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Sorry, Japanese only! (1999年5月)

72.五能線と山寺

説明

計画

1999年のある日、会社の診療所で血液検査したら、ぼくは糖尿病だと言われてしまいました。
そして5月になって、もう一度検査して重症なら入院する必要があると言われました。

入院してしまうかもしれないので、その前にどこか鉄道の旅をしてみたくなりました。
さてどうしましょう。今使えるお得なきっぷはウィークエンドフリーきっぷくらいしかありません。去年の9月以来使っていないし、また使ってもいいかと思いました。もうJR東日本の路線には全部乗っているので、乗りたい列車に乗れば良さそうです。
ぼくはひさしぶりに五能線の海が見たくなりました。五能線には5年前に行きましたが、なんでも5年前にはなかった新しい快速列車、「リゾートしらかみ」というのが五能線に走るようになったという話です。ぜひとも乗ってみたいと思いました。1999年当時は秋田発弘前行きと弘前発秋田行きの1往復が走っていました。

ですが、多少不便なことがあります。それは、始発の秋田新幹線で秋田まで行っても秋田発弘前行きのリゾートしらかみに間に合わないのです。
それもそのはずです。リゾートしらかみは、ぼくが5年前に乗ったノスタルジックビュートレインとほぼ同じダイヤで動いているのですが、その時も夜行の急行津軽で東能代まで行くとちょうどよい電車でした。当時から始発の新幹線で向かっても間に合わない列車だったのです。
もう急行津軽は廃止になってしまっているので5年前みたいな行程にするわけにもいきません(寝台特急を使うという手段もあるのですが、あまりお得ではなさそうです)。

かと言って1日目にどこかに行って秋田に泊まり、2日目にリゾートしらかみに乗ると、弘前到着がものすごく遅いので、そこから東京に帰ると深夜になりそうで、翌日会社に行くのにとても疲れてしまいそうです。

やはり、弘前発秋田行きのリゾートしらかみに乗るのがいいかと思いました。午後おそく弘前を発車するので、東京を朝出発すれば間に合います。ただし秋田ではもうその日のうちに東京に帰れませんので宿泊することになります。まあいいかと思いました。
さて、2日目はどこに行くのがいいでしょう。

ぼくは、仙山線の山寺に行こうと思いました。先月プレイステーションというゲーム機といっしょに買った「お嬢様特急」という、女の子と仲良くなることを目的としたゲームで、この仙山線の山寺が舞台になっているのです。どんなところか行ってみたくなった、というわけです。

以前までなら、秋田から山形へは特急こまくさというのが出ていましたが、なんでも1999年現在もうこまくさは走っておらず、山形新幹線を山形の北の新庄(しんじょう)まで延ばすため、山形~新庄間を運休し、バス代行運転しているとのことです。ですので秋田から山形へはとても時間がかかりそうです。
おそらく秋田新幹線で秋田から仙台まで行って、そこから山形行きの仙山線の電車に乗った方が良さそうです。そんなわけで2日目は秋田→仙台→山寺と計画しました。あまりあくせく乗ってもしかたがないので、山寺からはすぐに東京に戻ろうと思いました。時刻によって仙台まわりか山形まわりで帰ることにしましょう。

そんなわけで秋田の宿を考えました。駅から出ずに行けるらしい「ホテルメトロポリタン秋田」を無事予約しました。ウィークエンドフリーきっぷも買って、土曜の朝を迎えたのです。


補足1

なお、この旅行がぼくにとってウィークエンドフリーきっぷを使う最後の旅行になりました。次に使う時は山形新幹線の山形~新庄間が開通してから乗ろうと思っていたのですが、乗る前に突然予告もなくウィークエンドフリーきっぷは廃止になり、JR東日本南部の限られたエリアしか使えない土日きっぷになってしまったのです。


