリーきっぷが使えるのだから秋田新幹線目当ての客も多そうだ。

村上を過ぎると海が見えてきた。羽越本線は真冬や梅雨の時期に乗っているが春は初めてだ。
なんとなくうららかでおだやかな日本海である。酒田近辺で内陸を通るが、酒田を過ぎるとまた海が見えてきた。

海を見ながら時間が過ぎ、ようやく秋田に着いた。


秋田駅

さて、秋田に着いたらおみやげでも買っていこうと思ったが、駅を出ようとすると、改札の向こうのむやげもの屋がお客でごった返しているのが見えた。

うーん、これではおみやげを買っているとこまちの自由席がすぐにいっぱいになってすわれなさそうだな、と思った。
しかたなくおみやげはあきらめることにした。

こまちの中間改札らしきものがある。でも普通の新幹線の中間改札より小さな設備のようだ。やっぱりミニ新幹線だからだろう。
ぼくは謝恩フリーきっぷを見せて中間改札を通った。

秋田新幹線

秋田駅

秋田駅で中間改札を通り、東京行きの秋田新幹線こまちが出るホームにやってきた。

なにしろ謝恩フリーきっぷでは自由席にしか乗れないため、並んでなんとかすわらなければならない。

もしホームに弁当屋でもあれば弁当を買おうと思っていたが、どうやら店はなさそうなので早々に並ぶことにする。こまちは2週間前に走り始めたばかりなのでレールファンが多そうである。

そしてようやくこまちが入線してきた。ドアが開くので急いで乗る。なんとかすわれた。

座席は北向きである。ということは逆向きに発車するということだ。きのう乗った特急ひだも名古屋から岐阜まで逆向きに走り、岐阜から先は方向が変わるので岐阜から前を向くように座席がセットされていたが、こまちも大曲で方向が変わるので、大曲から先で前を向くようになっているのだろう。

しかしこの列車、座席の固定が全然されていない。前の座席がガタガタしていて、ひざにぶつかって痛い。ぼくは荷物をひざと座席の間に入れて座席が動かないようにする。これでひざにぶつかることはない。

まだ発車まで時間がある。その間に自由席にはお客がたくさんやってきて、立ち客が出た。

別のホームには別の秋田行きこまちが到着して、お客をおろしていく。

お客が降り終えたこまちを見ていると、なんと座席がひとりでに回転している。すごいなあと思いながら見ていた。


秋田~盛岡

そうこうするうちに発車時刻である。こまちは発車し、大曲に向けて後ろ向きに進んでいく。

左手に車庫が見えた。そこには先月乗った秋田リレー号の車両が見えた。本で見た通りだとこれから飯山線のディーゼル車として運用されるはずである。

そして大曲に着き、逆向き、すなわち前に向けて発車する。そして角館を過ぎると秋田内陸縦貫鉄道のディーゼル車が左手に見えて、こまちが発車すると左手に秋田内陸縦貫鉄道のレールが見えた。おととし乗ったことを思い出す。

角館を過ぎるとこまちは山の中に入っていく。でも3年前やおととしに田沢湖線に乗った時と比べると、どうも車窓の景色が違うような気がする。

たぶん秋田新幹線の工事で、通る場所を多少変えているのかなあと思った。

そのうち山を抜けて盛岡に近づいた。こまちは高架に上がっていく。一瞬空調が切れてまたついた。ものの本によると盛岡の前後で電圧が2万ボルトから2万5千ボルトになるそうだから、電圧を切り替えるため電気が通っていない区間を通るのだろう。


帰宅

こまちは右に曲がっていき、盛岡の新幹線ホームに到着した。こまちはゆっくり進み、ガチャンとショックがあった。やまびこと連結したのだろう。

そして盛岡を出る。秋田から盛岡までとは違い、グングンスピードを上げていく。いつもの東北新幹線のスピードだ。車内がガタガタとゆれているような気がする。スピードの速さが身体で感じられるような気がした。おととい眠りながら乗った特急スーパーはくとの智頭急行区間みたいな感じである。

だいぶ疲れた旅行だったが、JR四国とJR東海に完全乗車したし、いい旅行だったなあと思った。

暗くなっていく車窓を見ながら、ぼくは東京に帰っていった。

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