1995年は阪神大震災に始まり、某宗教団体のテロが追い打ちをかけた年でした。
そんな中、ぼくは一般周遊券を使った旅行をしたり、新幹線にたくさん乗ったりして過ごしていました。
そんなわけでたまには短距離の旅行をしたいとバスで沼津まで行き、近隣の鉄道に乗って小田原から小田急で帰ってきたのですが、その途中、東海道本線の電車の中で、「春のレジャートクトクフリーきっぷ」というおもしろそうなきっぷの案内を見たのです(詳細は関連リンクの春のレジャートクトクフリーきっぷの説明をごらんください)。
この案内を見て、このきっぷを来週にでも使ってみたいと思いました。でも東京から熱海まで行くのはけっこう運賃がかかります。
でも御殿場線に乗り放題、ということは小田急で新松田まで行って御殿場線の松田まで歩けば運賃が安くてお得じゃないかと思いました。もしこのきっぷが松田で売っていなければあきらめるしかないですが、だめでもともと、来週松田に行ってこのきっぷが買えるかためそうと思いました。
行くところとしては、このあたりで乗っていない鉄道として、去年乗らなかった浜松から西鹿島まで向かう遠州鉄道に乗るのがいいだろうと思いました。となると、
松田→沼津→浜松→西鹿島→浜松→沼津→松田
というルートで行こうと思いました。
こうして1週間が過ぎ、ぼくはアパートから電車に乗り、小田急に乗り換えて新松田に向かったのです。
きっぷ購入その1
小田急の電車は、無事新松田駅に到着した。
小田原まで行ったり箱根登山鉄道に乗ったことはあるが、この駅で降りるのははじめてである。出口に向かい、改札を通る。さてJRの松田駅はどこだろう。案内はないかな。
小田急からちょっと離れたところに、小さな小さな入り口があった。どうやらここが松田の入り口らしい。あそこに行けばいいのか。春のレジャートクトクフリーきっぷはあそこで売っているのかな?とりあえず行ってみよう。
そこはどことなくこじんまりした場所で、係員のいる窓口があった。ぼくはそこに行き、
「春のレジャートクトクフリーきっぷをください」と言った。そうすると係員はぼくに何かビニールの入れ物に入れられた紙を渡して、
「ここの通路を進んで階段を上がっておりたところにある建物で買ってください。その時にこれを見せて改札を通ってください。これは入場券がわりです」と言った。
なんだこりゃ。この駅ではいつもこうなのか。
ふつうこういう乗換駅では乗り換えに便利な入り口の方が客が多いはずなのに、乗り換えに不便な入り口の方でしかお得なきっぷを売っていないなんて、こりゃ不便だなあと思った。とりあえず通路を進んでみよう。
きっぷ購入その2
暗い通路を進んで左に曲がり、階段を上がる。
そこはホームだった。しかもホームの端で、階段までは100メートル以上ありそうだ。そして階段を上がっておりたところに、小田急側の窓口より何倍も大きなかわらやねの建物がある。
うひゃあ、これじゃ時間がないときは間に合わないなあ。
この景色を見て思い出したのは中央本線の高尾駅である。高尾も松田と同様に、私鉄(京王線)との乗換駅で、乗り換えに便利でない出口の方に長距離きっぷを売っている駅舎があるのだ。
去年の4月には、京王線の方の出口を出てから便利でない方の出口までぐるっと駅を半周したものだった。
そんなことを思い出しながらホームを進み、階段を上がっておりて小田急から遠い方の改札に来る。そしてさっきもらったビニールの入れ物に入れられた紙を改札に渡した。とりあえず通れた。そしてそこの窓口に改めて春のレジャートクトクフリーきっぷをくださいと言い、お金を払ってきっぷを受け取った。良かった。ちゃんと松田でも売っていた。
そしてさっそく改札にきっぷを見せて通る。そしてまた階段を上がっておりて沼津方面のホームに行く。
きっぷ確認
さて、改めてきっぷを見てみよう。
春のレジャートクトクフリーきっぷは、首都圏のホリデーパスと同じ(正確には「1995年当時の」を追加する必要がある)あらかじめ印刷されたきっぷで、青春18きっぷみたいに窓口で買うごとに印刷するものではなかった。