補足2

なんとかぼくは入院せずにすみました。しかし数年後のことを考えると入院しておいた方が良かったのかもしれません。

東北新幹線その1

旅行記本文

東北新幹線のやまびこは盛岡駅に向かって進んでいた。
去年の9月にやまびこに乗った時は、おととしの3月と違い、びっくりするくらいすいていたが、きょうもあまり混雑していない。
本当にどうしたのだろう。季節によってそんなにやまびこって混雑したりしなかったりするのだろうか。

ウィークエンドフリーきっぷはいいきっぷである。1月から3月にかけての旅行で、全国のおもだった鉄道には乗ってしまい、あとは山形新幹線の新庄(しんじょう)延伸を待つばかり、という状態だったので、急いで旅行する必要もなかったのだが、もしかしたらぼくはもう旅行できなくなるかもしれないので、その前に鉄道に乗ろう、どうせならまだ乗ったことのないリゾートしらかみに乗ろう、そういう旅行なのである。

最近JR東日本の新幹線はウィークエンドフリーきっぷでばかり乗っている。去年7月に周遊きっぷで長野まで新幹線に乗ったのが唯一の例外だ。

那須塩原を過ぎると森の中に入っていく。そんな森の景色を見ているうちに仙台に着く。
仙台を過ぎると仙台より南とはまた違う景色だ。古川近辺はけっこう田んぼがある。そこから先はまた山がちになるが、どちらかと言うと谷間の景色である。北上川が近くにあるからである。そんな景色を見ながら進む。

そろそろ腕時計の時刻から言ってやまびこは盛岡に近づいたようだ。

やまびこはすいていたが、もしかしたらはつかりの方は去年と違って混雑しているかもしれない。
今年も念のため、盛岡寸前で前方の指定席車両に行き、中間改札に近いところに行くことにしよう。

十分前方に歩けたなあと思ったころ、やまびこは無事終点盛岡駅に到着した。やまびこを降りる。

階段はすぐそばにあり、おりると中間改札もそばにあった。さあ、はつかりに乗ろう。ぼくはウィークエンドフリーきっぷを見せて中間改札を通った。

東北本線

旅行記本文

盛岡駅でやまびこを降りて中間改札でウィークエンドフリーきっぷを見せて通る。去年と同じで客は少ない。

エスカレーターをおりて東北本線のホームに向かい、青森行き特急はつかりに乗る。何度も乗り換えているような気がするが、実のところこの乗り換えはわずかに3回のみである。
最初に乗り換えた時はとても混雑していたのでいつもそうかと思っていたが、去年、今年とけっこうすいている。お客って少なくなったのかな?楽にはつかりの自由席にすわる。そして発車だ。

きょうも去年と同じ景色をながめる。とは言っても朝早かったのでいねむりしてしまう。すわれたのだからなおさらだ。
でも野辺地(のへじ)から青森までは海が見えるはずだから起きたいなと思いながらぼんやりとしていた。相変わらず特急と言うにはそれほどスピードも上がらないはつかりである。

八戸を過ぎ、野辺地を過ぎる。ようやく海が見えてきた。でも考えてみればこれからリゾートしらかみに乗るわけだから日本海が見えるはずだ。
でもここから見える陸奥湾はまた違った海なのでしっかり見ておくことにしよう。
これからもウィークエンドフリーきっぷで旅行したいけど、次に旅行するのは今工事中の山形新幹線、山形~新庄間が開通してからにしたいな、などと思っているうちにはつかりは青森の市街地に入り、終点青森駅に到着した。

去年は青森周辺をちょっとだけ歩いたし、いつかねぶた祭りも見てみたいと思うがきょうは先を急がなければならない。ぼくははつかりを降りて弘前に向かう電車のホームをめざした。

奥羽本線

青森~弘前

青森で特急はつかりを降りて、奥羽本線で弘前に向かう。

青森は乗り換え階段が少なくて混雑し、乗り換えにくい。もっと階段を増やしてくれると乗り換えやすくて便利なのだが、もともとこの駅は鉄道どうしの乗り換え客は少なく、乗り換えのほとんどが青函連絡船だったことを考えると、この構造でもしかたないのだろう。
なんとか階段で奥羽本線の電車に着いた。きょうもオールロングシートの電車に乗る。土曜日の昼間、それほど電車は混雑してはいない。適当にすわると電車は発車する。

