1999年年末~2000年正月は、会社が「2000年問題」とかで正月も出勤していました。そのうち2日は1年10ヶ月ぶりの夜勤でした。
そんなわけで青春18きっぷも買わずに過ごしていたのですが、正月が明けて成人の日の連休に帰省したとき、家族が余った青春18きっぷの4回使用済み券をくれました。
まだ1月20日(当時の冬季青春18きっぷの有効期限)まで時間があるので、翌週に使うことにしましたが、どこに行くのがいいでしょう。
ぼくは、7~8年ぶりに身延線(みのぶせん)にでも行ってみようかと思いました。でもただ行くのではおもしろくありません。
そうだ、「ものの本」に、富士吉田(富士山駅の2000年当時の名称)から下部温泉行きのバスが出ているとか書いてあったなあと思い出しました。これに乗ってみようかと思いました。
なんでも終点の下部温泉は身延線の下部温泉駅とは離れた場所に到着するけど、その手前の甲斐常葉(かいときわ)という停留所は身延線の甲斐常葉駅の駅前だそうなので、JRで大月まで行き、富士急行で富士吉田まで行ってバスに乗ることにしました。
幸いそれほど早起きしなくても富士吉田には間に合うし、甲斐常葉からはその日のうちに普通列車だけで東京に帰れるようです。
これからも、たまには短い旅行もはさんでいこう、その際は乗ったことのないバスに乗ってみよう、そう思い、次の休日を待って、まずは電車で高尾に向かったのです。
旅行記本文
高尾駅にやってきた。大月に向かおう。
中央本線を山梨の方向に進む電車に乗って進む。じきに東京の都会を離れ、山の中に入っていく。
ここ数年、遠くに行く旅行が多く、中央本線も高尾から岡谷・塩尻・松本まで一気に通り過ぎる旅行が多かったが、この冬は正月が仕事だったため、青春18きっぷを使うのもきょう1日だけになってしまった。さてどこに行こう?
結局ひさしぶりに身延線に乗ることにしたが、なんでも富士吉田から身延線の甲斐常葉(かいときわ)までバスが出ているのでそれに乗ることにしたわけである。富士吉田に行くには大月まで行って、富士急行に乗ればいい。
富士急行に乗るのも6年ぶりなのでまた景色が変わっているかもしれない。
大月で降りたこともある。帰省から帰ってくる際に、時間が余ったので大月まで足をのばしたわけである。でも多少散歩しただけで終わってしまった。きょうは乗り換えるだけである。
電車は相模湖を過ぎて、山梨県に入っていく。なんでもこのあたりから東京に通勤している人もいるらしい。東京は通勤がたいへんだ。そんなふうにして電車は進み、山の中のまま目的地、大月に着いた。ここで降りる。
そう言えば6年前に富士急行に乗ったときは、河口湖から「ホリデー快速むさしの号」に乗って一気に大宮まで乗ったんだった。だから大月で富士急行に乗り換えるのはきょうがはじめてだ。さて乗り換えは?
どうやら富士急行の駅舎はJRとは別にあるようだ。まずは改札を通って出口を出ることにした。
電車
高尾から乗ってきた電車を大月で降りた。青春18きっぷを見せて改札を通る。
富士急行の駅舎はJRの駅舎のとなりだ。JRの駅舎の出口を出て富士急行の駅舎に入る。はじめての大月の富士急行の駅舎だ。けっこうこじんまりしている。
ホームはいきどまりホームだ。JR直通電車はこのホームを通らないので、このホームから電車に乗るのもはじめてということになる。
富士吉田まできっぷを買って改札を通る。電車ははじめて見るものだ。以前乗ったホリデー快速むさしの号はJRの車両だから、富士急行の電車に乗るのもはじめてである。
あまりピッカピカというわけではなさそうだ。どこかから購入してきた車両なのかもしれない。
それにしても客が全然来ない。もうじき発車だからそれなりに客が来てもよさそうなのに、全然来ない。土曜日の午前中だからかなあ。
さすがに東京から河口湖とかに行く人は、高速バスに乗るだろうけど、近場の客もいるはずだと思うんだけどなあ。そんなにみんな自家用車使っているんだろうか。まあ鉄道の少ない山梨県だからしかたないか。
そんなことを考えているうちに、全然客がいないまま電車は発車した。
電車は盆地を進む。以前乗ったホリデー快速むさしの号も全く客がいなかった。あの時は雨が降ったりやんだりしていたっけ。
今は晴れているけどやっぱり客は少ない。富士急行っていつもこんなものなのかなあ。
まあ、ぼくも河口湖や山中湖に行くときは半分以上バスだもんなあ。客が少ないのはしかたないのかもしれないなあ。そう思った。
沿線に大学とかあるはずなのに、全然客の乗り降りがない。今は大学も土曜日は休みなのかなあ。まあみんな電車なんか乗らないか。
そんなことを考える。左右に山が続く景色が続いていく。そんなふうにして電車は進む。もうそろそろ目的地の富士吉田かな。
ぼくはちょっとだけいねむりしてしまった。いつのまにか電車が停車している。わ!富士吉田かな!ぼくはあわてて出口に向かった。出口できっぷを受け取る運転手がいる。ここは無人駅かな?え?富士吉田って無人駅だっけ?
