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Sorry, Japanese only! (1991年7月)

51.ビスタカーってどんな電車だろう

説明

背景1

1990年、1991年ごろぼくはアイドルにはまっていて、東京に来るいろいろな人たちのイベントに出かけて女の子たちを応援して、たまに握手していました。

地方でもイベントはあったのですが、高い交通費をかけてまで行ってみようかなあとは思いませんでした。

しかし鉄道には興味があり、JTBの時刻表をよく買っていました。

ただしもっぱら1時間に1本しか来ない実家近くの列車の時刻を調べるのに使い、旅行用には使いませんでした。

その時刻表で気になることが2つありました。

1つは欄外にある「グッたいむ」という読者投稿コーナーでした。

そのペンネームの中に「ビスタカーに乗ったカー」さんという人がいました。

ビスタカーとはなんでも名古屋から大阪まで走っている近鉄の電車で、新幹線より安く行き来ができて、しかも豪華な2階建ての列車のようです。なんとなく乗ってみたいなあと思いました。

しかし、用事もないのにおいそれと名古屋、大阪まで行くわけにはいかないなあと思いました。


背景2

もう1つは、東京から大垣まで走っている夜行列車でした。東海道線のページを見るたびに、この乗り換えいらずの普通列車に、青春18きっぷを使って乗ってみたいなあと思っていました。

夜行列車自体は、1985年に一週間かけて行った北海道旅行で急行大雪に乗ったことがあり、雰囲気は知っていたのですが、なんと言っても大垣行きは有名な列車ですし、用事があれば乗ってみたいなあと思っていました。


目的

そうこうしているうちにとあるアイドル情報誌を見ていると、あの去年「Step by Step」でデビューして、アイドルファンだけには有名な高橋由美子ちゃんが、下関でイベントをやるということが書いてありました。

なにしろぼくは東大安田講堂前、銀座三越屋上、池袋サンシャイン噴水広場と何回も高橋由美子ちゃんのイベントに出かけているし、ちょっとしたファンでした。まあ他のアイドルも全く見ないわけではなかったですが。そんなわけでこのイベントはとても魅力的に思えました。

なんとしても行きたくなりました。


計画

時刻表を見てみると臨時列車がありました。京都から博多まで走る「ムーンライト九州」という列車でした。これに乗れば下関に行けると思いました。

ただし高橋由美子ちゃんのイベントは午後にあるので、直接下関で降りてもつまらなそうです。

ここはいったん九州に行って乗り回って下関に戻って来ようと思いました。

だからムーンライト九州は大阪から門司まで乗ろうかと思いました。大阪でムーンライト九州に乗る前日は東京発名古屋行き臨時夜行に乗ろうかと思いました。とすると、ビスタカーに乗ろうと思えば乗れることがわかりました。

そうこう考え、以下の計画を立てました。

東京発名古屋行き臨時夜行→ビスタカー→大阪で半日過ごす→ムーンライト九州→九州を乗り回る→高橋由美子ちゃんのイベントを見る→新幹線で帰る

よし、これで行こうと思いました。

ただ、心配なのはビスタカーの指定席です。ひょっとしたら東武鉄道の「急行りょうもう号」みたいに、乗る直前にはいつも指定席が満席になってしまう列車なのではないかと思いました。まして名古屋~大阪間は近鉄の方が特急料金を加えても新幹線より安いですし。

できれば特急券は東京で手に入れられないかな、と思いました。

いろいろ調べて、なんとか新宿駅で近鉄の特急券を買うことができました。

あとは臨時名古屋行き夜行を待つばかりとなりました。


修正

しかし、残念なことに、会社で会議が入ってしまいました。残念なことですが、高橋由美子ちゃんを見に行くのはあきらめることにしました。

しかし、名古屋行き臨時夜行に乗ることと、ビスタカーに乗ることは「生かす」ことにしました。ムーンライト九州の指定席券は払い戻そうと思いました。

そして、ビスタカーに乗った日に、なんばから地下鉄や新幹線を使ってなんとか東京まで戻ろうと思いました。

こうして当初の予定より縮小してしまった旅行をしてみようと、青春18きっぷを買い、そのうち数回分を実家の家族に郵便で送り、残りの1つで今回の旅行をすることにしました。

残ったきっぷは実家への行き帰りに使おうかと思いました。

予定の日が来て、ぼくは東京駅へと向かったのです。


補足

なお、「鉄道地図は謎だらけ」という書籍によれば、1980年代末期から1990年代初頭にかけては確かに急行りょうもう号は乗りたい当日はいつも満席ということがあったらしいですが、2000年代の時点では急行りょうもう号は、たいてい当日に指定席を買うことができるようになったとのことです。