ろくな準備もせずに旅行したわりには電車が予定通り動いていることもあって順調に進んでいる。どうせこれから乗る予定の弘前発秋田行きのリゾートしらかみは数時間先の発車だから弘前で時間があるし、まあゆっくりやっていこう。

電車はトンネルを通る。東京から見ると青森と弘前はごく近い場所という感覚だが、地元的にはそれなりに距離があるのだろう。
トンネルを通るとそれほど人家の多くない場所を通っていく。そう言えば5月に青森に来るのは初めてだったような気がする。けっこういい季節だなあ。突発的に旅行してよかったのかもしれない。

そんなことを考えているうちに電車は川部(かわべ)を過ぎ、右手に数時間後に通ることになる五能線が分岐していく。そして電車は弘前の市街地に入っていき、無事到着。だれかがボタンを押してドアを開いて降りる。そのあとから続いて降りていく。


公園

さあ、リゾートしらかみまでは時間がある。その間に行きたい場所がある。弘前城だ。どんなところなのだろう。

弘前にはおととしの3月に、やはりウィークエンドフリーきっぷを使って来たことがある。弘南鉄道大鰐線の中央弘前駅まで歩いたものだった。
あの時は駅前の道をしばらく進んだ後で左に曲がったが、たぶんきょうはずっとまっすぐ進めばいいだろう。進んでいこう。

ずんずん進むと市街地の街並みが多少閑散としてきて、さらに進むと正面にお堀が見えてきた。おそらくこれが弘前城のお堀だろうと思い、右か左に進むとお堀を越える道があるような気がした。
ぼくは右に進んでみた。ちょっとだけ進むとお堀の終点が見えてきた。お堀に沿って左に曲がる。
そう言えば、普通お堀が見えるとお堀の向こうにお城が見えるものなのに、ここは全然見えないなあ。どうしたのかなあと思いながら進んでいく。お堀の切れ目が見えてきた。
とともに、お城の建物らしきものが見えてきた。
なんだこりゃ。小さな小さなお城だなあ。

お城の横を通り過ぎてみた。公園といった感じの場所に、たくさんの木々が植えられている。木々のエリアの方がお城のエリアよりずっと広い。
まあ、お城なんてこんなものなのかもしれない。ここはお城よりもまわりの植物をながめるところなのだろう。
弘前市民にとっては、お城よりも植物の方が大事、ということなのかもしれない。まあこんなものだろうと納得した。

さて、もうそろそろ弘前駅に戻ろう。まだ時間があるから歩いてもリゾートしらかみには間に合うだろう。

五能線

乗車

小さな小さな弘前城のそばの広場を出て、弘前駅まで歩く。けっこうリゾートしらかみの発車まで時間があるのであせらずに進む。行きと同じ道を通って帰ってきた。

さあ、リゾートしらかみだ。ちゃんと指定席券もある。ウィークエンドフリーきっぷを見せて改札を通り、ホームに行く。こじんまりしたホームだ。
5年前に乗ったノスタルジックビュートレインは古い客車だったけど、今度の列車はどういうものだろう。新品かな。
リゾートしらかみに乗るらしい客が集まってくるが数は少ない。そのまま待つ。

入線してきた。やっぱり新しい車両だ。こりゃいいなあ。
乗ってみるとピッカピカの車両である。特急と呼んでもいいくらいだ。快速にしておくのはしのびない。でも特急にすると客は激減するだろう。
秋田行きはたいして客は多くないようで、発車まで待ってもそんなに乗ってこなかった。そして発車。川部(かわべ)までは奥羽本線だ。そして向きが変わり、五能線に入ってリゾートしらかみは進んでいく。