ちゃんと有効範囲も記載されている。
それよりなにより、添付されている割引券の数が半端ではない。どうせ使う時間は全然ないのでそれほどじっくり見なかったが、30ヶ所か40ヶ所くらいあっただろうか。
おそらくJRの駅からバスに乗らないと行けない場所も多いのではないだろうか。そんな場所、道路が渋滞する場所ならともかく、静岡で鉄道とバス(もしくはタクシー)を乗り換えて行こうなんていう人も少ないだろうなあ、このきっぷを使うのはぼくみたいな鉄道だけ乗って割引券には用がない人くらいだろうなあ、そう感じる。
さてホームに行く。時間に余裕があって良かった。
とっぷりと待つと沼津行きの電車がやってきた。乗ってみたが客は少ない。まあこんなもんだろうなあ。
松田~沼津
電車は発車する。ちょうど1年ぶりの御殿場線だ。やっぱり景色のいい路線はいいなあ。
左右の山々を見ながら電車は進んでいく。歴史の古い路線だし、そんなに左右の景色は100年前とかと比べて変わらないんだろうなあ。
電車は神奈川県から静岡県に入っていく。今月2回目の静岡県だからそれほど気負うこともない。こうやって行ったことのある場所が増えていくと、いいことも悪いこともあるんだろうなあ。
多少家並みが多くなり、御殿場に着いた。去年はこのあたりは高校生が多くてすわれなかったことを思い出す。今は通学時間ではないのでお客も少ない。やっぱり御殿場線も高校生の客が多いんだろうなあ。
御殿場を過ぎても客は少なく、沼津が近づいていく。電車は市街地に入っていき、沼津に到着である。電車を降りる。
きょうも乗り換えるだけだが、いつか駅を出る機会があるかもしれないなあと思いながら、浜松方面の電車に乗り換えるため、階段を上がった。
発車
松田から乗ってきた電車を沼津で降りた。
ここの乗り換えはまあまあ便利なレベルだ。熱海みたいに乗り換えの地下道が少ないわけではないので東海道本線どうしの乗り換えは熱海より便利だ。
御殿場線のホームは短かったのでそれなりに乗り換えに時間はかかるが、青春18きっぷシーズンに比べればお客はずっと少ないので乗り換えは楽だ。
たぶんぼくが今使っている「春のレジャートクトクフリーきっぷ」を使っている客なんて全然いないんだろうなあ。そう思う。
東海道本線のホームに来て電車を待つ。やってきた。浜松に向かう電車だ。乗り換えなしのようだ。
やっぱり18きっぷシーズンでないと電車はすいている。乗ってすわると発車だ。
きょうはそれなりに早起きしたのでこのへんで眠くなってくる。浜松までは時間があるので眠ってもいいだろうと思い、しばらくうとうとする。
到着
目が覚めた。静岡は過ぎたもののまだ浜松には着いていないようだ。
松田からここまでけっこう時間がかかり、お昼をいくらか過ぎている。こりゃお昼は抜きで一気に電車に乗り、食事はアパートに戻ってからの方がいいだろう。
このあたりはたいてい大垣行き夜行で通っていて、昼間通るのはめずらしいのでよく景色をながめておく。
東海道は海沿いを走る路線のはずなのに、左右に山々が広がる景色がけっこう続く。御殿場線より若干山々の高さは低いようである。まあ、日本にはこういう地形が多いのだろう。電車は進んでいく。
そして大垣行き夜行で何度も通り抜けている浜松に到着した。ここで降りる。階段をおりて何回か見た改札に、春のレジャートクトクフリーきっぷを見せて通る。もちろん何事もなく改札は通れる。
浜松は、大垣行きの夜行が長い時間停車するので、トイレのため改札を通ったことはあるが、駅の南にあるコンビニくらいしか行ったことはない。
遠州鉄道は浜松の北に向かう鉄道だから駅も浜松の北だろうと思った。駅の北はどんなながめになっているのだろう。ぼくは浜松駅の北口を出た。
JR~遠州鉄道
沼津から乗ってきた電車を浜松で降り、「春のレジャートクトクフリーきっぷ」を見せて改札を通り、一度も通ったことのない北口を通った。
そこには、なんだか近代的な景色が広がっていた。