しまった。ここは1つ富士吉田から手前の駅のようだ。もうきっぷは渡してしまったし、どうしようと思いながら閉まる扉を見て、電車を見送った。
徒歩
しょうがないかと思い、富士吉田まで歩くことにした。幸いバスの時刻までは余裕がある。
けっこう広い盆地の細い道を、てくてく歩く。
歩いても歩いてもそんなに大きな市街地に入っていくという感じがしない。
それでも多少は人家が増えてきたような気がする。なおも歩く。
なんとか市街地に入ってきたようだ。人家は多いけど人通りは少ないなあ。こんなものなのかなあ。
そしてようやく富士吉田駅までやってきた。駅前はそれほど広くはないが広場がある。
なるほど、河口湖はあっちの方向だから、確かに富士吉田がこのままなら方向転換が必要だろうなあ。
さて、まずは下部温泉行きのバスのバス乗り場を探す。それほど苦労せずに見つかった。まだちょっとだけ発車まで時間がある。
どこかで食事でもしていきたいが、残念ながらコンビニっぽい店もスーパーっぽい店もない。まあきょうは昼食ぬきでもいいだろう。
発車時刻が近づいたのでトイレに行ってバス乗り場に行く。下部温泉行きのバスがやってきたので乗るが、お客はぼくのほかはぼくと同い年くらいの女性が1人くらいだ。
しばらく待ったが全然客が来ない。そもそも富士吉田駅前に人通りが全然ないのだ。本当に今日は土曜日なのかなあ。いや、土曜日だから人通りがないのか。
そんなことを考えているうちにバスは発車した。どんな景色が見られるのかな?
旅行記本文
ぼくと女性1名を乗せて発車したバスは、富士吉田を出るとまず河口湖駅前に寄っていった。
やはりまるで客は乗らずに発車する。やっぱり1月だとこんなものなんだろう。まあ、青春18きっぷが使えるシーズンでも寒いと客はいないだろうなあ。バスはまた発車し、森の道を進んでいく。
まあ、長丁場のバスだし、ゆっくり景色を見ながら進んでいこう。雨が降っているわけでもないし、いい天気だろう。
そのうち湖に出た。どうやら精進湖(しょうじんこ)らしい。鉄道にばかり乗っているとこういう景色は新鮮だ。
富士五湖は、河口湖と山中湖なら何度か来ている。けっこう観光客の多いところだった。でも精進湖は人通りが少なさそうだ。
やっぱり1月だからだろうか。でもやっぱり新宿から直接バスで行ける河口湖や山中湖と比べるとそれ以外の3つの湖はやっぱり客が少ないのかもしれないな、そう思う。
そう言えばまだ芦ノ湖とか行っていないんだった。鉄道の旅も一段落したし、これからはバスにも乗っていきたい。6年前に北海道で乗ったような定期観光バスにもまたいつか乗ってみたいなあ。そんなことを考えた。
バスは精進湖の湖畔をしばらく進んで湖から離れていった。さらに進む。
客は全然乗ってこない。こんなバスがあるんだなあ、少なくとも時刻表に載っているバスには乗っていきたいなあと改めて思った。そんなふうにして景色を見ながらバスは進む。ほとんど森の中を進む。ときどきうつらうつらする。
そしてようやく目的地、甲斐常葉(かいときわ)に到着した。ここでバスを降りる。ここは身延線(みのぶせん)が通っているだけあって盆地ではあるが、けっこうせまい盆地のようだ。
バスは発車していく。下部温泉(しもべおんせん)行きらしいがぼくは温泉には興味がないし、このまま東京に帰ろう。
甲斐常葉駅は停留所のそばにあった。さあ、まず電車の時刻を調べよう。