たぶん車掌が来て車内改札するはずだからそれまですわっていようと思った。本当に車掌が来たのでウィークエンドフリーきっぷと指定席券を見せた。


演奏

車内改札がすんだので車内を歩いてみることにした。先頭に行ってみよう。
てくてく歩く。客はけっこう少ないようだ。やっぱりリゾートしらかみは弘前行きの方が客が多いようだ。
先頭まで来た。なんだか展望スペースっぽい場所である。
まだ平野部で海が見えるわけではないので普通の景色だが、海岸に出たらながめがいいだろうなあと思いながらしばらく景色をながめる。
でもやっぱり座席に戻ることにした。座席に戻ってしばらく待つ。

そのうち、これから津軽三味線の演奏を始めますというアナウンスがあった。たぶんさっきの展望スペースで演奏するのだろう。そう言えばうわさでは津軽三味線が聴けるとどこかに書いてあったような気がするなあ。
とは言ってもたぶんあのスペースには客が詰めかけてるから、今行ってもうしろの方から聴くことになりそうだ。それだったらここでスピーカーで聴いた方がいいかと思い、そのまま待った。そのうち津軽三味線の演奏が始まる。

めったに楽器の演奏を聴くことがないし、ましてここはJRの列車内なので、不思議な気持ちでスピーカーから流れる津軽三味線の音色を聴いた。でもたぶん毎日演奏しているんだろうなあ。けっこうたいへんだなあ。
演奏が終わる。いつのまにか海が見えるようになっていた。太陽もだいぶ傾いていた。かなり時間を忘れていたんだなあと感じる。五能線はただでさえ所要時間が長いから、こうやって津軽三味線を聴かせて時間を忘れさせるのはいいことなのかもしれないなあと思い返す。


夕日

あとは夕日、そして五能線にとってもっとも大切な海を見ながら進んでいく。たいした客もなく、いいふんいきである。太陽はともかく、海はめったに見られるものではないのでしっかり見ておかなければならない。
車内から日の入りが見られればいいが、あいにく今が5月なこともあって日の入りは遅く、そのうち五能線の向きが変わって窓から太陽が見えなくなる。
まあこんなものだろうと思った。天気が良かっただけよしとするか。そのうち海から離れ、暗くなり、五能線の終点、東能代(ひがしのしろ)に到着である。

東能代を過ぎて進行方向が逆になる。もう日が暮れているのでたいした景色も見られない。
このあたりを最後に来たのはいつくらいだったかなあ。数年前はウィークエンドフリーきっぷをばりばり使ってこのあたりの鉄道に乗っていたこともあったが、最近は西に行く旅行が多かったからなあなどと思いながら、きょうの残りの秋田までの旅を楽しむことにする。
快速だけど特急並みにすいすい進み、終点の秋田に到着。リゾートしらかみを降りる。

なんでも弘前行きのリゾートしらかみは「蜃気楼ダイヤ」と言って五能線の途中駅で降りて数時間観光できる(1999年現在)という話だが、東京を始発の秋田新幹線で出ても弘前行きリゾートしらかみに間に合わないのが難点である。いつか弘前行きにも乗ってみたい。そんなことを考えながらウィークエンドフリーきっぷを見せて改札を通る。


就寝

さて、予約しておいたホテルメトロポリタン秋田ってどこだろう。
どうやら秋田駅の駅ビルにあるようだ。おととし泊まった東京ステーションホテルと似たようなものらしい。
なんとかホテルの入り口を見つけ、フロントまでたどりついてチェックインする。さすがにここはおととしの時点の東京ステーションホテルとは違ってエレベーターがある。

いったん客室に荷物をおいて、秋田駅のJC(駅のコンビニ)に行き、弁当を買って戻ってくる。東京ステーションホテルでも夕食はJCだった。
弁当を食べ、食べ終わると風呂に入る。そして寝ることにする。
以前は夜行ばかりでホテルに全然泊まらない3日くらいの旅行なんてあたりまえだったが、最近はホテルに泊まる旅行が多い。ホテルに泊まる旅行は列車でいねむりすることが少なくて景色が見られていいような気がする。
そんなことを考えながら眠りについた。あしたは山寺に行こう。おやすみなさい。