東海道本線その1

東京駅

東京駅にやってきた。今は午後10時過ぎである。
6年前に夜行の急行大雪に乗ったことはあるし、青函連絡船の深夜便にも乗ったことはあるが、普通列車の夜行に青春18きっぷで乗るのは初めてである。
きょうは火曜、あしたは水曜だが、あした会社が臨時の休みになったので旅行に行くのである。青春18きっぷにはあしたの日付を入れてもらってある。

まずはいったん改札の外に出て、川崎までのきっぷを買って改札を通る。そして東海道本線のホームに行く。
夜行の出るホームには、いかにも長距離旅行っぽい若いやつらが集まってきていた。火曜なのでそれほどの人数でもない。
今日は「大垣行き」と「名古屋行き」が出るそうだ。ぼくは名古屋まで行ければいいので名古屋行きに乗ろうと思った。

そのうち大垣行きの方が入線する。お客が乗っていく。続いて名古屋行きだ。ドアが開いたので乗る。4人がけの席にすわる。
そう言えば、急行大雪に乗った時は、ドアのそばの2人がけの席に横になって眠ったなあと思い出す。もしとなりが空いたら横になって眠りたいと思った。はたして今日は横になれるだろうか?そう思いながら待つ。


東京~浜松

火曜日なので発車時刻が近づいてもそんなにお客は増えず、まず向かいの大垣行き、そして乗っている名古屋行きが発車する。

なにしろ、夜行に乗るのは急行大雪以来であり、西の方は京都に修学旅行に行ったくらいで、普通列車で遠い西に行くのは初めてである。この旅では京都を越えて大阪に行くのだ。どんなところだろう。

品川を過ぎ、多摩川を渡って川崎に着いた。深夜の駅というのは昼間とはどことなく雰囲気の違うものである。
横浜を過ぎる。このあたりからあまり行ったことがない場所になる。それでも大船までは鎌倉に行ったときに通っているはずだ、と思った。
しかしいざ保土ヶ谷を過ぎ戸塚のあたりまで来てみると、左右の丘に団地の明かりが並び、新鮮な景色だな、と思った。戸塚、大船を過ぎる。

夜行の普通列車は独特の雰囲気である。時刻表で東京から名古屋・大垣に向けて普通列車が夜中に通っているページを見て、いつか乗ってみたいなと思っていたが、乗ってみるとどのお客も眠っていて、窓の外は真っ暗で、いいなあと思う。
そのうち客が少なくなって、横になって眠れるようになったので横になり、ひじかけに頭を載せて眠った。


浜松~名古屋

気がつくと駅に停車している。浜松である。ホームの向かい側には大垣行きらしい電車があり、疲れた顔をした客がたくさん乗っている。ホームには電車から降りて小休止しているらしい客たちがいる。
名古屋行きは大垣行きを浜松で追い抜くので、停車時間ほんの数分でまた発車する。また横になって眠る。

次に起きると窓の外はもう明るくなっていた。もうすぐ名古屋のようである。なんだかぼーっとする。6年前も夜行明けはこんな感じだったと思い出す。
お客にも、いかにも夜行明けの長距離客に混じって地元客っぽい人がいる。窓の外は見知らぬ景色である。
そのうちなんとなく市街地に入ってきたというような感じになった。東京より市街地はせまいので、市街地にはいるとすぐに名古屋に到着である。

名古屋はホームの数は東京駅並みだった。とにかく見知らぬ土地である。近鉄のビスタカーは9時過ぎの列車を予約しているので、3時間名古屋にはいられる。
ぼくはこの見知らぬ土地を歩いてみたいと思い、川崎までのきっぷと青春18きっぷを見せて改札を出た。

近鉄大阪線・難波線

JR~近鉄

東京から乗ってきた名古屋行き夜行普通列車を降り、川崎までのきっぷと青春18きっぷを見せて改札を出た。新宿で買っておいたなんば行きビスタカーの発車時刻までは3時間ある。さてどうしよう。

ぼくは新幹線側(西側)の出口付近をうろうろ歩いてみることにした。なんだか市場っぽい店がちらほら見えたがお客はまばらである。特に買いたいものも見つからない。コンビニっぽい店もない。