旅行記本文
富士吉田から乗ってきたバスを甲斐常葉(かいときわ)で降りて、甲府行きと富士行きの電車の時刻を調べた。
どうやら早く来るのは富士行きらしい。富士行きに乗ることにしよう。それでも1時間近く待つことになる。なにしろまわりに何もない駅である。まあこんなものなんだろうなあ。
電車がやってきた。あれ?けっこう新型だなあ。
なにしろ身延線に乗るのは7~8年ぶりだ。その間にムーンライトながらも走り出したし、ムーンライトながらによく似た新型車両ができて身延線を走っているらしい。なんにしてもいごこちが良ければいいか。
電車に乗ってすわる。身延線に乗っていなかった間に北海道から鹿児島までいろいろ乗ってきたが、景色はどこもけっこう違っておもしろかった。
身延線の景色も、全国のどこかの路線の景色と似ているのかもしれないが、乗っているときは景色をよく見て楽しんでおこう。そう思った。
谷間の景色が続く。たまにはどこか途中の駅で降りてみたい。どこで降りるか。やっぱり身延かなあと思う。まあきょうではなくて、またいつか青春18きっぷが余ったときにでも乗ってみよう。
電車は静岡県側に入っていく。そのうち谷間を抜けて富士宮(ふじのみや)だ。多少客が増えるがそれほどのこともない。電車は進む。
そして電車は終点、富士に着いた。電車を降りる。ここから先は東京に帰るだけで、7~8年の間に100回近く通った区間だ。
正月に会社に出勤していたせいで、この冬は鉄道にほとんど乗れなかったのでその分まできょう乗っておこう。まあその分来月・再来月に乗れるけど。
きょうは電車にすわれるかな、と思いながら熱海行きの電車を待った。
旅行記本文
甲斐常葉(かいときわ)から乗ってきた電車を富士で降り、東京方面のホームに向かった。電車を待つ。
熱海行きの電車がやってきた。乗る。きょうもオールロングシートで混雑しているなあ。
そう言えば前回身延線に乗った7~8年前って、こんなに東海道本線って混雑していたろうか?
やっぱり編成が短くなったのが原因かとも思ったが、7~8年前に比べて青春18きっぷの普及が進んだのが原因なのかもしれないと思う。
本屋では青春18きっぷの書籍がたくさんあり、電車で見かけるのも年輩の客がだいぶ増えた。見たところこの電車でも半分以上は年輩のようだ。まあいつもこんなに混雑するんじゃ、混雑が嫌いな人は乗らなくなるだろうが、静岡県の客が乗らなくなるのはまずいかもしれないなあと思う。はたしてどうなることやら。
熱海までずっと混雑したままで、ぼくより年上そうな男性が「こんでいるなあ。」などと言っているので、ぼくは「いつもこうですよ。」と言った。
もしかしたら地元の客は、「そうじゃないよ。青春18きっぷのシーズンだけ混雑するんだよ。おまえが18きっぷの時にしか乗らないからいつも混雑すると思っているだけだよ。」などと思っているかもしれない。
まあ、もうこっちの方に乗るべき鉄道もないから、なるべく東海道本線の熱海より西には混雑するシーズンには足を踏み入れない方がいいのかなあと思う。
そんなふうにして丹那トンネルをぬけ、熱海に着いた。乗り換えだ。もちろんすわれる。
最近青春18きっぷで遠い場所に行くことが多く、あまり近場に行かないから、たまにはこういう乗ったことのないバスに乗るために18きっぷを使うのもいいなあなどと考えながら、東京に帰っていった。