秋田新幹線

起床

目が覚めた。

ここは秋田駅の建物の一部を利用しているホテル、ホテルメトロポリタン秋田である。無事予定していた時刻に目覚めることができた。
たまにはホテルの朝食を食べることにしよう。着替えて食堂に行き、朝食を食べた。そしてチェックアウトして駅に向かう。

おととしこまちに乗ったときは、JR発足10周年記念・謝恩フリーきっぷが出ていたこともあって自由席はとても混雑していた。きょうはどうだろうか。
ウィークエンドフリーきっぷを見せて改札を通り、こまちの出るホームに向かってはみたが、自由席の出るホームはまるで客がいなかった。
きのうのやまびこも客は少なかったし、ウィークエンドフリーきっぷの使える土日でも、季節によっては新幹線はすいているらしい。なぜなのかわからないが、いろいろあるのだろう。


秋田~盛岡

こまちの自由席に乗り、おととしと同じくうしろ向きにセットされている座席にすわる。大曲(おおまがり)で向きが変わって前方を向くようになるはずだ。発車時刻になり、こまちはうしろ向きに発車する。

おっと、確かおととしこまちに乗ったときは、前の座席がグラグラしてひざに当たって痛かったなあと思い出す。グラグラしないように荷物をひざと前の座席の間に入れてつっかい棒にしよう。
・・・と思ったが、全然グラグラしないなあ。
どうやらおととしは何かの故障でグラグラしていたらしく、いつもこまちの座席がグラグラするわけではないようだ。まあいいか。

大曲を過ぎて前に進むようになる。ここから先は普通列車でも通ったことがある場所なので景色は見たことがあるはずである。
角館(かくのだて)まではけっこう平野だが、田沢湖にかけてだんだん山が近づいてきて、田沢湖を過ぎるとすっかり森の中になる。
森の景色がしばらく続くが、やがて雫石(しずくいし)近辺になると盆地の景色になる。そのまましばらく進むと盛岡の市街地が近づいてくる。


盛岡~仙台

それからこまちはのぼり坂をのぼっていく。盛岡の手前までは普通列車の田沢湖線と同じレールだが、盛岡から高架の東北新幹線ホームを進むようになるからだ。
こまちは盛岡に到着。やまびこと連結されたようだ。そしてまた発車。秋田から盛岡までよりずっと速いスピードで進んでいく。

きのうも見た景色なのであまり驚くこともないが、やっぱり新幹線っていうのは速いなあと思う。
たちまちこまちは仙台に到着した。

さあ、山寺に行こう。お嬢様特急によれば、とても長い階段をのぼらなければならないところらしいがどんなところだろう。
ぼくはこまちを降りると階段をおりてひさしぶりに仙台の中間改札に行き、ウィークエンドフリーきっぷを見せて通った。

仙山線

仙台~山寺

仙台でこまちを降りて中間改札を通った。
仙台はホームが多く、仙石線以外の電車がどこのホームから出るか統一されているわけではない。だから案内をよく見て、階段をおりて山形行きのホームに向かう。

仙山線はひさしぶりに昼間の列車に乗る区間である。なにしろ5年前に3回仙山線に乗ってはいるが、いずれも下り急行津軽で夜中に通っただけなのだ。昼間に通るのは就職前に家族が使って余った青春18きっぷで乗った時だからもう10年以上前だろう。
そして電車が見えた。おお、ボックス席のある電車ではないか。

なにしろ東北本線では最近仙台近辺もオールロングシートの電車が走っている。それはそれですきま風とか入らなくて冬は暖かい電車で悪くはないのだが、仙山線はボックスシートが残っているんだなあ。
乗ってすわる。ひさしぶりの景色の見える仙山線だ。10年ぶりの発車である。