ちょっと行程に余裕をもたせ過ぎたかなあとも思ったが、ぼくにとって修学旅行と出張以外で長野より西に来たことはなかったので、ひとり旅の自由さで名古屋の街を見てみた。あとで考えると名古屋駅の西側は名古屋の中ではそれほど都会ではなかったような気がした。

歩いたりベンチで休んだりして時間を過ごし、駅に戻ると中年の男が「仕事していかないか?」などと話しかけてきた。「ぼくは旅行者なんですけど。」と言うと離れていった。案内に従って近鉄の駅に行くことにした。


発車

階段をおりて近鉄の名古屋駅の改札に来た。新宿で買っておいたきっぷを見せて改札を通った。そこはホームが何面も並ぶ、大ターミナル駅であった。

まだ発車時刻には時間がある。バンと飲み物を買っておく。あまり弁当を食べる気にもなれない。案内を見て、なんとかホームを見つけ、自分の乗る車両を探す。

ありゃ、新宿でぼくは禁煙車を頼んだが、どうも禁煙車は1階しかない車両で、禁煙でない車両が2階だて車両のようだ。うーん、2階だての方に乗りたかったんだけどなあ、たばこが吸えないと冷遇されるんだな、と当時2階だて列車に乗ったことのないぼくは感じていた。

とりあえず自分の席にすわる。発車時刻が近づいた。いつまでたっても全然お客がやってこない!近鉄は東武のりょうもう号みたいに予約しないと乗れないのではなく、その場で乗れるのか!と落胆した。新宿での苦労はなんだったんだろう。

ビスタカーが発車していく。すぐに地上に出て、市街地を離れていく。1階だての列車だが、かなり快適である。しばらくまどろむ。
気がつくと山が遠くに見え、森が見える風景の中にいる。三重県にいるのだろう。


到着

ぼくにとっては三重県、大阪府ははじめての土地である。知らない土地に来ているんだなあとわくわくした。そのまま森を抜けていく。

そして都会が見えてきた。大阪である。大阪と言えば修学旅行で会った地元の人の得体の知れないことば、大学で大阪に近いところから来た人が地元から離れてもずっと地元のことばを話していたことなどを思い出す。

まあ今回は通り抜けるだけでそんなに大阪に触れるわけではないのだが、ちょっとだけ見てみようと思った。

いつのまにかビスタカーは地下に入り、ようやくなんばに到着した。

改札にきっぷを渡した。ここは地下だ。まずは地下鉄で梅田に行くと東海道線に乗れるんだよな、と思いながら地下鉄の入り口を探した。

御堂筋線

近鉄~地下鉄

近鉄名古屋から乗ってきたビスタカーを降り、改札を出て御堂筋線のなんば駅をさがした。

いったん地上に出るのかと思ったが、やはり地下どうしなので、地上に出ないまま御堂筋線の駅に着いてしまった。

はじめての大阪市内の思い出がこんなもんでいいのかと思ったが、どうせきのうと今日は名古屋行き臨時夜行電車とビスタカーに乗るのが目的で、あとはおまけなのだからこれでいいのかなと思った。

まずは自動券売機を探す。見つけた券売機は東京の地下鉄とそれほど変わったものではなかった。

きっぷを買うと裏が黒くなっている。

ああ、大阪では地下鉄は自動化されているんだな、と思った。

ぼくは仙台の地下鉄に乗ったことがあるので、自動改札ははじめてではないのだが、ずっと東京にいて有人改札ばかりの生活が続いていたので、なんとなく体がシャキッとする。


難波~梅田

自動改札に行ってみた。

そこは仙台の地下鉄にはないものがあった。

「○」「×」という表示だった。

どうやら○のある自動改札に進むことができるが、×のある所は反対側から進むことができるがこちらからは進めないらしい。

なかなかおもしろいなあと思った。

どことなく自動改札もすすけているようで、けっこう自動改札化されてから時間が経っているんだなあと思った。とりあえず○のところにきっぷを入れて進む。

階段をおりてホームに進んだ。

しばらく待つと千里中央方面の電車がやってきた。さすがに便利な路線なのだろう、混雑している。

立ったまま電車は発車する。

東京では休日でも満員なことが多いが、それより若干お客は少ないのかもしれない。


地下鉄~JR

たちまち電車は梅田に着いた。

階段を昇り、また自動改札を通った。きっぷが回収される。

さらに階段を昇り、地上に出た。はじめての大阪の地上だ。

やっぱり大阪の中心だけあって都会だなあ。

さて、もしあさって会議がなければ乗るはずだったムーンライト九州の指定席券を払い戻そうかと思いながら、ぼくは大阪駅と思われる大きな建造物に向かって進んでいった。

東海道本線その2

大阪駅

御堂筋線の梅田駅を出た。地上の大阪である。

大阪はやはり都会だなあと思う。今日は見知らぬ土地をめぐる旅である。今日は立ち寄るだけだが、いつか用事があったらもっといろいろな所に行ってみたいと思った。まずは目の前の大阪駅に入る。ムーンライト九州の指定席券を払い戻そう。