ビルの数は南口の方が多く、北口は左手にちょこちょこビルがあり、右手にかなり高いビルがあるくらいで、そのまんなかには大きなビルがない。
しかし駅前広場がとても新しいのだ。そして歩行者が歩きやすそうな場所である。
でもまあ、静岡駅の方が駅前としては発展しているだろう。ただ、静岡は駅近くにコンビニはないし、静岡と浜松でいろいろ有利不利がありそうだ。
さて、遠州鉄道の駅はどこだろう。右手にはありそうもないなあ。
左手のビルとビルの間をぬけた先にあるような気がしたので、ビルとビルの間を歩いてみた。
あったあった高架だ。駅っぽい建物もある。たぶん遠州鉄道の駅だろう。
JRとの乗り換えは、雨が降っていたらかさをささなくてはぬれてしまうようだ。まあ、こんな駅もあるだろう。それほどめずらしくはない。
近くには百貨店のほか、スーパーもあるようだ(2011年現在はスーパーの方は閉店しているとのことだ)。
駅に入ると自動券売機があった。西鹿島まできっぷを買う。そして改札を通り、階段を上がってホームに来た。停車している電車はけっこう新しそうな電車だった。
乗ってみたが中途半端な時刻らしくお客は少ない。まあこんなものだろうなあ。
新浜松~西鹿島
あまり混雑しないまま電車が発車する。しばらくは高架のまま進む。
JRと比べると駅の数は多く、ちょこまかと駅に停車していく。それほど新浜松から距離をおいていないのに、けっこう駅があるのだ。そして客はそんな駅でちょこまかと降りていく。
しばらくすると浜松駅前の市街地を離れていく。とは言っても、商店街から住宅街に移り変わるだけだ。でも、だんだんと住宅がまばらになっていく。それほど市街地は広くないようで、じきに畑が広がってくる。
とは言っても山が左右に見えるわけではない。去年の8月に天竜浜名湖鉄道に乗ったが、山々は天竜浜名湖鉄道の北にはあるが南にはそれほどなかった。今いるのは天竜浜名湖鉄道の南なわけだから、だいたい平地なんだろうなあ。そう思った。
そんなことを考えているうちに電車は進んでいく。前方に山が見えてきた。
終点が近づいたがそれほど山が迫ってくるといったこともなく、がらがらになった電車は無事終点の西鹿島に到着した。電車を降りる。
まずは改札を通って外に出ないと帰りのきっぷが買えない。改札を通って駅前をながめてみる。
駅の外は、多少建物とかが並んではいたが、乗換駅のわりには大きくなさそうなまちなみである。
ていうか、去年8月に本当に天竜浜名湖鉄道でここって通ったのだろうか?でも通ったんだろうなあ。
ここからだと 天竜浜名湖鉄道がどこにあるのかわからない。まあ、きょうは遠州鉄道でそのまま浜松に帰るわけだし、別にどこにあってもいいかと思った。特に用事もないし時間もないし、早く帰ろう。
西鹿島~助信
さて、帰りのきっぷを買おうとして考えた。
どうせ新浜松駅まで行っても、浜松駅までけっこう歩くことになる。
それだったら、何駅か手前で降りて、運賃を安くした方がいいんじゃないだろうか。
確か行きに乗った時、新浜松から駅の間はけっこう短かったような気がする。だから多少手前で降りても浜松までそんなに時間はかからないだろう。そう考えて運賃表を見た。
運賃表では、新浜松から数駅手前の「助信」というところまでだと新浜松より運賃が数十円安くなることがわかった。よし、「助信」まで買ってJR浜松まで歩こう、そう思い、「助信」まできっぷを買った。
そしてまた改札を通り、電車に乗る。今度も電車はすいていた。そして発車。
相変わらず山々は遠くにあるが住宅が少ない景色である。でも、新浜松に近づくと多少住宅が増えてくる。けっこう浜松の市街地は広いようだ。それでも静岡の市街地ほどではないかもしれない。
かなり住宅が増えたころ、目的地の「助信」に到着した。電車を降り、改札を通る。
この駅は大通りに面している。この大通りをまっすぐ進むとJR浜松駅に行けそうだ。てくてく歩く。5月なので天気もいい。
多少時間がかかったが、JR浜松から新浜松まで歩く距離より多少長いくらいで、さっき見た整備されているJR浜松の駅前に到着した。