電車はいったん右に進んだ後で、東北本線と分かれて左に曲がっていく。
すると右手に森が見えてくる。東照宮駅だ。なんでも甲子園によく出ている東北高校はこの駅の近くにあるそうだ。そして森を離れるとまた市街地に戻り、北仙台だ。
北仙台を出るといよいよ山の中に入っていく。

右手に住宅地が見える場所もある。なにしろ仙台は平野がせまく、山の上の方までびっしりと住宅が建っている都市なのだ。でもそんな景色が見える区間も少なく、県境までずっと仙台市とは思えないまま、トンネルに入る。
確か山形最初の駅は面白山高原(おもしろやまこうげん)だったはずだから、山寺はもう少し先だろう。
でもトンネルを出てしばらくするともう山寺到着のアナウンスがある。デッキに出よう。そして山寺に到着。電車を降りる。けっこう同じように降りる客がいる。ウィークエンドフリーきっぷを見せて改札を通る。


のぼり

案内を探す。どうやら、正面の左右に延びる道を右に進むと山寺の寺に行けるようだ。なんでもものすごく階段をのぼらされるそうだが、がんばって進もう。日曜なので客はたくさんいる。まずは進む。
人通りは多い。お嬢様特急で取り上げられているくらいだから著名な観光地だ。
そして駅からそれほど離れていないところで、いよいよのぼり階段が出現した。3年前に香川県でこんぴらさまのふもとまで行って引き返してきたが、たぶんあそこも山寺くらいのぼるんだろうなあ。

さあ、ここまで来て引き返してはもったいない。階段をのぼり始めた。よいしょ。よいしょ。
同じようにのぼっていく観光客はたくさんいる。帰りの客もいるがまだぎりぎり午前中なので少ないようだ。よいしょ。よいしょ。

ずいぶんのぼってきたような気がするがまだ先は長いようだ。階段は一本道ではなく、右に進んで踊り場に出て、踊り場でぐるっとまわって左に進む、それを繰り返して標高を上げていくのだ。まあそりゃそうだろう。とにかくのぼろう。よいしょ。よいしょ。

多少引き返しておりていく客が増えたような気がする。目的地が近づいたのかもしれない。

ようやくさいせん箱があるらしい場所にやってきた。いかにも仏教的な場所である。
うしろを振り返ると、はるか下の方に仙山線があるらしき場所が見える。ふわー。だいぶのぼったなあ。

プレイステーションのゲームのお嬢様特急では、山寺はほんの1枚の背景に女の子が説明するだけだったが、実際に行くとすごいんだなあ。
まだまだお嬢様特急の中の舞台で行っていない場所はたくさんあるから、機会が有ればどんどん行ってみよう。
なにはともあれここに来たあかしにさいせんをあげていくことにする。日曜日なのでさいせん箱の近くには観光客がたくさんいる。みんなこの階段を上がってきたんだなあ。
行列のうしろに並び、順番が来たのでさいせんをあげる。そしておがむ。


くだり

さあ、さいせんをあげるのが目的なのだから、あとはおりればいい。階段をおりていく。でもおりる方がたいへんなのだ。
足を痛めないように気を付けて階段をおりよう。のぼる人とすれちがう。やっぱり日曜だから客は多いなあ。
一気にかけおりていきたくなる気持ちをおさえて、足を痛めないようにおりていく。なにしろあしたは会社なのだから仕事にさしつかえないようにしなければならない。ふう。ふう。