窓口に行って払い戻すと190円だけ戻ってきた。きっぷを払い戻すのは初めてだが、なんとかうまくいった。学生時代は金がなくて、6年前の北海道旅行以外たいした旅行もできなかった。今後用事があればまたどこかに行きたいなと思った。


大阪~京都

改札に行き、青春18きっぷを見せて通る。大阪は新幹線がないほかは東京並みの大きな駅である。

今日は京都まで在来線で行き、静岡まで新幹線、静岡からまた在来線の予定であるが、これだけホームがあるとどこのホームに行けばいいのかわかりずらい。
それでもなんとか米原行きの新快速ホームに出て待ち、新快速に乗ることができた。平日であるがすわれなかった。はじめてのJR西日本の電車である。

電車は川を渡り、新大阪に着いた。大きな荷物を持った人たちが乗り降りする。

大阪と京都の間は、名古屋のように市街地を離れるとすぐ家並みが少なくなるということもなく、ずっと家が線路の両側に続いている。電車も関東にはないような感じの電車で、大阪はやっぱり見知らぬ土地だなあと感じる。


京都駅

そしてようやく京都に着いた。職場へのみやげに八つ橋でも買っていこう。

修学旅行以来ひさしぶりの京都だが、今日はひとり旅である。人についていけばよかった旅とは違い、自分できっぷを買う必要があるのだ。まずは静岡まできっぷを買う必要がある。

青春18きっぷを出して改札を出て窓口を探す。見つけた窓口で静岡までの自由席特急券と乗車券を買った。

次は八つ橋だ。八つ橋を売っていそうなみやげもの屋に行って八つ橋を買った。さあ、新幹線の改札に行こう。

東海道新幹線

旅行記本文

八つ橋を買うためだけの目的で京都で降り、八つ橋を買うと新幹線改札に向かった。自由席特急券と乗車券を見せて改札を通る。

さて静岡まで行くわけだが、普通のひかりは静岡は通過である。ぼくが修学旅行に行ったころもたぶんそうだった。
しかし、最近は東京-名古屋のいろいろな駅に停車するひかりが増えている。
静岡もそんな駅の1つで、どうやらこだまに乗るより静岡停車のひかりに乗った方が早く静岡に着くようである。そんなわけでひかりとこだまを1本ずつ見送る。

ようやく静岡に停車するひかりの自由席に乗る。しかし見たところ満席のようである。しかたがないのでデッキに戻って立っていた。

東北新幹線はめったに自由席がいっぱいになることはないのに、東海道新幹線はお客が多いなあと改めて実感した。

しばらく景色をながめる。一度通っているはずだが、やはり見知らぬ景色である。名古屋でお客が降りて乗るが、やはり空席はないようで、そのまま立っている。

窓の外を見ていると、新幹線向けの広告っぽい看板が見える。変わった広告だなと思う。

景色をながめているうちに静岡に着いた。やっぱり新幹線は速い。静岡でしばらく過ごしても今日中に東京に帰れそうである。ぼくは改札を出て、やはり見知らぬ土地である静岡駅を出てみた。

東海道本線その3

旅行記本文

京都から乗ってきた新幹線を静岡で降り、駅の外に出た。
とは言っても何もすることはない。駅前をざっとながめた後、喫茶店でお茶でも飲むことにした。

駅ビルの喫茶店に入り、なにをたのむか考える。コーヒーはいつも飲んでいるから今日は紅茶にする。なぜかティーポットに入っていて、自分でつぐ方式だった。
夏休みなので学生の女の子たちがたくさんいて、にぎやかな喫茶店でズルズル紅茶を飲む。紅茶はたまに飲むのがいいなあ。

飲み終わると駅に戻る。東京行きの普通列車に乗る。当時は今(2005年)みたいに車両数は少なくなく、ゆったりとすわれた。じきに暗くなる。

今日は遠くの見知らぬ土地をひとりで旅することができた。またいつか遠くに行ってみたいなあと思いながら東京に帰っていった。あしたはまた会社だ。

関連リンク