さあ、もう暗くなり始めている。たぶん松田に着くころには日が暮れるだろう。急いで電車に乗ろうと思い、ぼくは春のレジャートクトクフリーきっぷを取り出した。
なお、「助信」が「すけのぶ」という読み方であることを知ったのは、この旅行記を書いている現在である。
旅行記本文
遠州鉄道の助信(すけのぶ)駅からなんとか歩いて浜松駅にやってきた。道路も見通しが良くていい運動になった。もう暗くなり始めている。5月になったとは言え、まだまだ多少日が短いのだ。
また春のレジャートクトクフリーきっぷを出して改札に見せて通る。そしてホームに行く。
沼津の方に向かう電車がやってきた。うーん、やっぱりお客がそんなにいないなあ。電車は発車する。
きょうはお昼も食べていないけど、食事はやっぱりアパートに帰ってからゆっくり食べたい。先を急ごう。
浜松は平野だが、浜松を出るとまた左右に山々の続く景色になる。やっぱり日本は平野は少ないんだなあと思うひとときである。そして日が暮れる。
静岡、そして富士を過ぎる。沼津まではもうすぐだ。
ここで車内改札がやってきた。そう言えば最近めったに車内改札に会わないなあ。春のレジャートクトクフリーきっぷを取り出す。
ぼくの番がやってきたのできっぷを見せるとスタンプではなく、ボコッときっぷにへこみを入れるやつで車内改札の印が入れられた。
このあたりは去年乗った岳南鉄道(がくなんてつどう)の吉原駅の近くで、新蒲原(しんかんばら)のあたりみたいだが、乗る人も降りる人も少ない。いや、少ないからこそ車内改札があるのかもしれないなあと思った。電車は進む。
窓の外がとっぷりと暗くなったころ、電車は沼津に到着した。さあ、まだまだ東京までは長い。
御殿場線に乗り換えるため電車を降り、階段を上がった。
車内改札
浜松から乗ってきた電車を沼津で降り、階段を上がっておりて御殿場線のホームに来た。
去年の5月に御殿場線に乗ったときはまだ明るかったが、きょうはもう暗い。
そして去年は高校生らしい学生がたくさんいたが、きょうはお客が少なかった。そして沼津止まりの電車が到着。お客が降りていく。そのあとに電車に乗る。お客が少ないので楽にすわれた。しばらく待つと電車が発車する。
何分かすると車掌が現れた。ありゃ。今度も車内改札らしい。1日に2度も車内改札なんてめずらしい。
ぼくが持っている「春のレジャートクトクフリーきっぷ」には、沼津まで乗っていた電車で受けた車内改札のへこみがある。
ぼくはもしかしたら、このへこみについて何か言われるんじゃないかと思った。えーと、確かさっき車内改札を受けたのはどの駅のあたりだったかな・・・うーん、新蒲原(しんかんばら)のあたりだったかなあと思い出した。
ぼくの番になったので春のレジャートクトクフリーきっぷを見せた。
「これは?」
と車掌が言ったのでぼくは、こう言った。
「新蒲原のあたりで検札を受けました」
それを聞くと車掌はきっぷをぼくに戻して次の客のところに行った。
もしかしたら車掌はこのきっぷのことを知らなかったのかもしれないなあ。でも、「すでに車内改札を受けている」→「このきっぷは正規のきっぷである」ということを理解して、これ以上のことは不要と考えたのかなあ、そう考えた。いずれにしてもそれほど長距離の移動でもないのに1日に何回も車内改札を受けたのはこの日くらいではないだろうか。
帰宅
あとはなにごともなく、電車は御殿場を過ぎて県境を越えていく。山北も過ぎていく。景色も見えず、静かな時間が過ぎる。
そして電車は目的地、松田に到着した。電車を降りる。
さあ、まだまだここから小田急に乗ってアパートに帰らなければならない。小田急の改札の位置はわかっている。
長いホームを進んで、朝通った小田急の新松田に近い方の改札に向かおうと思った。これで春のレジャートクトクフリーきっぷの旅行も終わりだ。
もうこのきっぷの有効範囲に乗っていない私鉄はないからしばらくはこのきっぷを使うこともないだろう、そう思った。