山の上はいい景色だった。だんだんふもとが近づいていく。ながめのいい景色はもうすぐ終わるから、今のうちに景色を見ておこう。そして階段をおりる。ふう。ふう。

そしてようやく階段をおりきった。あとは山寺駅まで歩くだけだ。これだけ歩いたから、もうあとは東京までまっすぐ帰ろう。寄り道なんかしないでまっすぐ帰ろうと思った。

行きにも来た道をゆっくり歩いていく。足がとても疲れている。たいした距離ではないのでゆっくり進む。どうせ仙山線は電車がいっぱい走っているからあせる必要はない。


昼食

そしてやっと駅まで帰ってきた。さあ、仙山線の電車は仙台行き、山形行き、どっちが先に来るだろう?
時刻表を見たが、どっちも似たようなもので、食堂で食事をする時間くらいあるようだ。仙台行きに乗った方が東京に早く帰れるだろう。仙台行きに乗ろう。
駅前にはそば屋っぽい店があったのでここでそばでも食べていこう。

入ってみたがそれほどお客はおらず、なんとかそばが食べられそうだ。注文するとそれほど時間もかからずにそばが出てきた。ずるずるずる。今日もうまい。ごちそうさま。
そばを食べ終えるとちょうどいい時刻になった。駅に戻ろう。またウィークエンドフリーきっぷを見せて改札を通る。


山寺~仙台

仙台行きのホームにやってきた。電車がやってくる。日曜日の午後であるが、電車はそれほど混雑もしていない。席にすわると発車だ。

数時間前に乗ったのとほぼ同じ、ボックス席のある電車だが、ここも東北本線と同様にオールロングシートになる日は来るのかなあと思った。

トンネルをいくつかくぐると左手にさきほど見た住宅っぽい場所が見えてきた。仙台駅に多少近づいたようだ。
そしてだんだんまちなみがにぎやかになって、北仙台に来る。そしてまた発車。
東照宮でまた多少森が見えてくる。そしていよいよ東北新幹線の高架が見えてきて、右に大きく曲がると仙台に到着である。電車を降りる。

降りてどこか寄っていってもいいのだが、特に寄りたい場所はない。すぐに新幹線に乗り換えて東京に帰ろう。
ぼくは階段を上がって通路を進み、中間改札にウィークエンドフリーきっぷを見せて通った。

東北新幹線その2

回想

山寺から乗ってきた電車を仙台で降り、中間改札を通った。

仙台から東京行きに乗るときはもちろん、仙台始発のやまびこに乗った方がすわれるだろう。たいてい仙台始発のやまびこは下りホームから出るので下りホームに行く。やはりあった。
自由席は前方なので前に歩いて自由席車両に乗る。やはりすいていた。

ぼくがはじめて鉄道で仙台に来たときはもう新幹線が開通していた。だから新幹線が来る前の仙台を知らない。どんな街だったのかなあ。
今ある道路がまだなかったりしたんだろうなあと思う。いろいろ違った景色だったんだろうなあ。

新幹線が来る前に宮城に来たことはあるが、バスの修学旅行だったので仙台はすどおりで塩竃や松島に行ったりしていたのが悔やまれるところである。
大学に行くまでは、地元以外の日本は時刻表の中にだけある場所、っていう感じがして本当に存在するのかわからない場所だったように思う。
この数年間、日本のすみずみまで行くことができた。もうちょっと見てみたいと思う。


帰宅

自由席にすわってしばらくすると、やまびこは東京に向けて発車していく。この土日もけっこうウィークエンドフリーきっぷに見合ったいい旅行になった。
山寺で長い階段をのぼりおりしたこともあって、そのままぐっすりと眠ってしまい、起きるともう福島を過ぎているようだった。

去年は大宮でダイエー一の市だ、と言ってダイエーに行ったが、きょうは残念ながら第一日曜日ではないのでダイエーには行かないことにしようと思った。アパートに帰ってもまだ日が暮れていない時刻だし、アパートの近くのスーパーに行って夕飯を買おう、そう思った。

那須塩原のあたりから関東平野が広がるようになる。大宮近辺になると埼玉新都市交通の駅が見えるようになる。

それとともにぼくはあした会社に行ってどんなことを医者に言われるか心配になった。入院しなければならないかなあ。
それから、次にウィークエンドフリーきっぷを使うのはいつになるだろうと考えながら、アパートに帰っていった。

関連リンク